別紙

1 事前照会の趣旨

当法人は、全国保険医団体連合会が運営を行っていた「保団連休業保障共済制度」を引き継いだ「保険医休業保障共済保険」(以下「本保険」といいます。)に係る特定保険業を行うために新設された非営利型一般社団法人です。
本保険により支払われる給付金(詳細は次の「2 事実関係」参照)に係る課税上の取扱いは、次表のとおりで差し支えないかお伺いします。

給付金の種類 受取人
保険契約者(=被保険者) 所定の受取人
傷病休業給付金 非課税 -
入院給付金
長期療養給付金
弔慰給付金 - 一時所得
高度障害給付金 非課税 -
脱退給付金 一時所得 -
  1脱退又は減口
2満期
3死亡 - 一時所得
4高度障害 非課税 -

2 事実関係

(1) 認可特定保険業者及び特定保険業について
平成23年5月13日に保険業法等の一部を改正する法律の一部を改正する法律(平成22年法律第51号)が施行されたことに伴い、平成17年の保険業法等の一部を改正する法律(平成17年法律第38号)(以下「平成17年改正法」といいます。)の公布日(平成17年5月2日)に特定保険業を行っていた団体等で一定の要件に該当するもののうち、行政庁の認可を受けたものについては、当分の間、認可特定保険業者として平成17年改正法の公布日に行っていた特定保険業の範囲内でその事業の継続が可能となりました(平成17年改正法附則21)。当法人は、金融庁からの認可を受けて認可特定保険業者となりました。
この特定保険業とは、保険業法に基づき特定の者を相手方とする保険業をいいます。

(2) 本保険の概要
本保険は、特定の者の範囲として、約款において加入対象者を次のように定めています。

  • イ 加入時現在、加入年齢が60歳未満であること。
  • ロ 保険医であること。
  • ハ 1つの主たる医療機関等で週4日以上かつ週16時間以上業務に従事していること。なお、勤務医の場合は、常勤であることを要す。
  • ニ 加入時現在、健康であること。

本保険は、「加入者の傷害又は疾病による休業時の生活安定に寄与するため、(中略)これを実施することを目的」としています。本保険から支払われる給付金は次の6種類であり、その支払事由の概要(一部抜粋)及び受取人は次表のとおりです。
なお、加入者とは、加入対象者のうち、本保険に係る契約を締結した者をいい、拠出金(保険料)を負担する保険契約者であり、かつ、本保険の被保険者でもあります。

給付金の種類 支払事由 受取人
傷病休業給付金 加入者が所定の傷害又は疾病を直接の原因として加入期間中に6日以上連続して休業したとき 加入者
入院給付金 傷病休業給付金の対象となる期間中に入院したとき
長期療養給付金 休業認定された休業中に、傷病休業給付金の通算給付日数限度(500日)を超えるとき
弔慰給付金 加入者が、加入期間中に死亡したとき 加入者があらかじめ指定した者1名(例外あり)
高度障害給付金 加入者が、加入日以後の傷害又は疾病によって加入期間中に高度障害状態になったとき 加入者
脱退給付金
1脱退又は減口
加入者
2満期
3加入者が、加入期間中に死亡したとき
弔慰給付金に同じ
4加入者が、加入期間中に高度障害状態になったとき
加入者

