別紙1-1

事前照会の趣旨(法令解釈・適用上の疑義の要約及び事前照会者の求める見解の内容)

小規模企業共済制度は、これを取り扱う独立行政法人中小企業基盤整備機構によれば「国がつくった経営者の退職金制度」であり「廃業時の退職金を、老後の生活資金を、転業時の事業資金を、かしこく節税しながら準備いただけます。」として、小規模企業者に対し、広く利用の呼びかけがされています。
また、小規模企業共済法では、小規模企業者が出国し非居住者となることは解約事由とされておらず、非居住者である加入者も多いと思われます。
そこで、非居住者となってからも加入を続け掛金を支払ってきました私が、このたびの解約に当たり支払を受ける小規模企業共済法に基づく(旧第一種)共済契約の解約手当金(以下「本件解約手当金」といいます。)については、所得税法上、下記のとおり取り扱って差し支えないか照会します。

〔照会事項1〕
非居住者が支払を受ける小規模企業共済法に基づく共済契約の解約手当金については、所得税法第161条第1号に規定する国内源泉所得に該当し、一時所得となる。
〔照会事項2〕
非居住者が、居住者であった期間内に支払った掛金の総額は、一時所得に係る総収入金額を得るために支出した金額とならず、非居住者であった期間内に支払った掛金(以下「本件掛金」という。)の総額のみを、総収入金額を得るために支出した金額として、総収入金額から控除し、一時所得を算出する。

別紙1-2

事前照会に係る取引等の事実関係(取引等関係者の名称、取引等における権利・義務関係等)

  • ・加入期間:平成8年12月から平成20年10月
  • ・解約手当金受給時:平成20年12月
  • ・年齢:65歳未満
  • ・非居住者期間:平成11年5月から照会時現在(オーストラリア在住)
  • ・解約事由:任意解約

(注)個人情報保護の観点から、審理に必要な事実のみを掲載しています。

別紙1-3

事実関係に対して事前照会者の求める見解となることの理由(具体的な根拠となる事例、裁判例、学説及び既に公表されている弁護士、税理士、公認会計士等の見解を含む。)

〔照会事項1〕について
小規模企業共済法に基づく共済契約の解約手当金のうち、次のものは退職所得とされています(所令722三)。
  • (1) 年齢65歳以上である被共済者が同法第7条第3項の規定により契約を解除したことにより支給される解約手当金
  • (2) 同法第7条第4項の規定により契約が解除されたものとみなされたことによって支給される解約手当金
したがって、本件解約手当金は、上記(1)及び(2)に掲げる解約手当金以外の解約手当金に該当することになりますので、一時所得となります。
なお、オーストラリアの居住者である場合、「所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国とオーストラリア連邦との間の協定」が適用されますが、同協定には該当する条項がない上、「明示なき所得」条項が置かれていませんので、本件解約手当金については、国内法の規定により課税関係が生ずることとなります。
〔照会事項2〕について
居住者が、みなし退職所得に該当しない解約手当金の支払を受ける場合には、その収入に係る小規模企業共済契約に基づく掛金の総額は、一時所得の金額の計算上、支出した金額に算入しないこととなっています(所令1832二但書ハ)。これは、小規模企業共済契約に基づく掛金が、小規模企業共済等掛金控除として所得控除の対象とされており(所法75)、その支払った金額の全額が既に所得金額から控除されていることによるものと考えられます。つまり、居住者について、小規模企業共済契約に基づく掛金を、一時所得の金額の計算上、支出した金額に算入しないこととしているのは、同一の掛金について二重に控除することを防止する趣旨であると解されます。
しかしながら、本件掛金は、非居住者期間中に支払った掛金であり、小規模企業共済等掛金控除の適用をそもそも受けられませんので(所法165)、所得金額の計算上未だ控除されていないものですから、一時所得の金額の計算上、支出した金額に算入しても二重に控除することにはなりません。
したがって、このような立法趣旨からすると、本件掛金は、一時所得の金額の計算上、支出した金額に算入して差し支えないものと考えられます。

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