別紙
A信託銀行が受託していた株式投資信託(以下「本件株式投資信託」といいます。)には、米国法人B社の社債で運用していたものがありましたが、信託期間中の平成13年11月にB社の経営破たんにより同社債の価値が下落したため、本件株式投資信託に損失が生じました。なお、本件株式投資信託は、平成14年に償還されています。
このB社の経営破たんにより生じた損失について、A信託銀行は、本件株式投資信託の信託終了後に、米国の集団訴訟制度であるクラスアクションに参加した結果、B社から損害賠償金(以下「本件損害賠償金」といいます。)を平成20年12月に受領しました。
A信託銀行が、受領した本件損害賠償金を本件株式投資信託の信託終了時の受益者(個人)に対して平成22年4月以降に分配した場合、その受益者が受領する分配金(以下「本件分配金」といいます。)は、そのすべてが株式等に係る譲渡所得等に係る収入金額となると解してよろしいかお伺いします。
また、この場合の本件分配金の株式等に係る譲渡所得等の金額の計算においては、次のとおりになると解してよろしいかお伺いします。
なお、本件株式投資信託は、所得税法第2条《定義》第1項第13号に規定する証券投資信託に該当し、本件株式投資信託の受益権の募集は、租税特別措置法(以下「措置法」といいます。)第8条の4《上場株式等に係る配当所得の課税の特例》第1項第2号に規定する公募により行われたものに該当します。
(1) 信託財産に属する財産の管理、処分、滅失、損傷その他の事由により受託者が得た財産は、信託財産に属するとされています(信託法16)。そして、この受託者が得た財産については、信託財産から生じて受託者が得た財産を意味し、信託終了後に訴訟参加し、その結果受領した損害賠償金であっても、その損害賠償請求権が信託財産に生じた損害に基づくものである場合には、信託財産に属すると解されます。
また、信託は、その信託が終了した場合においても、清算が結了するまではなお存続するものとみなされます(信託法176)。そして、信託が終了した時以後の受託者(以下「清算受託者」といいます。)は、その職務を終了したときは、信託事務に関する最終計算を行い、受益者等がその最終計算を承認したときは、原則として、清算受託者のその受益者等に対する責任はこれにより免除されたものとみなされ(信託法184)、この清算受託者の責任が免除されるのは、承認の対象となった計算に表れた部分(計算書類から知り得べき事項)に限られると解されます。この結果、清算受託者の受益者等に対する責任が免除されたものとみなされたときに、信託の清算が結了し、信託は存続しないこととなります。
したがって、株式投資信託等の約款に従い最終の信託計算がなされた後に、一定の信託財産が発生したときには、なお信託は存続していたことになり、その発生した信託財産は、信託の清算のプロセスに従って交付されることになります。そして、当該信託の受益者等に対し、発生した信託財産の交付が行われ、当該受益者等が当該交付の最終計算を承認したときに、当該信託の清算が結了することになると解されます。
(2) 本件損害賠償金は、上記(1)のことからすれば、信託財産(B社社債)から生じた信託財産であり、本件損害賠償金について清算が結了するまでは、本件株式投資信託はなお存続していることになります。そして、本件株式投資信託の信託終了時の受益者に対し、当該信託の約款に従って本件分配金の交付が行われ、当該受益者が当該交付の最終計算を承認したときに、本件株式投資信託の清算が結了することになると解されます。
ところで、本件株式投資信託は、公社債投資信託以外の証券投資信託で、その設定に係る受益権の募集が措置法第8条の4第1項第2号に規定する公募により行われたものであることから、措置法第37条の10《株式等に係る譲渡所得等の課税の特例》第4項第1号に規定する株式等証券投資信託(以下「株式等証券投資信託」といいます。)に該当し、株式等証券投資信託の終了又は一部の解約により交付を受ける金銭の額及び金銭以外の資産の価額の合計額は、そのすべてを株式等に係る譲渡所得等に係る収入金額とみなして、株式等に係る譲渡所得等の課税の特例(措法37の10)が適用されます(措法37の10
)。
以上のことからすると、本件分配金は、本件株式投資信託の終了により交付を受ける金銭であると解されますので、そのすべてが株式等に係る譲渡所得等に係る収入金額となります。
また、この場合における株式等に係る譲渡所得等の金額の計算については、次のとおり取り扱われることとなります。