1 事前照会の趣旨

 私は、右手人差し指の切創の診療に際し、当初診療を行ったA市民病院からいわゆる紹介状(以下「本件紹介状」といいます。)を受け取り、紹介先のB整形外科医院に本件紹介状を交付して引き続き治療を行いました。
 本件紹介状の作成料として、A市民病院に健康保険が適用される文書料(以下「本件文書料」といいます。)を支払っています。本件文書料は、いわゆる診断書などの作成に係る文書料とは異なり、紹介先のB整形外科医院での治療に必要な費用と考えられますので、医療費控除(所法731)の対象となる医療費に該当するものと解して差し支えないかお伺いいたします。

2 事前照会に係る事実関係

  1. (1) 私は、休日にカッターナイフにより右手人差し指に切創を負ったため、A市民病院の救急外来を受診し、消毒及び縫合等の応急処置を受けました。
  2. (2) A市民病院の救急外来においては応急処置が行われましたが、切創の箇所が指の基部であり、今後運動障害が出現する可能性もあったことから、担当の医師と相談の上、その後の治療を自宅近隣のB整形外科医院で受けることとしました。
  3. (3) B整形外科医院で受診するに当たって、A市民病院からそれまでの診療状況を示した本件紹介状の交付を受け、その発行に係る手数料としてA市民病院に本件文書料を支払いました。
     なお、本件文書料は、診療情報提供料(T)として健康保険の適用の対象(健康保険法76)とされており、その自己負担額として支払ったものです。
  4. (4) 後日、私は、B整形外科医院に本件紹介状を交付して本件に係る切創の治療を引き続き行いました。

(注) 診療情報提供料(T)とは、「医療機関間の有機的連携の強化及び医療機関から保険薬局又は保健・福祉関係機関への診療情報提供機能の評価を目的として設定されたものであり、両者の患者の診療に関する情報を相互に提供することにより、継続的な医療の確保、適切な医療を受けられる機会の増大、医療・社会資源の有効利用を図ろうとするもの」であり、「保険医療機関が、診療に基づき別の保険医療機関での診療の必要を認め、これに対して、患者の同意を得て、診療状況を示す文書を添えて患者の紹介を行った場合に算定する」ものとされています(平成26年3月5日保発0305第3号「診療報酬の算定方式の一部改正に伴う実施上の留意事項について」)。
  なお、診療情報提供料(T)は、紹介先保険医療機関ごとに患者1人につき月1回に限り算定するものとされています(平成26年厚生労働省告示第57号別表第一)。

3 事前照会者の求める見解となることの理由

 医療費控除の対象となる医療費は、医師又は歯科医師による診療又は治療、治療又は療養に必要な医薬品の購入その他医療又はこれに関連する人的役務の提供の対価のうち通常必要であると認められるものとされています(所法732)。そして、その対価については、その病状等に応じて一般的に支出される水準を著しく超えない部分の金額とされています(所令207)。
 また、医師等による診療等を受けるために直接必要な通院費や医師等の送迎費などの費用で、通常必要なものは、医療費に含まれるものとして取り扱われています(所得税基本通達73−3)。
 そうすると、いわゆる診断書などの作成に係る文書料については、医師が診療又は治療した内容等を記載した文書の発行に係る手数料であり、その発行された文書は、通常、生命保険会社等へ給付金等を請求する際の提出書類等として使用されることから、医師等の診療又は治療の対価に該当せず、医療費控除の対象にならないと考えられます。
 しかしながら、本件文書料は、次の理由から、医療費控除の対象となる医療費に該当すると解されます。

  1. (1) 本件紹介状は、A市民病院が、今後運動障害が出現する可能性もあると判断したため、その後の診療をB整形外科医院で継続して適切に受けることができるよう作成されたものであり、B整形外科医院での診療に当たりB整形外科医院に交付されたものであることからすれば、本件紹介状に係る本件文書料は、B整形外科医院による診療を受けるために直接必要な費用と考えられること。
  2. (2) 本件紹介状のような診療情報提供書による医療機関同士の連携は、医療機関間で通常行われる行為であり、本件紹介状はA市民病院が、その診療に基づき、B整形外科医院での診療の必要性を認めて作成されたものであることからすれば、その作成費用(=本件文書料)は、B整形外科医院での診療に当たって通常必要なものと考えられること。
  3. (3) 本件文書料は、診療情報提供料(T)に該当するものであり、「保険医療機関が、診療に基づき、別の保険医療機関での診療の必要を認めた上で、紹介先保険医療機関ごとに患者1人につき月1回に限り算定」されるものであることからすれば、医師等による診療等の対価として、通常必要なものであり、その症状に応じて一般的に支出される水準を著しく超えない部分の金額と考えられること。

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