別紙

1 事前照会の趣旨

 私は、平成10年より作家として事業を営んでおります。
今般、私の著書である「○○○○」(○○社刊)が第○回吉川英治文学新人賞(以下「本件文学賞」といいます。)を受賞し、副賞として賞金(以下「本件賞金」といいます。)を受領しましたが、本件賞金については、所得税法上、一時所得に該当すると解して差し支えないかお伺いします。
また、消費税法上の課税の対象外(不課税取引)と解して差し支えないか併せてお伺いします。

2 事前照会に係る取引等の事実関係

 本件文学賞は、国民文化建設のため優れた人材を発掘賞揚することを目的に、財団法人吉川英治国民文化振興会(以下「振興会」といいます。)が主催し、○○社の後援により1980年に創設された文学賞であり、最も将来性のある新人の作品に対して贈られるものです。なお、1980年以降、年1回、受賞作品の発表がされています。
また、本件文学賞の授与は、応募作品等の中から選考された作品に対して行われるものではなく、既に出版されている作品の中から選考委員の合議により選考された作品に対して一方的に行われるものです。
なお、本件賞金については、所得税法第204条第1項第1号に規定する原稿の報酬としての源泉徴収はされておりません。

3 事前照会者の求める見解となることの理由

(1) 一時所得と判断する理由(所得税)

イ 所得税法上、対価を得て継続的に行う事業から生ずる所得は事業所得とされており(所法271、所令63十二)、また、所得税基本通達27−5においては、事業所得の総収入金額に算入すべき事業の遂行に付随して生じた収入(以下「事業付随収入」といいます。)が例示されています。

ロ この事業付随収入に関して、文献によれば「事業は営利を目的として遂行される各種の経済活動の総体であり、本来の事業活動による収入のほかに、事業の遂行に付随して生ずる収入も、税法上特別に解される場合を除いて、事業所得の総収入金額に含まれるものと解するのが相当である」、「文筆家やプロ野球選手がその業績、活動に対して与えられる賞金等も同様に考えることができる」といった説明がされているところです。
ただし、文筆家が原稿料とは別に受領する賞金が直ちに事業付随収入になるものではなく、本来の事業活動による収入以外の収入が事業付随収入に該当するか否かの判断は、それぞれの生じた収入ごとに、その発生原因や事情を総合的に勘案して、一般的にその事業を遂行していることにより得られるものと解されるか否かで判断することが相当と考えます。

ハ 本件賞金は、振興会という著作に係る対価を支払うべき出版社以外からのものであるとともに、既に出版されている多数の作品の中から選考委員によって選ばれた作品に対して与えられるものであって、作品を応募するといった私自らの何かしらの働きかけにより与えられるものではありません。
また、本件賞金について原稿の報酬として源泉徴収がされていないのは、所得税基本通達204−6に原稿の報酬に類似するが該当しないものとして掲げられている直木賞、芥川賞、野間賞、菊池賞等としての賞金品と同様に、本件賞金が著作に対する直接の対価として支払われたものではないことによるものと理解しています。

ニ このようなことを踏まえると、本件賞金は、作家としての本来の事業活動による収入ではないのはもちろんのこと、文筆活動を行う中で一般的に受領し得る性質のものとも言い難く、むしろ予期せぬ事情により臨時・偶発的に生じた収入と考えることが相当です。
したがって、本件賞金については、対価性のない一時の所得である一時所得に該当すると考えます(所法341)。

(2) 課税の対象外(不課税取引)と判断する理由(消費税)

イ 消費税は、国内において事業者が事業として対価を得て行う資産の譲渡及び貸付け並びに役務の提供を課税の対象としており(消法21八、41)、ここでいう「対価を得て」とは、資産の譲渡及び貸付け並びに役務の提供に対して反対給付を受けることをいいます(消基通5-1-2)。
このようなことから、国内において事業者が事業として行う資産の譲渡及び貸付け並びに役務の提供に対して反対給付を受けるものが消費税の課税の対象となるものと理解しています。

ロ 他の者から給付を受ける賞金又は賞品(以下「賞金等」という。)については、様々なものがありますが、消費税の課税の対象となるかどうかについては、当該賞金等が役務の提供の反対給付であるか否かにより判定されるものと考えられ、これについて、消費税法基本通達5-5-8は、「当該賞金等の給付と当該賞金等の対象となる役務の提供との関連性の程度により個々に判定する」ことを明らかにしているものと考えます。

ハ これを本件についてみると、本件文学賞は、国内において既に発表(出版)されている作品を対象として主催者が一方的に選考し、表彰するものですから、本件賞金は、受賞者が主催者に対し何らかの役務の提供を行った若しくは行う結果として給付されるものではないと考えられます。
実際に、私は受賞に当たって、主催者に対し何らかの役務の提供を行っていませんし、さらに、本件賞金の受領に伴い主催者に対し何らかの役務の提供を行うこともありません。
したがって、本件賞金の対象となる役務の提供はありませんので、本件賞金は、資産の譲渡等の対価に該当しないものと考えます。

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