別紙

1 事前照会の趣旨

 当社は上場会社A社の100%子会社であり、A社傘下の企業グループ内の中心会社としての給与が支給されているところ、今般、業務上、当社の取締役、監査役及び執行役員(以下、これらを併せて「本件役員」といいます。)を、外務省が治安上の理由から退避勧告や渡航延期を勧めている国・地域(以下「限定渡航地域」といいます。)に派遣させる場合があります。そのため、本件役員の家族の不安の払拭と企業防衛の観点から、新たに表1の補償制度を創設しました。
 また、従業員についても、業務の内容から限定渡航地域に派遣せざるを得ない場合がありますので、本件役員と同様の観点から、給与規程(以下「本件給与規程」といいます。)に基づき支給する遺族補償一時金とは別に表1の限定渡航地域業務災害補償及び限定渡航地域業務災害特別補償の補償制度を創設しました。
 この補償制度に係る表1の補償金のうち、本件役員又はその遺族に支給する補償金についての相続税及び所得税の課税関係は表2のとおり、従業員又はその遺族に支給する補償金についての相続税及び所得税の課税関係は表3のとおりになると解してよろしいか照会いたします。

【表1】 創設した補償制度に係る補償(補償金)の区分等
創設した補償制度に係る補償の区分 左記補償の内容(内訳)
役員遺族補償 本件役員が業務上死亡した場合に、「役員の業務災害補償等に関する基準」(以下「本件役員業務災害基準」といいます。)に基づき、本件給与規程に準じて遺族に支給する一時金
限定渡航地域業務災害補償 本件役員及び従業員が、業務のため限定渡航地域への渡航中に死亡した場合に、「海外出張における渡航基準」(以下「本件渡航基準」といいます。)に基づき、上記の役員遺族補償及び本件給与規程に定める遺族補償一時金のほかに遺族に支給する一時金
限定渡航地域業務災害特別補償 本件役員及び従業員が、業務のため限定渡航地域への渡航中に発生した事故に対し、渡航先の危険性等を理由として渡航者が個人で付保している生命保険あるいは損害保険などの保険金の支払が受けられない場合に、本件渡航基準に基づき、上記の限定渡航地域業務災害補償のほかに保険金受取人に支給する保険金相当額
【表2】 本件役員に係る補償(補償金)の課税の取扱い
税目 役員遺族補償 限定渡航地域業務災害補償 限定渡航地域業務災害特別補償
死亡 負傷疾病
相続税 退職手当金等(みなし相続財産)として相続税の課税対象となるが、役員遺族補償、限定渡航地域業務災害補償、限定渡航地域業務災害特別補償及び他の弔慰金等の合計額のうち普通給与の3年分相当額に達するまでの金額は、弔慰金等として相続税の課税対象とならない -
所得税 非課税 非課税 非課税 非課税
【表3】 従業員に係る補償(補償金)の課税の取扱い
税目 限定渡航地域業務災害補償 限定渡航地域業務災害特別補償
死亡 負傷疾病
相続税 相続税の課税対象とならない 退職手当金等(みなし相続財産)として相続税の課税対象となるが、遺族補償一時金、限定渡航地域業務災害補償、限定渡航地域業務災害特別補償及び他の弔慰金等の合計額のうち普通給与の3年分(遺族補償一時金及び限定渡航地域業務災害補償の合計額が3年分を超えるときにはその金額)相当額に達するまでの金額は、弔慰金等として相続税の課税対象とならない -
所得税 非課税 非課税 非課税

