別紙

1 事前照会の趣旨

 当社では、金融庁の認可を受けて、付随業務として信託代理店業務(遺言信託及び遺産整理手続に関する取次ぎ)を行っていますが、今般、A信託銀行が新たに販売する予定の「生命保険信託」(以下「本件信託」といいます。)を信託代理店業務の対象となる取扱商品とすることについて金融庁の認可を新たに受けました。
本件信託は、被保険者である保険契約者(保険料の払込みをする者)が委託者となり、A信託銀行を受託者、実際に財産を残したい者(実質的な保険金受取人)を受益者、死亡保険金請求権を信託財産とする信託です。
本件信託に係る契約により、その対象とされた生命保険契約(以下「本件保険契約」といいます。)の死亡保険金の受取人は、形式的にはA信託銀行となりますが、本件信託が受益者等課税信託(所得税法第13条第1項に規定する受益者(みなし受益者を含みます。)がその信託財産に属する資産及び負債を有するものとみなされる信託をいいます。以下同じです。)に該当し、本件信託の受益者が本件保険契約に係る保険料等の払込みをする者の配偶者その他の親族とされている限り、本件保険契約は生命保険料控除の対象になると解してよろしいでしょうか。

2 事前照会に係る取引等の事実関係

(1) 生命保険信託(本件信託)の概要
生命保険信託(本件信託)は、財産管理が困難な事情にある親族等の受取保険金を保全しながら、必要な財産の交付を行うことを目的として利用される信託であり、保険契約者が委託者となり、A信託銀行を受託者、実際に財産を残したい者(実質的な保険金受取人)を受益者、死亡保険金請求権を信託財産とする信託契約(以下「本件信託契約」といいます。)を締結する方法により設定されるものです。
本件信託の具体的な仕組みは次のとおりです。

イ 保険契約者と当社との間で生命保険契約を締結します。
この段階では通常の生命保険契約と変わりはなく、実際に財産を残したい者(本件信託契約において受益者として指定することを予定している者)を保険金受取人とします。
なお、A信託銀行における信託契約の引受基準上、信託設定が可能な生命保険契約は、委託者である保険契約者が被保険者である場合に限定されています。

ロ 保険契約者は、形式上、保険金受取人を自己に変更する旨の意思表示を当社に対して行った上で、A信託銀行との間で本件信託契約を締結します。
なお、当該意思表示は、信託における信託財産は委託者(保険契約者)が処分できる財産であるという信託財産としての適格性を満たすために行うものです。

ハ 本件信託契約の締結後、委託者(保険契約者)から当社に対し直ちに保険金受取人をA信託銀行に変更する旨の意思表示を行います。

(注) 上記ロの自己を保険金受取人とする意思表示とハのA信託銀行を保険金受取人とする意思表示は、両者が一体となった確認用の書面を使用することとしており、その手続上、連続して一体となって行われます。

ニ 被保険者の死亡による保険金支払事由が発生した場合、当社から死亡保険金請求権を有するA信託銀行に対し死亡保険金が支払われ、以後、当該保険金が信託財産となります。

ホ A信託銀行は、本件信託契約に基づき、受領した保険金の全額を「合同運用指定金銭信託」で管理・運用し、本件信託契約の定め及び受益者(又は指図権者)の指図に基づき、受益者に金銭を交付します。
なお、信託期間が満了したとき、信託財産がなくなったとき又は受益者が死亡したときに本件信託は終了し、A信託銀行は、残余の信託財産を本件信託契約で定められた帰属権利者に引き渡します。

(2) 本件信託契約の内容

イ 委託者は、本件保険契約に基づく死亡保険金請求権を信託します。

ロ 委託者は、本件信託契約の受益者を指定しますが(第3受益者まで指定可能)、各受益者は、委託者の死亡の時までは受益者としての権利を有しないものとされます。
なお、委託者は、受託者に申し出て第1受益者以下の各受益者を変更又は指定することができ、第1受益者(第2受益者)の死亡等により当該第1受益者(第2受益者)の受益権が消滅した場合は、第2受益者(第3受益者)としてあらかじめ指定された者が受益者となります。

