別紙1−1 事前照会の趣旨

1 照会要旨

(1) 当法人は、農業協同組合法(以下「農協法」といいます。)第72条の16《設立》に基づき設立された農事組合法人です。
当法人では、組合員(すべて個人)に対し、毎事業年度の剰余金の範囲内で次のとおり配当を行うこととしています(定款42条)。

  • 1 組合員の事業の利用分量の割合に応じてする配当(事業分量配当)
    その事業年度における施設の利用に従って支払った手数料その他施設の利用の程度を参酌して、組合員の利用分量に応じて行うもので、法人税法第60条の2第1項第1号《事業分量配当》に掲げる事業分量配当に該当するものです。
  • 2 組合員がその事業に従事した程度に応じてする配当(従事分量配当)
    その事業年度において組合員が組合(当法人)の営む事業に従事した日数及びその労務の内容、責任の程度等に応じて行うもので、法人税法第60条の2第1項第2号《従事分量配当》及び所得税法施行令第62条第2項《企業組合等の分配金》に規定する「組合員が、協同組合等(法人)の事業に従事した程度に応じて分配する金額(応じて受ける分配金の額)」に該当するものです。
  • 3 出資の額に応じてする配当(出資配当)
    事業年度末における組合員の払込済出資額に応じて行うものです。

 (注)農協法第72条の15第2項《配当の制限》において、剰余金の配当は、定款で定めるところにより、組合員の出資農事組合法人の事業の利用分量の割合若しくは組合員がその事業に従事した程度に応じ、又は年8分以内において政令で定める割合を超えない範囲内で払込済みの出資の額に応じてしなければならないとされています。

(2) 剰余金の配当に係る消費税の取扱いについては、消費税法基本通達5-2-8《剰余金の配当等》、同12−1−3《事業者が収受する事業分量配当金》及び同14−1−3《協同組合等が支払う事業分量配当金》により次のとおり明らかにされています。

  • 1 剰余金の配当若しくは利益の配当又は剰余金の分配(出資に係るものに限る。)は、株主又は出資者たる地位に基づき、出資に対する配当又は分配として受けるものであるから、資産の譲渡等の対価に該当しないこと。
  • 2 事業者が、法人税法第60条の2第1項第1号《協同組合等の事業分量配当等の損金算入》に掲げる事業分量配当(当該事業者が協同組合等から行った課税仕入れに係るものに限る。)を受けた場合には、消費税法第32条《仕入れに係る対価の返還等を受けた場合の仕入れに係る消費税額の控除の特例》の規定が適用されることになること。
    また、事業分量配当を支払った協同組合等においては、消費税法第38条《売上げに係る対価の返還等をした場合の消費税額の控除》の規定が適用されること。

(3) 上記(2)の取扱いによれば、上記(1)1の事業分量配当及び3の出資配当については、それぞれ次のとおりと考えます。

  • イ 事業分量配当(当法人と組合員との課税取引に係るものに限ります。)については、当法人においては、消費税法第38条《売上げに係る対価の返還等をした場合の消費税額の控除》の規定が適用され、また、組合員においては、消費税法第32条《仕入れに係る対価の返還等を受けた場合の仕入れに係る消費税額の控除の特例》の規定が適用される。
  • ロ 出資配当については、資産の譲渡等の対価に該当しない。

(4) 他方、上記(1)2の従事分量配当(以下「本件従事分量配当」といいます。)については、上記(2)の組合員が出資者たる地位に基づき配当として受けるもの又は法人税法第60条の2第1項第1号に掲げる事業分量配当に該当するものではないことから、その取扱いは明らかにされておりませんが、本件従事分量配当は、当法人が組合員から役務の提供を受け、その反対給付として支払うものですから、当法人においては、消費税法第2条第1項第12号《課税仕入れの意義》に規定する課税仕入れに該当するものと取り扱って差し支えないか照会いたします。

別紙1−2 事前照会に係る取引等の事実関係

2 当法人の概要

当法人は、組合員の農業生産について協業を図ることによりその生産性を向上させ、組合員の共同の利益を増進することを目的として設立された農事組合法人です(定款1条)。
また、事業内容については、農事組合法人は、「農業の経営(その行う農業に関連する事業であって農畜産物を原料又は材料として使用する製造又は加工その他農林水産省令で定めるもの及び農業と併せ行う林業の経営を含む。)」の事業を行う法人とされているところ(農協法72の81二)、当法人では、1組合員の農業に係る共同利用施設の設置及び農作業の共同化に関する事業、2農業の経営、3農作業の受託並びにこれらに付帯する事業を事業内容としています(定款7条)。
なお、当法人の主たる事業は、2の農業の経営であり、具体的には、水稲を軸に、麦、大豆、野菜(ねぎ、キャベツ、トマト等)の作付けを行っています。