(注)本件給与規程に基づき従業員に支給される遺族補償一時金についても、相続税の課税対象とならない。また、所得税についても非課税所得に該当する。

2 事前照会に係る取引等の事実関係

  1. (1) 本件役員業務災害基準に定める「役員遺族補償」の支給要件等は、次のとおりです。
    1. イ 支給要件
       本件役員が業務上死亡した場合に支給します。
    2. ロ 受給者の範囲及び順位
       本件給与規程に定める遺族補償一時金に準じます。
       なお、本件給与規程では、従業員が業務上死亡した場合には、遺族補償一時金を支給し、この遺族補償一時金を受けるべき者の範囲及びその順位は、労働者災害補償保険法に定める遺族補償一時金の受給者の範囲及び順位によるとしています。
  2. (2) 本件渡航基準に定める「限定渡航地域業務災害補償」の支給要件等は、次のとおりです。
    1. イ 支給要件
       限定渡航地域への業務のため渡航中に死亡事故が発生した場合、「役員遺族補償」又は「遺族補償一時金」の他に、「限定渡航地域業務災害補償」として支給します。
       なお、限定渡航地域への渡航中とは、渡航者が限定渡航地域内に滞在している間をいいます。
    2. ロ 受給者の範囲及び順位
       本件給与規程を準用します(労働者災害補償保険法の遺族補償一時金の受給者の範囲及び順位となります。)。
  3. (3) 本件渡航基準に定める「限定渡航地域業務災害特別補償」の支給要件等は、次のとおりです。
    1. イ 支給要件
      1. (イ) 業務のための限定渡航地域への渡航中に発生した事故(死亡以外に負傷、疾病も含みます。)に対し、渡航先の危険性等を理由として渡航者(本人(=本件役員又は従業員))が個人で付保している生命保険あるいは損害保険※1などの保険金の支払が受けられない場合、「役員遺族補償」、「遺族補償一時金」及び「限定渡航地域業務災害補償」とは別に、支払を受けられない保険金に相当する額(上限が設定されています。)を「限定渡航地域業務災害特別補償」として渡航者※2に支給します。
        1. ※1 この「生命保険あるいは損害保険」とは、「『海外出張における渡航基準』に関する運用要領」(以下「本件渡航基準運用要領」といいます。)により、渡航者(本人(=本件役員又は従業員))を被保険者として契約する全ての保険契約をいいます。
        2. ※2 この「渡航者」とは、本件渡航基準運用要領により、保険金の受取人をいいます。
      2. (ロ) 限定渡航地域業務災害特別補償は、本件渡航基準運用要領により、事故発生後、渡航者(本人(=本件役員又は従業員))又は遺族等からの申し出があった場合に支給します。
    2. ロ 支給金額
       上記イの「支払を受けられない保険金に相当する額」とは、その保険金に係る相続税等の税額控除後の手取り見込額となりますが、その保険金に係る相続税等の税額が算出できないときには、本件渡航基準運用要領により、保険金額となります。
  4. (4) 当社における本件役員及び従業員に対する退職手当金は、次のとおりです。
    1. イ 本件役員には、退職時に、「取締役退職慰労金支給基準」、「監査役退職慰労金支給基準」及び「執行役員退職慰労金支給基準」(以下、これらを併せて「取締役退職慰労金支給基準等」といいます。)に基づき、役員遺族補償、限定渡航地域業務災害補償及び限定渡航地域業務災害特別補償とは別に、退職慰労金(死亡の場合は弔慰金)(以下「取締役退職慰労金等」といいます。)を支給していましたが、平成22年6月30日をもって支給しないこととしました(同年7月1日以後は、これに伴い本件役員に係る報酬を増額しています。)。
       なお、役員遺族補償とは、本件役員が業務上死亡した場合に、従業員に対して退職手当金とは別途支給される遺族補償一時金に準じて支給する一時金であり、本件役員に支給するために本件役員業務災害基準を定めて創設したものです。したがって、取締役退職慰労金等の廃止をもって、役員遺族補償に実質上本件役員の退職手当金として支給される金品が含まれることにはならないものと考えます。
    2. ロ 従業員には、退職時に、本件給与規程に基づき、遺族補償一時金※、限定渡航地域業務災害補償及び限定渡航地域業務災害特別補償とは別に、退職手当金を支給します。
      ※ 従業員が業務上死亡した場合には、本件給与規程に基づき遺族補償一時金が支給されます。
  5. (5) 当社の執行役員になる場合には、1従業員としての退職手当金が支給されて雇用関係は終了すること、2当社との関係は、取締役及び監査役と同様に委任関係(会社法330)となること、3報酬は、従業員の賃金体系とはならないこと、4労働者災害補償保険法の適用対象としないことについて、執行役員になる者に了承を得て、執行役員に就任させています。
     したがって、当社の執行役員は、当社の取締役と同様の地位であることを照会の前提とします。
  6. (6) 本照会においては、本件役員が業務上死亡した場合において、「役員遺族補償及び限定渡航地域業務災害補償が支給される本件役員の遺族」と、「限定渡航地域業務災害特別補償が支給される者、すなわち、本件役員を被保険者とする保険金で支払を受けられないものに係る保険金受取人」は、同一の者であることを照会の前提とします。
     また、上記前提と同様に、従業員が業務上死亡した場合において、「遺族補償一時金及び限定渡航地域業務災害補償が支給される従業員の遺族」と、「限定渡航地域業務災害特別補償が支給される者、すなわち、従業員を被保険者とする保険金で支払を受けられないものに係る保険金受取人」は、同一の者であることを照会の前提とします。