ハ 本件保険契約の保険料は、保険契約者である委託者が直接保険会社に払い込みます。

ニ 委託者は、受託者の同意を得て、本件信託契約を変更することができます。また、本件信託契約は、委託者以外の者による解約はできないものとします。

ホ 本件信託契約が次の場合に該当して終了したときの残余の信託財産は、委託者に帰属するものとします。

(イ) 本件保険契約及び追加信託財産の基礎となる生命保険契約の全部又は一部の無効、取消し、解除若しくは解約及び失効後の復活可能期間の経過等の事由により、死亡保険金額が合同運用指定金銭信託の受託基準額を下回り、かつ、信託目的の達成に十分な金額ではないことが確実であると受託者が判断したとき。

(ロ) 委託者から本件信託契約の解約の申出があり、受託者がこれに応じたとき。

(ハ) 本件保険契約上定められた「保険会社が死亡保険金を支払わない場合」(免責事由)に該当するとき。

(ニ) 委託者が保険会社から高度障害保険金又は満期保険金の給付を受けたとき。

(ホ) 天変地異その他受託者の責に帰すことができない事由による信託財産の滅失、その他これに準ずる事由が生じたことにより、信託の目的を達成することができなくなったとき。

3 事前照会者の求める見解となることの理由

 所得税法第76条第3項において、生命保険料控除の対象となる生命保険契約等とは、一定の保険契約等のうち、当該保険契約等に基づく保険金、年金、共済金又は一時金(これらに類する給付を含みます。以下「保険金等」といいます。)の受取人のすべてを保険料等の払込みをする者又はその配偶者その他の親族とするものとされています。
本件保険契約により支払われる保険金等は、高度障害保険金、満期保険金及び死亡保険金の3つですが、本件信託は死亡保険金請求権を信託財産とし、高度障害保険金及び満期保険金は本件信託の対象とされていないことから、高度障害保険金及び満期保険金については、委託者(保険契約者=保険料等の払込みをする者)をその受取人として支払われることになります。
一方、死亡保険金については、委託者である被保険者の死亡による保険金支払事由が発生した場合に、形式的にはA信託銀行がその有する死亡保険金請求権に基づき保険金等の支払を受けることになりますが、本件信託は受益者等課税信託に該当しますので、委託者である被保険者が死亡した場合の死亡保険金請求権又はこれに基づく死亡保険金は、税務上は本件信託の受益者が有するものとして取り扱われることになると考えます。
したがって、この場合の当該死亡保険金請求権に基づく保険金等の受取人は、税務上は本件信託契約において受益者として指定された者となりますので、当該受益者として指定された者が委託者(保険契約者=保険料等の払込みをする者)の配偶者その他の親族とされている限り(注)、本件保険契約は生命保険料控除の対象となると考えます。

(注) 所得税基本通達76−1では、生命保険契約等に係る保険料等が生命保険料控除の対象となるものかどうかは、当該保険料等を支払った時の現況により判定することとされていますので、本件保険契約に係る保険料を支払う時において、実質的な死亡保険金の受取人とされている第1受益者(第1受益者が死亡しているときは第2受益者、さらに第2受益者が死亡しているときは第3受益者)が委託者の配偶者その他の親族であることを要件とすることが必要になると考えます。

 なお、本件信託の信託契約書では、委託者が指定した各受益者について「委託者との続柄」が記載事項とされていますが、年末調整及び確定申告において本件保険契約に係る生命保険料控除を適切に行うために、当社において、受益者の変更があった場合も含めて保険料の払込みがあった時の本件信託契約の内容(死亡保険金の受取人が委託者の配偶者その他の親族であること)を正確に把握し、控除証明書には実際の受取人となる受益者の氏名を記載するなど、その発行事務を適切に履行いたします。この点については、当社とA信託銀行との間の覚書に基づき、A信託銀行から当社に対し必要な情報が随時提供されることとなっております。

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