別紙

1 事前照会の趣旨
「自動体外式除細動器(AED:Automated External Defibrillator。以下「AED」といいます。)」は、従来、医師・看護師・救急救命士の資格を有する者にしかその使用が認められていませんでしたが、平成16年7月1日付の厚生労働省医政局長通知(医政発第0701001号)により、医師等以外のいわゆる非医療従事者にもAEDの使用が可能となり、多くの人が集まる空港やスポーツ関連施設への普及が進むとともに、心室細動を発症する可能性の高い心臓病(重度の不整脈、心筋梗塞の既往者等)の患者(以下「心臓病患者」といいます。)が病院外で心室細動が発症した際に、随伴する家族や介護者等が救命のためAEDを使用する目的で、医師の指示・処方に基づきAEDを購入又は賃借し、心臓病患者の家庭に常備又は移動する際に携帯するケースも増えてきています。
このように心臓病患者が医師の指示・処方に基づきAEDを購入し又は賃借した場合、その購入費用又は賃借料は、所得税法第73条《医療費控除》第1項に規定する医療費控除の対象になると考えてよろしいか伺います。
 
2 事前照会に係る取引等の事実関係
  1. (1) 経緯等について
    1. イ 各地のマラソン大会などスポーツ中の心臓突然死事故をきっかけに、心臓突然死の原因である心室細動に対してAEDを使用した早期除細動を行うことが必要であるとの社会的認識が高まり、平成15年4月から、救急救命士法の改正により、救命士が現場で医師の指示なしに心室細動を発症した患者に対し除細動を行うことができるようになりました。
    2. ロ 平成15年の構造改革特区提案において、心室細動を発症した患者に対し救命士が現場に到着するまでの間に、その現場に居合わせた者が電気的除細動を速やかに行うことがより有効であるとの観点から、非医療従事者によるAEDの使用を認めるべきとの提案がなされ、同年9月、政府は、構造改革特別区域推進本部決定として、一定の条件を満たす場合には、非医療従事者がAEDを用いても、医師法違反とならないとする方針を明らかにしました。
    3. ハ このような状況を踏まえ、平成15年11月、厚生労働省に「非医療従事者による自動体外式除細動(AED)の使用のあり方検討会」が設置され、同検討会において、救急蘇生の観点からみた非医療従事者によるAEDの使用条件のあり方等についての検討が行われ、平成16年7月1日に同検討会の報告書が厚生労働省に提出されました。
      また、厚生労働省は、同日付で同報告書に基づき厚生労働省医政局長通知(医政発第0701001号)を各都道府県知事あてに発出し、非医療従事者によるAEDの使用が認められることとなりました。
  2. (2) AEDについて
    1. イ AEDとは、突然の心機能停止の原因で最も多い「心室細動(心臓が痙攣を起こし、ポンプとしての機能を果たせない症状)」を電気ショックにより取り除く治療用具の一種で、自動的に心電を解析し、必要な場合のみ所定の電気ショックのための充電を行い、電気ショックを発する機器であり、厚生労働省の薬事法上の認可を受けた医療用具です。
    2. ロ 心室細動が発症した場合、電気的除細動が唯一の効果的治療法です。
    3. ハ 医師等が電気的除細動による治療を行った場合、その治療費は、社会保険診療報酬の適用対象とされます。
 
3 2の事実関係に対して事前照会者の求める見解となることの理由
医療費控除の対象となる医療費の範囲については、所得税法第73条第2項、同法施行令第207条《医療費の範囲》及び同法施行規則第40条の3《医療費の範囲》に規定されているほか、所得税基本通達73−3《控除の対象となる医療費の範囲》(1)において、「医師等による診療等を受けるための通院費若しくは医師等の送迎費、入院若しくは入所の対価として支払う部屋代、食事代等の費用又は医療用器具等の購入、賃借若しくは使用のための費用で、通常必要なもの」は、医師等による診療等を受けるため直接必要な費用に該当し、医療費に含まれる旨定められています。
心臓病患者が購入又は賃借するAEDについては、次の理由から、その費用の支出が医師等による診療等を受けるため直接必要なものであると考えられますので、心臓病患者が購入又は賃借するAEDの購入費用又は賃借料については、医療費控除の対象となる医療費に該当するものと考えます。
  1. (1) 心室細動が発症した場合、電気的除細動が唯一の効果的治療法であること。
  2. (2) 心臓病患者については、心室細動が発症する可能性が高いことから、病院外で同症状が発症した際に、随伴する家族や介護者等が救命のためAEDを使用する目的で、医師の指示・処方に基づきAEDを購入又は賃借するものであること。
  3. (3) AEDを用いた除細動は、医療行為に該当するものであること。
  4. (4) 心臓ペースメーカーの代金及び同メーカーの電池の代金については、医師等による診療等を受けるため直接必要な医療用器具等の購入に該当し、医療費控除の対象となっていること。
なお、AEDは、心臓病患者以外の者、すなわち誰でも購入又は賃借することができますので、心臓病患者がAEDの購入費用又は賃借料について医療費控除を受けるためには、AEDの購入又は賃借が医師の指示・処方に基づくものであることを明らかにする書類(証明書、診断書その他これらに類する書類)が必要になると考えます。
  1. (以上)
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