3 事前照会者の求める見解となることの理由

(1) 本件役員に係る補償について

イ 役員遺族補償

(イ) 相続税関係

A 本来の相続財産の適否
 役員遺族補償の支給を受ける遺族の範囲及び順位は、本件給与規程に準ずるとされています。そして、本件給与規程における遺族補償一時金を受けるべき者の範囲及びその順位は、労働者災害補償保険法に定める遺族補償一時金の受給者の範囲及び順位によるとされており、同法は、民法に規定する相続人の範囲及び相続人の順位決定の原則とは異なる定め方をしています(労災法16の7)。
 したがって、役員遺族補償は、被相続人の死亡に基因して遺族が原始的に取得するものと認められるため、本来の相続財産に該当しないものと考えます。

B みなし相続財産の適否
 役員遺族補償は、従業員が業務上の災害で死亡した場合に支給される遺族補償一時金と同様の業務災害補償金を、本件役員業務災害基準に基づき支給するものですが、退職手当金等に該当しない相続税法基本通達3−23(13)の災害補償金等からは、役員に支給される場合が除かれているため、相続税法基本通達3−23(13)の適用はないものと考えます。
 そして、本件役員に対しては、1取締役退職慰労金支給基準等に基づき取締役退職慰労金等を別途支給していたこと、2取締役退職慰労金等は平成22年6月30日をもって廃止しましたが、同年7月1日以後は、これに伴い本件役員に係る報酬を増額し、一方、役員遺族補償とは、本件役員が業務上死亡した場合に、従業員に対して退職手当金とは別途支給される遺族補償一時金に準じて支給する一時金であり、本件役員に支給するために本件役員業務災害基準を定めて創設したものであって、取締役退職慰労金等の廃止をもって、役員遺族補償に実質上本件役員の退職手当金として支給される金品が含まれることにはならないものと考えられることからすると、役員遺族補償については、相続税法基本通達3−18及び3−19の取扱いによる実質退職手当金等に該当するものとは認められないため、相続税法基本通達3−20の取扱いにより、相続人等が受ける役員遺族補償のうち普通給与の一定期間(業務上の死亡のときは3年、業務上の死亡でないときは半年)分相当額を弔慰金等として退職手当金等には該当しないものとし、それを超える部分に相当する金額は退職手当金等に該当するものとして取り扱うのが相当と考えます。
 したがって、役員遺族補償は退職手当金等(みなし相続財産)として相続税の課税対象となりますが(相法31二)、役員遺族補償のほか実質退職手当金等に該当するかどうか明確でないと認められる限定渡航地域業務災害補償、限定渡航地域業務災害特別補償及び他の弔慰金等の合計額のうち普通給与の一定期間(本件役員の死亡が業務上の死亡に該当すると認められるため、普通給与の3年となります。以下同じです。)分相当額に達するまでの金額は、弔慰金等として相続税の課税対象とはならないものと考えます。
 なお、当社の執行役員については、下記ニのとおり、当社の取締役及び監査役と同様に取り扱うのが相当と考えます(以下同じです。)。

(ロ) 所得税関係
 相続税の課税対象とはならない上記(イ)Bの普通給与の3年分相当額以下の部分については、心身又は資産に加えられた損害につき支払を受ける相当の見舞金その他これらに類するものに該当すると認められるため、非課税所得として取り扱うことが相当と考えます(所法91十七、所令30三)。また、普通給与の3年分相当額を超える部分については、相続税の課税対象となるため、非課税所得となります(所法91十六)。
 したがって、役員遺族補償は所得税の課税対象とはならないものと考えます。

