横浜市では、本年5月から「横浜市定額給付金給付事業実施要綱」に基づく定額給付金の申請の受付を開始し、この申請と同時に、横浜市への定額給付金の全部又は一部の寄附を募っています。
総務省が定めた「定額給付金給付事業費補助金交付要綱」によれば、定額給付金は、申請者に対して給付することが要件とされているため、定額給付金と寄附金を相殺することができません。そこで、横浜市では、定額給付金を寄附しようとする給付金の申請・受給者である世帯主(以下「本件世帯主」といいます。)の手続負担を軽減するために、本件世帯主に代わって特定非営利活動法人市民セクターよこはま(以下「本件NPO法人」といいます。)に代理受領及び横浜市への寄附手続を委任する方法を採用することとしました。
別紙1−2の事実関係において、本件世帯主が本件NPO法人に委任して横浜市へ寄附する定額給付金(以下「本件定額給付金」といいます。)は、「国又は地方公共団体に対する寄附金」に該当し、本件世帯主の所得税の確定申告の際、所得税法第78条の寄附金控除の対象となるものとして取り扱ってよろしいか伺います。
※ 代理受領する本件NPO法人は、中間支援組織*として位置付けられていますが、租税特別措置法第66条の11の2第3項に規定する認定特定非営利活動法人には該当しません。
*中間支援組織・・・市民活動団体と行政との間にあって、一方で市民活動団体に対して、市民活動相互の連携や情報交換、情報や技術・技能、ノウハウの提供などの機能を持ち、他方で行政に対しては、市民活動全体の立場を踏まえて政策提言を行う組織。
【定額給付金の給付に合わせた寄附の流れ図】
定額給付金については、所得税を課さないこととされており、所得税法上、非課税所得とされています(措法41の8)。
個人が、国又は地方公共団体に対して支出した寄附金は、特定寄附金として寄附金控除の対象とされています(所法78、
一)。ただし、「寄附をした者がその寄附によって設けられた設備を専属的に利用することその他特別の利益がその寄附をした者に及ぶと認められるもの」は、特定寄附金から除かれます(所法78
、
一括弧書)。
また、「国等に対して採納の手続を経て支出した寄附金であっても、その寄附金が特定の団体に交付されることが明らかであるなど最終的に国等に帰属しないと認められるものは、国等に対する寄附金には該当しない」ものとして取り扱われています(所基通78-6)。
なお、地方税法において、都道府県、市町村又は特別区に対する寄附金は、いわゆる「ふるさと納税」の対象とされ、特別の税額控除が適用されます(地法37の2、314の7)。
「横浜市定額給付金給付事業実施要綱」において、定額給付金の申請及び受給を行うことができる者は、住民基本台帳に記録されている者の場合、その者の属する世帯の世帯主とされており、世帯主以外は、たとえ定額給付金の給付対象者であったとしても、定額給付金の申請及び受給を自ら行うことができません。
本件NPO法人は、横浜市と締結した「定額給付金の代理受領及び横浜市への寄附手続き事業に関する協定書」に基づき、本件定額給付金を最終的に横浜市の指定口座に払い込むこととなります。また、本件NPO法人には、本件世帯主から本件定額給付金の受領とその寄附について委任による代理権限が与えられており、本件NPO法人が行う本件定額給付金の受領とその寄附の法的効果は、本件世帯主に帰属するものと考えられます。
したがって、本件世帯主が、同一世帯内に属する他の給付対象者の定額給付金を寄附した場合であっても、本件世帯主が受給すべき定額給付金を寄附したに過ぎませんから、本件定額給付金は本件世帯主が寄附したものと考えます。
本件定額給付金の寄附に当たっては、寄附者(本件世帯主)があらかじめその使いみちを選択することができることとなっているものの、その選択によって具体的な使途までは指定できませんから、本件定額給付金の寄附によって特別の利益が本件世帯主に直接的には及ばないものと考えられます。
したがって、本件定額給付金は、上記(2)の特定寄附金に該当するものと考えます。
以上のことから、本件定額給付金は、本件世帯主により支出された特定寄附金に該当し、本件世帯主の所得税の確定申告の際、所得税法第78条の寄附金控除の対象として取り扱われるものと考えます。