別紙
JA共済では、今般、現行の医療保障の仕組みを改訂することとしました(以下、この改訂を「本件仕組改訂」といいます。)。本件仕組改訂は、医療保障を目的とする既存の医療共済及び定期医療共済(以下「既存の医療共済等」といいます。)並びに全入院特約を改訂後の医療共済に統合するとともに、全入院特約等(注1)の医療保障を目的とする特約部分(以下「本件特約」といいます。)を改訂後の医療共済へ乗り換えることを認める制度(以下「本件乗換制度」といいます。)を新設すること等を主な改訂事項とするものです。
本件乗換制度は、本件仕組改訂前に締結されていた既存の医療共済等以外の一定の共済契約(注2)に付されている本件特約について、その主契約部分を消滅させることなく、本件特約についてのみ消滅させ、本件特約に係る積立金部分を改訂後の医療共済に係る共済金額に充当することにより、本件特約から改訂後の医療共済の主契約へ乗換を図るという制度です。
なお、本件乗換制度は、当該積立金が当該共済金額に充当できない程度に少額である場合においても利用することができますが、この場合、当該積立金はその全額が契約者に返戻された上で乗換することとなります。
そこで、下記2の事実関係において、本件乗換制度を利用した場合の本件特約に係る積立金については、本件特約の解約返戻金として共済契約者に対して一時所得として所得税の課税関係又は贈与税の課税関係が生じることになると考えてよろしいか伺います。
本件乗換制度は、本件特約を改訂後の医療共済の主契約部分に保障の切れ目なく変更できる制度であり、次の特徴を有しています。
※ 本件乗換制度を利用する場合の契約者のメリットは、次のとおりです。
本件特約は、乗換前主契約の保障内容に加えて医療保障等を必要とする場合に乗換前主契約に付して契約されるものであるため、本件特約のみで契約することはできません。
また、本件特約は、乗換前主契約の共済期間及び共済金額により、契約する共済期間及び共済金額に制約を受ける上、乗換前主契約が無効、解約、解除、失効又は消滅することにより、本件特約も無効、解約、解除、失効又は消滅となります。
さらに、乗換前主契約は普通約款を契約条項として締結され、本件特約はその特約約款を契約条項として締結されますが、特約約款は、普通約款の「告知義務」、「告知義務違反による解除」及び「重大事由による解除」等の重要事項について準用することとし、その他の特約約款に定められていない事項についても同様に準用することとしており、これらのことから、本件特約は、乗換前主契約から分離した場合には、単独の契約として存続することはできない性質のものといえます。
既存の生命保険契約(以下「転換前契約」といいます。)の責任準備金等を新たな生命保険契約(以下「転換後契約」といいます。)の責任準備金等に引き継ぐ方法による契約転換について、次に掲げる要件を満たす場合には、実質的に契約の継続性を失わない契約内容の変更と考えられることから、転換に伴う所得税及び贈与税の課税関係は生じないものとして取り扱うこととされています(昭和53年2月10日付直資2−36、直所3−5「契約転換制度の所得税法及び相続税法上の取扱いについて」)。
本件乗換制度による乗換は契約転換ではありませんが、上記(1)イからホに掲げる要件を満たすものである場合には、実質的に契約の継続性を失わない契約内容の変更と考えられます。
しかし、本件乗換制度は、次の点で上記(1)の契約転換制度とは異なるものとなっています。
(注) 本件特約に係る積立金が少額な場合は、その積立金の全額が契約者に返戻された上で乗換後契約に乗り換えることになります。
本件乗換制度は、本件特約に係る積立金を乗換後契約の共済金額の一部に充当するものですが、上記2(2)のとおり、本件特約は乗換前主契約から分離して単独の契約として存続することができないものであり、また、上記(2)のとおり、上記(1)の契約転換制度による契約転換のように実質的に契約の継続性を失わない契約内容の変更と評価することもできません。
そして、本件乗換制度による本件特約の医療共済への乗換については、乗換によって本件特約が乗換前主契約から分離した時点でいったん解約処理され、その継続性は失われているとみるのが相当であり、その積立金は解約返戻金として所得税又は贈与税の課税関係が生じるものと考えます。
したがって、本件乗換制度を利用した場合の本件特約に係る積立金については、解約返戻金として乗換前契約の契約者が共済掛金を負担している場合には所得税の対象となり、その所得区分は、利子所得、配当所得、不動産所得、事業所得、給与所得、退職所得、山林所得及び譲渡所得以外の所得のうち、営利を目的とする継続的行為から生じた所得以外の一時の所得で労務その他の役務又は資産の譲渡の対価としての性質を有しないものと認められることから、一時所得に該当すると考えます(所法34)。
また、乗換前契約の契約者が共済掛金を負担していない場合は、贈与税の対象になると考えます(相法5)。