別紙

1 事前照会の趣旨

 当社では、給与計算システムの誤りに基因して、当社の社員及び退職者の一部に厚生年金保険の標準報酬月額が過少に決定されていた事例があることが判明しました。
厚生年金保険の標準報酬月額が低く決定された社員及び退職者は、年金記録の訂正を求めて年金記録確認地方第三者委員会に申立てを行っていますが、年金記録の訂正は原則として認められていません。
その結果、厚生年金保険の標準報酬月額が低く決定された社員及び退職者は、老齢厚生年金の額が減額されることになりますが、厚生年金保険の標準報酬月額が低く決定されたことは、当社の給与計算システムの誤りに基因するものであることから、当社では、年金記録の訂正が認められなかった社員及び退職者に年金減額相当額を補償することとしました。本照会は、その補償金の課税関係についてお伺いするものです。
年金減額相当額としての補償金は、一時金として支払うこととしますが、当社に在職している社員及び退職者が受け取る補償金は一時所得に該当するものとして取り扱って差し支えないかどうかをお伺いいたします。

2 事前照会に係る事実関係

(1) 標準報酬月額の算定誤りは、当社の給与計算システムに基因するものであり、当該給与計算システムは平成11年まで稼動していたことから、算定誤りは平成11年以前に発生していますが、育児休業を取得した社員の一部には、平成12年以降に誤りがある場合があります。

(2) 年金減額相当分の補償金(以下「本件補償金」といいます。)は、厚生年金保険の平成21年度年金額の報酬比例部分の算式を用いて1年分の年金減額相当額を算出し、当該1年分の年金減額相当額に補償年数を乗じた金額とします。

(3) 本件補償金は、年金記録確認地方第三者委員会に対する申立てによって年金記録の訂正ができない部分に限って支払うこととし、老齢厚生年金の不足分のほか、年金記録確認地方第三者委員会への申立て費用等の補填及び慰謝料を含めた金額となりますが、補償要因ごとに補償すべき額を算定することができないことから、補償年数は、年金受給開始年齢から100歳までの年数とします。

3 事前照会者の求める見解となることの理由

 社員及び退職者が将来受け取るべき正しい年金の金額を現段階で算定することは困難であり、社員及び退職者が納得できる補償とするために補償年数を年金受給開始年齢から100歳までとすることはやむを得ないものと考えています。そして、本件補償金は、慰謝料も含めた額ではありますが、慰謝料相当額を個別に計算したものではありませんから、本件補償金は、そのすべてが年金不足額に相当するものであると考えます。したがって、本件補償金は、年金減額相当額を補償する性質のものであり、心身又は資産に加えられた損害等に基因して取得するものではないことから、所得税法第9条《非課税所得》第1項第17号に規定する非課税とされる損害賠償金等には該当しないと考えます。
通常、社員としての地位に基づいて在職中に使用者から受ける給付は、給与所得と解されますが、社員が受ける本件補償金は、1標準報酬月額が正しく決定されていたとすれば受け取ることとなる老齢厚生年金の年金減額相当額を補償するものであり、従属的な役務提供の対価としての性質を有するものではないこと、2当社の採用していた給与計算システムの誤りに基因して支払われるものであり、各種手当てのように雇用契約に基づき支払われる給付とは性質を異にしていることから給与所得には該当せず、臨時・偶発的な一時の所得として一時所得に該当するものと考えます。
また、退職者が受ける本件補償金は、退職に基因して支払われるものではなく、厚生年金保険法の規定に基づく一時金にも該当しませんから退職所得には該当しないものと考えます。そして、本件補償金は、営利を目的とする継続的行為から生じる所得とはいえない一時金であり、労務その他の役務又は資産の譲渡の対価としての性質を有していませんから、臨時・偶発的な一時の所得として一時所得に該当するものと考えます。

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