3 当法人の求める見解となることの理由

(1) 傷病休業給付金、入院給付金、長期療養給付金、高度障害給付金及び加入者の高度障害に基因して支払を受ける脱退給付金について
損害保険契約に基づく保険金、生命保険契約又は旧簡易生命保険契約に基づく給付金及び損害保険契約又は生命保険契約に類する共済に係る契約に基づく共済金で、身体の傷害に基因して支払を受けるものその他これらに類するものについては、所得税を課さないこととされています(所法91十七、所令30一)。
また、疾病により重度障害の状態になったことなどにより、生命保険契約又は損害保険契約に基づき支払を受けるいわゆる高度障害保険金、高度障害給付金、入院費給付金等は、所得税法施行令第30条《非課税とされる保険金、損害賠償金等》第1号に掲げる「身体の傷害に基因して支払を受けるもの」に該当するものとされています(所基通9-21)。
本保険の傷病休業給付金、入院給付金、長期療養給付金、高度障害給付金及び加入者の高度障害に基因して支払を受ける脱退給付金は、加入者の所定の傷害若しくは疾病又は高度障害状態になったことに基因して支払われることからすると、いずれも「身体の傷害に基因して支払を受けるもの」に該当します。
そして、所得税法施行令第30条第1号に掲げる保険金、給付金又は共済金は、保険業法に規定する保険会社等と締結した保険契約又はそれに類する共済に係る契約に基づくものとされていますが、同条の本文において「次に掲げるものその他これらに類するもの」と規定されていることからすると、認可特定保険業者と締結した保険契約に基づき身体の傷害に基因して支払を受ける給付金もこの「類するもの」に含まれると解されます。
したがって、加入者が支払を受ける傷病休業給付金、入院給付金、長期療養給付金、高度障害給付金及び加入者の高度障害に基因して支払を受ける脱退給付金は、所得税が課されないものと解されます。

(2) 脱退、減口又は満期により支払を受ける脱退給付金について
脱退、減口又は満期により加入者が支払を受ける脱退給付金は、本保険に係る契約に基づき、当該契約の脱退、減口又は満期に基因して支払を受けるものであることから、この場合の脱退給付金は、所得税法第34条《一時所得》第1項にいう利子所得、配当所得、不動産所得、事業所得、給与所得、退職所得、山林所得及び譲渡所得以外の所得のうち、営利を目的とする継続的行為から生じた所得以外の一時の所得で労務その他の役務又は資産の譲渡の対価としての性質を有しないものと認められます。
したがって、脱退、減口又は満期により支払を受ける脱退給付金は、一時所得に該当するものと解されます。
なお、脱退、減口又は満期により支払を受ける脱退給付金に係る一時所得の金額の計算は、所得税法施行令第183条《生命保険契約等に基づく年金に係る雑所得の金額の計算上控除する保険料等》第2項又は同令第184条《損害保険契約等に基づく年金に係る雑所得の金額の計算上控除する保険料等》第2項(いずれも一時金に係る一時所得の金額の計算規定)に準じて計算するのが相当と解されます。

(3) 加入者の死亡により支払を受ける脱退給付金及び弔慰給付金について
被相続人(遺贈をした者を含みます。以下同じです。)の死亡により相続人その他の者が生命保険契約の保険金(共済金を含みます。以下同じです。)又は損害保険契約の保険金(偶然な事故に基因する死亡に伴い支払われるものに限ります。以下同じです。)を取得した場合には、その保険金受取人(共済金受取人を含みます。以下同じです。)について、当該保険金のうち被相続人が負担した保険料(共済掛金を含みます。以下同じです。)の金額の当該契約に係る保険料で被相続人の死亡時までに払い込まれたものの全額に対する割合に相当する部分は、保険金受取人が相続又は遺贈によって取得したものとみなされます(相法31一)。
ここでいう生命保険契約の範囲は、相続税法施行令第1条の2《生命保険契約等の範囲》第1項各号に、損害保険契約の範囲は、同条第2項各号にそれぞれ掲げられており、これらに掲げられている契約以外に基づいて保険金受取人が取得する保険金については、保険金受取人が相続又は遺贈によって取得したものとみなされないことから、相続税の課税対象とはならないこととなります。
そして、相続税法施行令第1条の2第1項第1号は、「保険業法第2条《定義》第3項に規定する生命保険会社と締結した保険契約又は同条第6項に規定する外国保険業者若しくは同条第18項に規定する少額短期保険業者と締結したこれに類する保険契約」と規定しています。
すなわち、生命保険契約の範囲について、同号は、1「生命保険会社」と締結した保険契約と2「外国保険業者」又は「少額短期保険業者」と締結した1に類する契約とを掲げています。そして、ここにいう1「生命保険会社」とは、保険業法第3条第1項の内閣総理大臣の免許を受けて保険業を行う者(以下「保険会社」といいます。)のうち同条第4項の生命保険業免許を受けた者をいい、2「外国保険業者」とは、外国の法令に準拠して外国において保険業を行う者(保険会社を除きます。)をいい、さらに「少額短期保険業者」とは、同法第272条第1項の内閣総理大臣の登録を受けて少額短期保険業を行う者をいうこととされています。
当法人は、特定保険業のみを行うことができる平成17年改正法附則第2条第1項の規定に基づく「認可特定保険業者」であり、保険業法本則の規定に基づく生命保険業免許を受けていないことから「生命保険会社」には該当しません。また、当法人は、保険業法第272条第1項の内閣総理大臣の登録を受けていないことから「少額短期保険業者」にも該当せず、当然のことながら「外国保険業者」にも該当しません(※)。
したがって、当法人と締結した本保険に係る契約は、相続税法施行令第1条の2第1項第1号に規定する生命保険契約のいずれにも該当しないこととなります。

