別紙

1 事前照会の趣旨

 A市では、定住促進及び同市の活性化を図るため、同市内に定住する意思をもって新築住宅等を取得した者を対象として、A市定住条例に基づく定住奨励金(以下「本件奨励金」といいます。)を交付する予定です。
本件奨励金の交付を受けようとする者は、対象となる住宅を取得した翌年度以降毎年度、住民票の写しその他一定の書類を添付した「A市定住奨励金交付申請書」を同市が定める一定の期間内に同市に提出することで、最高7年間、その対象となる住宅及び土地に係る固定資産税を基に計算した金額の交付を受けることができます。
この本件奨励金の交付がある場合の住宅借入金等特別控除の適用関係及び本件奨励金の所得区分について、下記3のとおり取り扱って差し支えないか、伺います。

2 事前照会に係る事実関係

 本件奨励金の概要は以下のとおりです。

(1) 趣旨
平成24年4月1日から平成27年1月1日までに、A市内に定住を目的として住宅を取得した者に対し、本件奨励金を交付することにより、定住人口の増加を図り、もって市の活性化に寄与することを目的としています。

(2) 本件奨励金の交付対象者
本件奨励金の交付を受けることができる者(以下「交付対象者」といいます。)は、A市内において住宅を取得(相続又は贈与による取得を除きます。以下同じです。)した者のうち、以下のいずれの要件にも該当する者です。

イ A市の住民として永住の意思をもって当該住宅に居住し、同市の住民基本台帳に記録されている者であること。

ロ 当該住宅の取得前にA市内に住宅を所有したことがないこと(当該住宅の取得日1年以上前に同市から転出し、かつ、同市内に住宅を所有していた場合を除きます。)。

ハ その者及びその世帯に属する者に規則で定める市税等(※)の滞納がないこと。

※ 市税等とは、市県民税、固定資産税、軽自動車税、国民健康保険税、介護保険料及び後期高齢者医療保険料が該当します。

(3) 対象となる住宅及び土地

イ 交付対象者が平成24年4月1日から平成27年1月1日までの間に取得した一定の新築住宅又は中古住宅

ロ 交付対象者が上記イの住宅の敷地の用に供するために取得した土地

(4) 本件奨励金の交付申請手続等
本件奨励金の交付申請手続等は、次のとおりです。

イ 本件奨励金の交付を受けようとする交付対象者は、対象となる住宅を取得した翌年度以降(※)、A市長に対し、住民票の写しその他同市長が必要と認める一定の書類を添付した「A市定住奨励金交付申請書」を当該翌年度以降の各年度の9月1日から同月30日までの間に提出しなければならないこととしています。

※ 本件奨励金の交付期間は、交付対象者に固定資産税が課税された年度(対象となる住宅の取得をした翌年度)から7年間です。

ロ A市長は、交付対象者から提出された「A市定住奨励金交付申請書」等の内容を審査した上で、「A市定住奨励金交付決定通知書」によりその交付の可否及びその交付金額を交付対象者に通知します。

※ A市長は、交付対象者が偽りその他不正の手段により本件奨励金の交付の決定を受けたときは、上記の決定を取り消すことができます。この場合、既に交付した奨励金があるときは、当該奨励金を返還させることができます。

ハ 交付対象者で、上記ロにより交付の決定を受けた者が、奨励金の交付を請求しようとするときは、「A市定住奨励金交付請求書」によりA市長に請求することとしています。

(5) 本件奨励金の交付金額
本件奨励金の交付金額は、次に掲げる額の合算額(上限18万円)です。

イ 対象となる住宅及び土地に係る各年度の固定資産税相当額(固定資産税の減額措置を受けた場合は、その減額後の金額。)

ロ 対象となる住宅について新築住宅を市内建設業者が建設したときは、上記イの額の20パーセントの額

ハ 交付申請時に、交付対象者と同一の世帯に義務教育終了前の者がいるときは、上記イの額の20パーセントの額

3 事前照会者の求める見解となることの理由

(1) 本件奨励金の交付がある場合の住宅借入金等特別控除の適用関係について
住宅借入金等特別控除の適用上、住宅借入金等の金額は、その住宅の取得等の対価の額又は費用の額が限度とされていますが、住宅の取得等に関し補助金等の交付を受ける場合には、その住宅の取得等の対価の額又は費用の額からその補助金等の額を控除することとされています(措法411、措令265)。ここでいう補助金等とは、国又は地方公共団体から交付される補助金又は給付金その他これらに準ずるものをいうとされており(措令265)、補助金又は給付金等の名称にかかわらず、住宅の取得等と相当の因果関係のあるものとされています(措通41-26の2(2))。
本件奨励金は、A市への定住促進及び同市の活性化を目的として交付するものであるところ、本条例で定める一定の条件の下に住宅を取得した者に限定して支払うものであることから、住宅の取得と交付を受ける本件奨励金の間には相当の因果関係があると考えられます。したがって、本件奨励金は、住宅借入金等特別控除の額の計算上、住宅の取得の対価の額から控除する必要があると考えます。
なお、本件奨励金の初回の金額は住宅を取得した年の翌々年に確定すること及び本件奨励金の交付期間が最高7年間に及ぶことから、住宅借入金等特別控除の適用を受ける確定申告書を提出する時までに本件奨励金の総額が確定しないこととなります。したがって、交付を受ける本件奨励金の見込総額を住宅の取得の対価の額から控除して住宅借入金等特別控除を適用し、後日、本件奨励金の確定額と見込総額とが異なることとなったときは、遡及してその控除の額を訂正(修正申告又は更正の請求)することとなると考えます(措通41-26の3)。

(2) 本件奨励金の所得区分等について
住宅の取得時に一時金として交付を受けるいわゆる定住奨励金については、一般的には一時所得に該当すると考えられますが、本件奨励金は、最高7年間にわたり継続的に交付を受けるものであることから、雑所得に該当すると考えます。また、その収入すべき時期は、「A市定住奨励金交付決定通知書」によりA市長から交付金額の通知を受けた日とするのが相当と考えます。

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