1 事前照会の趣旨

当組合は、当組合の加盟会社等の従業員及び役員(以下「従業員等」といいます。)を組合員として、当該組合員の相互共済福利を目的として組織された共済組合であり、これまで、当該組合員に対して、金銭消費寄託契約により金銭の寄託を受け、利息を支出する、いわゆる社内預金制度(以下「旧制度」といいます。)を実施していました。
 今般、当組合では、当組合の事務軽減及び組合員へのサービス拡充(ATMの利用可能等)を目的として、金融機関の預金等を活用した積立貯蓄奨励金支給規則(以下「本制度」といいます。)を制定し、旧制度から移行しております。
 本制度では、金融機関から支払われる預金等の利息とは別に、当組合から組合員に対し一定の奨励金(以下「本件奨励金」といいます。)を当該金融機関を通じて支給することを予定しています。
 当組合から組合員に対し支給される本件奨励金は、所得税法上、雑所得に該当し、当組合は、本件奨励金の支払の際に源泉徴収を要しないと解して差し支えないか、照会いたします。

2 事前照会に係る取引等の事実関係

  1. (1) 本制度の概要
    1. イ 本制度の目的
       本制度は、組合員の貯蓄の奨励を図ることにより組合員の福祉の増進を目的としています。
    2. ロ 本制度の対象となる貯蓄
       本制度の対象となる貯蓄は、当組合との間で一定の契約を締結した金融機関が取り扱う商品のうち、次のもの(以下「積立貯蓄」といいます。)に限ります。
      1. (イ) 指定合同運用金銭信託
      2. (ロ) 自由金利型定期預金M型
      3. (ハ) 当組合が特に認めた上記(イ)及び(ロ)に準拠する貯蓄商品
    3. ハ 本件奨励金の算出
       本件奨励金は、組合員が上記ロの要件を満たす口座を有し、かつ、積立貯蓄を決算日(9月25日及び3月25日)に有している場合で、その決算日を含む会計期間(※)の平均残高に当組合が定める一定の利率を乗じて計算した金額から金融機関から交付された利息の金額を控除した残額を支給することとします。
      (※) 会計期間:3月26日〜9月25日、9月26日〜3月25日
    4. ニ 本件奨励金の支給
       本件奨励金の支給日は、決算日の翌営業日とし、金融機関を通じて、金融機関から支払われる預金等の利息とは区分して、当組合から組合員に対する奨励金という名目により支給されます。
  2. (2) 当組合の概要
    1. イ 当組合の目的及び事業内容
       当組合は、組合員の相互共済福利を目的とする組織であり、その目的を達成するために、慶弔見舞金等の贈与、協同生活及び貯蓄の奨励、消費負担の軽減と生活程度の向上、子女教育に対する援助、文化体育活動に対する援助及び指導、住宅建築に対する助成、災害に対する救済、レクリエーションに対する補助等の事業を行います。なお、当組合は、加盟会社等から完全に独立した団体であり、所得税法第2条《定義》第1項第8号に規定する人格のない社団等に該当します。
    2. ロ 組合員から当組合に対する掛金の支出
       組合員は、加入の月から、毎月、会社から支給される賃金総額の1%の金額を当組合に対して掛金として支出します。
    3. ハ 加盟会社等から当組合に対する補給金の支出
       加盟会社等は、当組合に対し、加盟会社等に勤務する従業員等に係る上記ロの金額の1.15倍相当額を当組合に対して補給金として支出します。

3 事前照会者の求める見解となることの理由

  1. (1) 本件奨励金の所得区分
    1. イ 利子所得について
       所得税法第23条《利子所得》第1項では、利子所得とは、公社債及び預貯金の利子等に係る所得をいう旨規定しています。
       この利子について特段定義規定は設けられていないものの、一般的には利息と同義に解し、元本債権から発生する法定果実を指すものと考えます。
       本件についてみると、組合員は金融機関に対し元本債権を有するものであり、当組合に対して元本債権を有していないことからすれば、当組合から組合員に対して支給される本件奨励金は、元本債権から発生する法定果実には当たりません。したがって、本件奨励金は利子所得に該当しないものと考えます。
    2. ロ 給与所得について
       所得税法第28条《給与所得》第1項では、給与所得とは、俸給、給料、賃金、歳費及び賞与並びにこれらの性質を有する給与に係る所得をいう旨規定しています。
       本件奨励金は、その支給に当たり補給金とは別に加盟会社等に費用負担を求めるものではなく、当組合の運営資金を原資として組合員に支給するものであり、その給付主体は、形式的にも実質的にも当組合となります。当組合と組合員との間に雇用関係及びこれに類する関係はないことから、本件奨励金は給与所得に該当しないものと考えます。
    3. ハ 一時所得について
       所得税法第34条《一時所得》第1項では、一時所得とは、利子所得、配当所得、不動産所得、事業所得、給与所得、退職所得、山林所得及び譲渡所得以外の所得のうち、営利を目的とする継続的行為から生じた所得以外の一時の所得で労務その他の役務又は資産の譲渡の対価としての性質を有しないものをいう旨規定しています。
       本件奨励金は、本制度に基づき、当組合から組合員に対し一定の貯蓄を有する場合に継続的に支払われることとされていることからすれば、上記の一時の所得に該当しないものと考えます。したがって、本件奨励金は一時所得にも該当しないものと考えます。
    4. ニ 雑所得について
       所得税法第35条《雑所得》第1項では、雑所得とは、利子所得、配当所得、不動産所得、事業所得、給与所得、退職所得、山林所得、譲渡所得及び一時所得のいずれにも該当しない所得をいう旨規定しています。
       本件奨励金は、上記イからハまでの検討に加え、配当所得、不動産所得、事業所得、退職所得、山林所得及び譲渡所得に該当しないことは明らかですので、雑所得に該当するものと考えます。
  2. (2) 源泉徴収の要否
     源泉徴収が必要となる支払については、所得税法に限定的に列挙されているところ、本件奨励金は、所得税法に規定されている源泉徴収を要する支払のいずれにも該当しないことから、当組合は本件奨励金の支払の際に、源泉徴収を要しないと考えます。

○ 国税庁文書回答税目別検索