ロ 限定渡航地域業務災害補償

(イ) 相続税関係
 限定渡航地域業務災害補償の支給を受ける遺族の範囲及び順位は、本件役員業務災害基準に基づく役員遺族補償と同様ですから、上記イ(イ)Aと同様に、本来の相続財産に該当しないものと考えます。
 そして、本件役員の死亡に係る限定渡航地域業務災害補償は、本件役員が限定渡航地域で業務上死亡した場合、本件渡航基準に基づき、業務上の災害で死亡した場合に支給される業務災害補償金である役員遺族補償に加算して支給するものであることからすると、上記イ(イ)Bと同様に、退職手当金等(みなし相続財産)として相続税の課税対象となりますが(相法31二)、限定渡航地域業務災害補償のほか実質退職手当金等に該当するかどうか明確でないと認められる役員遺族補償、限定渡航地域業務災害特別補償及び他の弔慰金等の合計額のうち普通給与の3年分相当額に達するまでの金額は、弔慰金等として相続税の課税対象とはならないとするのが相当と考えます。

(ロ) 所得税関係
 本件役員の死亡に係る限定渡航地域業務災害補償は、役員遺族補償に加算して支給するものですが、限定渡航地域が、戦争、テロなどの災害を受ける蓋然性が高く、他の地域と比べて危険な地域であることからすると、上記イ(ロ)の役員遺族補償と同様、相続税の課税対象とはならない普通給与の3年分相当額以下の部分については、心身又は資産に加えられた損害につき支払を受ける相当の見舞金その他これらに類するものに該当すると認められるため、非課税所得として取り扱うことが相当と考えます(所法91十七、所令30三)。また、普通給与の3年分相当額を超える部分については、相続税の課税対象となるため、非課税所得となります(所法91十六)。
 したがって、本件役員の死亡に係る限定渡航地域業務災害補償は所得税の課税対象とはならないものと考えます。

ハ 限定渡航地域業務災害特別補償

(イ) 本件役員の死亡の場合

A 相続税関係
 限定渡航地域業務災害特別補償は、本件役員が、限定渡航地域への渡航中に発生した事故に対し、渡航先の危険性等を理由として渡航者が個人で付保している生命保険あるいは損害保険などの保険金の支払を受けられない場合に、役員遺族補償及び限定渡航地域業務災害補償とは別に、本件渡航基準に基づきその保険金の受取人(限定渡航地域業務災害特別補償の受給者。以下同じです。)に支給するものであり、その保険金の受取人が、被相続人の死亡及び保険金の不支給に基因して原始的に取得するものと認められます。したがって、限定渡航地域業務災害特別補償は本来の相続財産に該当しないものと考えます。
 そして、限定渡航地域業務災害特別補償は、保険金相当額の補償ではあるものの、生命保険契約又は損害保険契約に基づき保険会社から支払われる保険金そのものではないため、みなし相続財産とされる生命保険金又は損害保険金に該当しません。
 ところで、限定渡航地域業務災害特別補償は、役員遺族補償及び限定渡航地域業務災害補償とは別に支給され、保険に加入していない場合や保険会社から保険金の支払を受ける場合には支給されないもので、限定渡航地域への渡航中に発生した死亡事故等に対して一律に支給されるものではありませんが、限定渡航地域業務災害補償と同じ海外出張における業務災害が生じた場合の基準である本件渡航基準に基づいて限定渡航地域への渡航中に発生した死亡事故等に対して支給するものであり、これらの補償と同様の業務災害補償金としての性格を有するものであると認められることから、原則として上記ロの限定渡航地域業務災害補償と同様に判断するのが相当と考えます。
 したがって、本件役員の場合は、退職手当金等(みなし相続財産)として相続税の課税対象となりますが(相法31二)、限定渡航地域業務災害特別補償のほか実質退職手当金等に該当するかどうか明確でないと認められる役員遺族補償、限定渡航地域業務災害補償及び他の弔慰金等の合計額のうち普通給与の3年分相当額に達するまでの金額は、弔慰金等として相続税の課税対象とはならないとするのが相当と考えます。