3 組合員

(1) 当法人の組合員
当法人の組合員は、60名であり、すべて下記(2)1の地区内に住所を有する農民に該当する者です(照会日現在)。

(2) 組合員の資格
当法人の組合員の資格は次のとおりです(定款9条)。
なお、この資格は、農協法第72条の10第1項に準じたものです。

  • 1 当法人の地区内に住所を有する農民
  • 2 農業協同組合及び農業協同組合連合会で、その地区に当法人の地区の全部又は一部を含むもの
  • 3 当法人に農業経営基盤強化促進法第4条第2項第3号に掲げる事業に係る出資を行った農地保有合理化法人
  • 4 当法人からその事業に係る物資の供給若しくは役務の提供を継続して受ける個人
  • 5 当法人に対してその事業に係る特許権についての専用実施権の設定又は通常実施権の許諾に係る契約、新商品開発又は新技術の開発又は提供に係る契約、実用新案権についての専用実施権の設定又は通常実施権の許諾に係る契約及び育成者権についての専用利用権の設定又は通常利用権の許諾に係る契約を締結している者

(3) 当法人と組合員との関係
当法人の組合員は、出資1口以上を持たなければならないこととされていることから(定款17条)、当法人の出資者となります。
また、当法人は、組合員の農業に係る共同利用施設の設置及び農作業の共同化に関する事業及び農作業の受託を業としており、当該施設の利用などの場合には、組合員は利用者となります。
更に、当法人が行う農業の経営などの事業に関し、組合員から労務の提供を受ける場合には、当該組合員は労務の提供者となります。
このように、組合員は当法人に対し、出資者としての立場と利用者や労務の提供者といった取引の相手先としての立場の両面があります。

4 本件従事分量配当の概要

本件従事分量配当は、上記1(1)2のとおり、農作業に従事した時間及び労務の内容等に応じて支払うもので、期中においては、当期の利益予測を基に計算した単価をもって作業時間に応じ仮払いをしています。
そして、確定決算の損益により当該単価を見直し、見直し後の単価に基づき本件従事分量配当の金額を算出し、仮払金との差額を精算します。

別紙1−3 事前照会者の求める見解となることの理由

5 消費税法に規定する課税仕入れ

消費税法に規定する課税仕入れとは、事業者が、事業として他の者から資産を譲り受け、若しくは借り受け、又は役務の提供(所得税法第28条第1項《給与所得》に規定する給与等を対価とする役務の提供を除く。)を受けること(当該他の者が事業として当該資産を譲り渡し、若しくは貸し付け、又は当該役務の提供をしたとした場合に課税資産の譲渡等に該当することとなるもので、消費税法第7条第1項各号に掲げる資産の譲渡等に該当するもの及び同法第8条第1項その他の法律又は条約の規定により消費税が免除されるもの以外のものに限る。)をいうとされています(消法21十二)。

6 従事分量配当に係る所得税の取扱い等

従事分量配当については、所得税法施行令第62条第1項第3号及び同条第2項により所得税の取扱いが示されています。

  • 1 農協法第72条の8第1項第2号《農業の経営》の事業を行う農事組合法人でその事業に従事する組合員に対し給与を支給するものの組合員が受ける分配金は、配当所得に係る収入金額とすること。
  • 2 農協法第72条の8第1項第2号《農業の経営》の事業を行う農事組合法人でその事業に従事する組合員に対し給与を支給しないものの組合員が受ける分配金は、配当所得、給与所得及び退職所得以外の各種所得に係る収入金額とすること。

当法人では、組合員に対し、給与を支給しませんので、本件従事分量配当は、上記2に該当するものですから、所得税法上、配当所得、給与所得及び退職所得以外の各種所得に係る収入金額となります。

7 当法人の見解となることの理由

本件従事分量配当は、上記1(1)及び4のとおり、組合員が当法人の事業である農業の経営につき、農作業に従事し、その従事した時間に応じて当法人が支払うものであります。
すなわち、本件従事分量配当は、当法人が、組合員から農作業の提供を受け、その反対給付として支払うものと解すのが相当と考えます。
そして、当該農作業は、役務(労務)の提供であるところ、本件従事分量配当は、上記6のとおり、所得税法施行令第62条第2項により配当所得、給与所得及び退職所得以外の各種所得に係る収入金額、すなわち給与所得の収入金額には該当しないものですから、課税仕入れから除かれる給与等を対価とする役務の提供には該当しません。
したがって、本件従事分量配当は、事業者が、事業として他の者から給与等を対価とする役務の提供に該当しない役務の提供を受けるものですから、消費税法第2条第1項第12号に規定する課税仕入れに該当するものと考えます。

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