別紙1−1 照会の趣旨

横浜市では、本年5月から「横浜市定額給付金給付事業実施要綱」に基づく定額給付金の申請の受付を開始し、この申請と同時に、横浜市への定額給付金の全部又は一部の寄附を募っています。
総務省が定めた「定額給付金給付事業費補助金交付要綱」によれば、定額給付金は、申請者に対して給付することが要件とされているため、定額給付金と寄附金を相殺することができません。そこで、横浜市では、定額給付金を寄附しようとする給付金の申請・受給者である世帯主(以下「本件世帯主」といいます。)の手続負担を軽減するために、本件世帯主に代わって特定非営利活動法人市民セクターよこはま(以下「本件NPO法人」といいます。)に代理受領及び横浜市への寄附手続を委任する方法を採用することとしました。
別紙1−2の事実関係において、本件世帯主が本件NPO法人に委任して横浜市へ寄附する定額給付金(以下「本件定額給付金」といいます。)は、「国又は地方公共団体に対する寄附金」に該当し、本件世帯主の所得税の確定申告の際、所得税法第78条の寄附金控除の対象となるものとして取り扱ってよろしいか伺います。

別紙1−2 事実関係

(1) 定額給付金事業(横浜市定額給付金給付事業実施要綱)

  • イ 目的
     景気後退下での住民の不安に対処するため、住民への生活支援を行うとともに、合わせて、住民に広く給付することにより、地域の経済対策に資することを目的としています。
  • ロ 給付対象者
     基準日(平成21年2月1日)において、1又は2のいずれかに該当する方
    • 1住民基本台帳に記録されている方
    • 2外国人登録原票に登録されている方
  • ハ 申請・受給者
     給付対象者の属する世帯の世帯主(外国人登録をされている方はご本人)
  • ニ 給付額
     給付対象者1人につき12,000円
     (ただし、基準日において65歳以上の方及び18歳以下の方については20,000円)
  • ホ 申請・給付方法
     振込先口座を記載した申請書と本人確認書類を横浜市に郵送し、口座振込により受給します。ただし、口座振込が困難である場合は、申請書を窓口で提出し、現金により受給することができます。

(2) 定額給付金の給付に合わせて募る寄附について

  • イ 寄附の手続
    • (イ)本件世帯主は、定額給付金の申請書とともに寄附申込書(定額給付金受領及び寄附手続の委任状を兼ねます。)を提出します。
    • (ロ)横浜市が、定額給付金のうち寄附申込書に記載された寄附金額を本件NPO法人へ振り込みます。
    • (ハ)本件NPO法人は、本件世帯主の委任に基づき、横浜市の納付書により寄附金を横浜市へ振り込みます。
    • (ニ)横浜市が本件世帯主に対して寄附金受領証明書を発行します。
  • ロ 寄附金の使いみち(本件世帯主の選択によります。)
    • (イ)若者の雇用確保のための支援
    • (ロ)高齢者の安全確保のための支援
    • (ハ)配偶者からの暴力によりシェルター等に保護された女性や子ども、児童福祉施設に入所している子ども、障害者地域作業所の製品販売、日本語の不自由な外国人の生徒の学習などへの支援
    • (ニ)使いみちは横浜市におまかせ

(3) 横浜市と本件NPO法人の業務分担について

  • イ 横浜市の業務
    • (イ)定額給付金の代理受領の申込みに関して確認、集約します。
    • (ロ)定額給付金のうち寄附額を除く定額給付金を本件世帯主の口座へ振り込みます。
    • (ハ)寄附相当額を本件NPO法人へ振り込みます。
    • (ニ)本件NPO法人から寄附金を受領します。
    • (ホ)本件世帯主に対して寄附金受領証明書を発行します。
  • ロ 本件NPO法人の業務
    • (イ)本件世帯主の委任に基づき定額給付金を代理受領します。
    • (ロ)定額給付金受領及び寄附手続の委任状と横浜市から振り込まれた寄附相当額を照合します。
    • (ハ)本件世帯主の委任に基づき横浜市へ寄附金を振り込みます。

※ 代理受領する本件NPO法人は、中間支援組織として位置付けられていますが、租税特別措置法第66条の11の2第3項に規定する認定特定非営利活動法人には該当しません。

*中間支援組織・・・市民活動団体と行政との間にあって、一方で市民活動団体に対して、市民活動相互の連携や情報交換、情報や技術・技能、ノウハウの提供などの機能を持ち、他方で行政に対しては、市民活動全体の立場を踏まえて政策提言を行う組織。

【定額給付金の給付に合わせた寄附の流れ図】
定額給付金の給付に合わせた寄附の流れ図

別紙1−3 事前照会者の求める見解となることの理由

(1) 定額給付金の所得税法上の取扱い

定額給付金については、所得税を課さないこととされており、所得税法上、非課税所得とされています(措法41の8)。

(2) 寄附金控除について

個人が、国又は地方公共団体に対して支出した寄附金は、特定寄附金として寄附金控除の対象とされています(所法7812一)。ただし、「寄附をした者がその寄附によって設けられた設備を専属的に利用することその他特別の利益がその寄附をした者に及ぶと認められるもの」は、特定寄附金から除かれます(所法7812一括弧書)。
また、「国等に対して採納の手続を経て支出した寄附金であっても、その寄附金が特定の団体に交付されることが明らかであるなど最終的に国等に帰属しないと認められるものは、国等に対する寄附金には該当しない」ものとして取り扱われています(所基通78-6)。
なお、地方税法において、都道府県、市町村又は特別区に対する寄附金は、いわゆる「ふるさと納税」の対象とされ、特別の税額控除が適用されます(地法37の2、314の7)。

(3) 寄附者の判定

「横浜市定額給付金給付事業実施要綱」において、定額給付金の申請及び受給を行うことができる者は、住民基本台帳に記録されている者の場合、その者の属する世帯の世帯主とされており、世帯主以外は、たとえ定額給付金の給付対象者であったとしても、定額給付金の申請及び受給を自ら行うことができません。
本件NPO法人は、横浜市と締結した「定額給付金の代理受領及び横浜市への寄附手続き事業に関する協定書」に基づき、本件定額給付金を最終的に横浜市の指定口座に払い込むこととなります。また、本件NPO法人には、本件世帯主から本件定額給付金の受領とその寄附について委任による代理権限が与えられており、本件NPO法人が行う本件定額給付金の受領とその寄附の法的効果は、本件世帯主に帰属するものと考えられます。
したがって、本件世帯主が、同一世帯内に属する他の給付対象者の定額給付金を寄附した場合であっても、本件世帯主が受給すべき定額給付金を寄附したに過ぎませんから、本件定額給付金は本件世帯主が寄附したものと考えます。

(4) 本件定額給付金の特定寄附金該当性

本件定額給付金の寄附に当たっては、寄附者(本件世帯主)があらかじめその使いみちを選択することができることとなっているものの、その選択によって具体的な使途までは指定できませんから、本件定額給付金の寄附によって特別の利益が本件世帯主に直接的には及ばないものと考えられます。
したがって、本件定額給付金は、上記(2)の特定寄附金に該当するものと考えます。

(5) 本件定額給付金の取扱い

以上のことから、本件定額給付金は、本件世帯主により支出された特定寄附金に該当し、本件世帯主の所得税の確定申告の際、所得税法第78条の寄附金控除の対象として取り扱われるものと考えます。