別紙

1 事前照会の趣旨

 当社は、外国金融機関が発行する外貨建仕組債(所得税法第2条《定義》第1項第9号に規定する公社債に該当し、以下「本件仕組債」といいます。)の募集を居住者及び内国法人に対して開始する予定です。
本件仕組債は、満期時の償還を円貨で行うことから、本件仕組債の保有期間中の為替相場の変動による損益が生じることになりますが、満期日の5営業日前の為替レート(以下「評価日為替レート」といいます。)が、約定時為替レートよりも20%以内の「円高」であれば、生じた為替差損相当額の補填金(以下「本件補填金」といいます。)を付して、円貨ベースの元本を保証することとしています。
本件補填金は、一定の条件が満たされた場合に支払われる償還金額の一部分であるところ、本件補填金が支払われる場合、本件仕組債は、発行価額(額面金額)と同額で償還することから、償還差損益は発生せず、本件補填金に係る課税関係は生じないこととして差し支えないか照会します。

2 事前照会に係る事実関係

 本件仕組債の概要は以下のとおりです。

(1) 額面金額
○○(外貨)

(2) 発行価額
○○(外貨)(額面金額と同額)

(3) 満期日
受渡日から1年後

(4) 利払日
A月及びB月

(5) クーポン利率
年率△%(円)

(6) 償還金額

イ 約定時為替レート≧評価日為替レート≧約定時為替レート×80% の場合、額面金額×評価日為替レート+本件補填金(※)で円貨により償還します。
すなわち、額面金額×約定時為替レートで円貨により償還します。

※ 本件補填金は、以下の算式により計算します。
【算式】額面金額×評価日為替レート×{(約定時為替レート/評価日為替レート)-1}

ロ 上記イ以外の場合、額面金額×評価日為替レートで円貨により償還します。

(7) 評価日
満期日の5営業日前

3 事前照会者の求める見解となることの理由

(1) 外貨建債券の償還差益
公社債の償還差益とは、償還金額(又は償還により受ける金額)がその発行価額(又は取得価額)を超える場合におけるその差益をいい(措法41の127、41の1312)、雑所得として取り扱われています(所基通35-1(3))。
払込み、利払い及び償還が外貨で行われる外貨建債券の場合、その外貨建債券の償還によって生ずる償還差益とは、払い込んだ外貨と償還された外貨との差額であり、その外貨ベースの差額を償還時の為替レートで円換算した金額が雑所得の収入金額となります。

(2) 外貨建債券の償還時に係る為替差益
払込み、利払い及び償還が外貨で行われる外貨建債券の取得及び償還はそれぞれ外貨建取引に該当することから、外貨建取引の換算規定(所法57の31)に従い、償還金額及び発行価額をそれぞれ円換算すると為替差損益が計算されます。これを所得として認識すべきかどうかは、所得税法第36条《収入金額》第1項に規定する「収入金額とすべき金額又は総収入金額に算入すべき金額」として実現しているかどうかにより判断することとなります。そして、券面に表示された金額(元本相当額)と同じ金額が同一の外貨で支払われる場合の為替差損益は、単に債券購入時の円換算額と償還時の円換算額の評価差額にすぎず、同一の外貨である限り、為替差損益に相当する経済的価値が実現しているとは認められないものと解されています。

(3) 本件補填金について
公社債の発行及び償還が外貨で行われる場合には、上記(2)のとおり、外貨である償還金を同一の外貨で保有している限り、為替差損益に相当する経済的価値が実現しているとは認められません。しかしながら、本件の場合は、本件仕組債の発行が外貨で行われ、償還が円貨で行われるところ、券面に表示された通貨と異なる通貨で償還金額を支払うことになるので、本件仕組債の保有期間の為替相場の変動による損益部分は、償還金額として償還時に実現し、償還差損益として認識することになります。
そして、本件補填金は、一定の為替相場の変動(上記2(6)イ)が生じた場合に償還金額の計算の一環として算定されるものであり、「補填金」という名目ではあるものの、償還金額の計算に包含されるものです。
したがって、本件補填金は、一定の条件が満たされた場合に支払う償還金額の一部分であるところ、本件補填金を支払う場合、本件仕組債は、発行価額(額面金額)の円換算額と同額で償還することから、償還差損益は発生せず、本件補填金に係る課税関係は生じないこととなります。

○ 国税庁文書回答税目別検索