※ 生命保険業免許を受けて生命保険会社となるためには、その前提として、免許を受けて保険会社となる必要がありますが、保険会社は、株式会社又は相互会社でなければならないとされています(保険業法5の2)。
また、少額短期保険業者の登録を受ける場合においても、生命保険会社と同様に、株式会社又は相互会社であることが必要とされているほか(保険業法272の41一)、平成17年改正法の施行の際現に特定保険業を行っている法人で少額短期保険業者の登録の申請をすることができる法人から、認可特定保険業者となった者が除かれています(平成17年改正法附則151)。
したがって、非営利型一般社団法人であり認可特定保険業者でもある当法人は、現在の組織形態のままで保険会社又は少額短期保険業者のいずれにもなることはできません。

次に、相続税法施行令第1条の2第1項第2号は郵政民営化法等の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律の規定による廃止前の簡易生命保険法に規定する簡易生命保険契約を、同項第3号は1農業協同組合法に規定する事業を行う農業協同組合等、水産業協同組合法に規定する事業を行う漁業協同組合等、消費生活協同組合法に規定する事業を行う消費生活協同組合連合会若しくは中小企業等協同組合法に規定する共済事業を行う特定共済組合と締結した生命共済に係る契約、2独立行政法人中小企業基盤整備機構と締結した小規模企業共済法に規定する共済契約のうち一定のもの、3条例の規定により地方公共団体が実施する一定の心身障害者共済制度に係る契約、又は4法律の規定に基づく共済に関する事業を行う法人と締結した生命共済に係る契約で財務大臣の指定するものをそれぞれ掲げているところ、当法人と締結した本保険に係る契約は、これらの生命保険契約のいずれにも該当しません。
また、上記と同様に、当法人と締結した本保険に係る契約は、相続税法施行令第1条の2第2項各号に掲げる損害保険契約のいずれにも該当しません。
これらのことから、本保険に係る契約に基づき所定の受取人が加入者の死亡により支払を受ける弔慰給付金及び脱退給付金(以下「本件弔慰給付金等」といいます。)は、相続税法第3条第1項に規定するみなし相続財産には該当せず、相続税の課税対象とはならないこととなります。
そこで、本件弔慰給付金等については、所定の受取人において所得税の課税関係が生じることになるとともに、本件弔慰給付金等は、利子所得、配当所得、不動産所得、事業所得、給与所得、退職所得、山林所得及び譲渡所得以外の所得のうち、営利を目的とする継続的行為から生じた所得以外の一時の所得で労務その他の役務又は資産の譲渡の対価としての性質を有しないものと認められることから、一時所得に該当するものと解されます。

○ 国税庁文書回答税目別検索