B 所得税関係
 限定渡航地域業務災害特別補償は、上記Aのとおり、役員遺族補償及び限定渡航地域業務災害補償と同様の業務災害補償金としての性格を有するものであると認められるため、原則として上記ロの限定渡航地域業務災害補償の課税関係と同様に判断するのが相当と考えます。
 そうすると、本件役員の場合は、相続税の課税対象とはならない普通給与の3年分相当額以下の部分については、心身又は資産に加えられた損害につき支払を受ける相当の見舞金その他これらに類するものに該当すると認められるため、非課税所得として取り扱うことが相当です(所法91十七、所令30三)。また、普通給与の3年分相当額を超える部分については、相続税の課税対象となるため、非課税所得となります(所法91十六)。
 したがって、本件役員の死亡に係る限定渡航地域業務災害特別補償は所得税の課税対象とはならないものと考えます。

(ロ) 本件役員の負傷又は疾病の場合
 限定渡航地域業務災害特別補償は、本件役員が負傷したとき又は疾病にかかったときにも支給されますが、保険金受取人が保険会社から保険金の支払を受けられない場合に当社がその保険金相当額を補償するものである点を踏まえると、所得税法施行令第30条に規定する保険金及び心身に加えられた損害につき支払われる損害賠償金又は相当の見舞金には該当しないとも考えられます。
 しかしながら、限定渡航地域業務災害特別補償の支払は、本件役員の負傷又は疾病を前提とするものであり、この場合に支払われる保険金は金額の多寡にかかわらず非課税となりますので(所法91十七、所令30一)、この保険金相当額を補償するものであることを踏まえれば、心身又は資産に加えられた損害につき支払を受ける相当の見舞金その他これらに類するものに該当するものと考えられます。
 したがって、本件役員の負傷又は疾病の場合の限定渡航地域業務災害特別補償については、非課税所得となり(所法91十七、所令30三)、所得税の課税対象とはならないものと考えます。

ニ 本件における執行役員の取扱い
 相続税法基本通達3−23(13)において役員を除いていることについてみると、会社法上、株式会社と役員との関係は委任に従うとされており(会社法330)、役員自身が会社の機関そのものであって、役員自身が使用者責任を追及する立場にないため、会社(雇用主)と雇用関係にある従業員とは異なる取扱いをすることとしているものと考えられますが、相続税法及び相続税法基本通達には役員の定義がありません。
 この場合、会社法や法人税法の定義に準じて判断することが相当と解されます。そうすると、会社法及び法人税法では、取締役及び監査役は役員として規定されている(会社法3291、法人税法2十五)ことから、当社の取締役及び監査役は相続税法における役員に該当することは明らかです。
 これに対し、執行役員は、法令上その設置の根拠がなく、企業により任意に制度設計ができ、執行役員の位置付けは、役員に準じたものから使用人の最上級とされるものなどがあり、会社法及び法人税法上は、役員として規定されていません。
 しかしながら、本件における執行役員は、上記2(5)から、従業員とは異なる地位にあると解され、また、当社においては取締役及び監査役と同様に委任関係にある等取締役及び監査役と同様に取り扱われていることからすれば、当社の執行役員については、相続税法における役員の取扱いに準じて課税関係を判断するのが相当と考えます。

(2) 従業員に係る補償について

イ 限定渡航地域業務災害補償

(イ) 相続税関係
 従業員の場合、限定渡航地域業務災害補償の支給を受ける遺族の範囲及び順位は、本件給与規程に準ずるとされていることから、上記(1)イ(イ)Aと同様に、本来の相続財産に該当しないものと考えます。
 そして、従業員の死亡に係る限定渡航地域業務災害補償は、従業員が限定渡航地域で業務上死亡した場合、本件渡航基準に基づき、退職手当金等(みなし相続財産)に該当しない業務災害補償金である本件給与規程に基づく遺族補償一時金(相基通3−23(13))に加算して支給するものであることから、相続税法基本通達3−23(13)により、遺族補償一時金と同様に退職手当金等(みなし相続財産)に該当しないとして相続税の課税対象とはならないとするのが相当と考えます。

(ロ) 所得税関係
 従業員の死亡に係る限定渡航地域業務災害補償は、遺族補償一時金に加算して支給するものであることから、上記(1)ロ(ロ)と同様の理由により、非課税所得となるものと考えます(所法91十七、所令30三、所法91十六)。
 したがって、従業員の死亡に係る限定渡航地域業務災害補償は所得税の課税対象とはならないものと考えます。

ロ 限定渡航地域業務災害特別補償

(イ) 従業員の死亡の場合

A 相続税関係
 限定渡航地域業務災害特別補償は、上記(1)ハ(イ)Aと同様に、遺族補償一時金及び限定渡航地域業務災害補償と同様の業務災害補償金としての性格を有するものであると認められることから、原則として上記イの限定渡航地域業務災害補償と同様に判断するのが相当と考えられます。
 しかしながら、従業員の場合、次のことからすれば、相続税法基本通達3−23(13)の「(1)から(12)までに掲げる弔慰金等に準ずるもの」とはその性質(法定の災害補償金等に加算して支給されているもの)が異なるため、相続税法基本通達3−20の対象として、退職手当金等(みなし相続財産)として相続税の課税対象とするのが相当と考えます(相法31二)。この場合、遺族補償一時金、限定渡航地域業務災害補償、限定渡航地域業務災害特別補償のほか実質退職手当金等に該当するかどうか明確でないと認められる他の弔慰金等の合計額のうち普通給与の3年分(遺族補償一時金及び限定渡航地域業務災害補償の合計額が3年分を超えるときはその金額となります。)相当額に達するまでの金額は、弔慰金等として相続税の課税対象とはならないとするのが相当と考えます。

(A) 限定渡航地域業務災害特別補償は、保険契約者と保険会社との保険契約に基づき支払われる保険金について、その保険金が支払われない場合に限って保険金受取人等からの申出に基づき会社が代わって支給するものであり、相続税法基本通達3−23(13)が準じている「(同通達の)(1)(労働者災害補償保険法に掲げる遺族補償給付等)から(12)(消防組織法等の公務災害補償)」のように、各法律等により金額を含め支給されることが定まっているものとは異なること。

(B) 限定渡航地域において被保険者が戦争等で死亡しても、原則として保険金が支払われ、その場合の保険金については保険料負担者と保険金受取人との関係により相続税、贈与税又は所得税の課税対象となりますが、限定渡航地域業務災害特別補償は、その課税対象となる保険金の代わりに会社が支給するものであって、相続税法基本通達3−23(13)が準じている「(同通達の)(1)から(12)」の各法律等により課税しないこととされているものとは異なること。

(C) 限定渡航地域業務災害特別補償は、保険金受取人に支給されるものであり、その場合、遺族に限定されず、例えば、第三者が受け取る場合もあるのに対し、相続税法基本通達3−23は「遺族が受ける弔慰金等」の取扱いであり、遺族が受け取る場合を前提としたものとは異なること。

B 所得税関係
 限定渡航地域業務災害特別補償は、上記Aのとおり、遺族補償一時金及び限定渡航地域業務災害補償と同様の業務災害補償金としての性格を有するものであると認められ、また、その性格は、役員遺族補償及び限定渡航地域業務災害補償と同様の業務災害補償金としての性格を有する本件役員の場合と同様であることから、従業員の場合も、上記(1)ハ(イ)Bと同様に取り扱うのが相当です。
 そうすると、相続税の課税対象とはならない普通給与の3年分(遺族補償一時金及び限定渡航地域業務災害補償の合計額が3年分を超えるときはその金額となります。)相当額以下の部分については、心身又は資産に加えられた損害につき支払を受ける相当の見舞金その他これらに類するものに該当すると認められるため、非課税所得として取り扱うことが相当と考えます(所法91十七、所令30三)。また、普通給与の3年分(遺族補償一時金及び限定渡航地域業務災害補償の合計額が3年分を超えるときはその金額となります。)相当額を超える部分については、相続税の課税対象となるため、非課税所得となります(所法91十六)。
 したがって、従業員の死亡に係る限定渡航地域業務災害特別補償は所得税の課税対象とはならないものと考えます。

(ロ) 従業員の負傷又は疾病の場合
 従業員の負傷又は疾病の場合の限定渡航地域業務災害特別補償については、本件役員の場合と同様、上記(1)ハ(ロ)のとおり取り扱うのが相当と考えますので、非課税所得となり(所法91十七、所令30三)、所得税の課税対象とはならないものと考えます。

○ 国税庁文書回答税目別検索