別紙

1 事前照会の趣旨
当社は、下記2の「事前照会に係る取引等の事実関係」に記載のとおり、平成16年9月1日に第2回新株予約権(以下「本件新株予約権」という。)を発行しました。
本件新株予約権は、役員退職慰労金制度廃止に伴う役員退職慰労金の過去積立未精算分に相当するものであります。
また、本件新株予約権の付与対象者は、付与時に就任している役員であり、その権利行使期間は、役員を退任した日の翌日から10日間に限定しております。
このように、権利行使期間を短期間に限定したのは、本来、役員退職慰労金は役員が退任した場合、過去の労務の対価であるので、速やかに支給すべき性質のものと考えたためであります。
よって、本件新株予約権は現実に役員を退任しなければ権利行使ができないものであり、しかも上述のとおり退任後極めて短期間に一括して権利行使をしなければならないことになっております。
以上により本件新株予約権の権利行使益は、実質的に役員退職慰労金の対価としての性質を有しており、かつ、権利行使期間を役員退任後10日間に限っていることから、所得税法第30条第1項に規定する「退職により一時に受ける給与」と考えますので、権利行使時の課税関係を退職所得扱いとして差し支えないでしょうか。
 
2 事前照会に係る取引等の事実関係
当社及び当社の100%子会社である伊藤園産業株式会社及び株式会社沖縄伊藤園(以下「子会社」という。)は、平成14年8月より役員退職慰労金の新規積立を停止しておりましたが、平成16年9月をもちまして役員退職慰労金制度を廃止しました。
これに伴い、役員退職慰労金の過去積立未精算分につきましては、金銭での支給は行わず、当社及び当社子会社の役員(以下「対象者」という。)に対して、当社の普通株式を付与する「本件新株予約権を無償で付与する議案」を平成16年7月28日開催の当社定時株主総会に付議し、商法第280条の21第1項(特に有利な条件による新株予約権の発行)に定める特別決議を得ております。
更に平成16年8月27日開催の当社取締役会において、本件新株予約権の発行に関する取締役会決議を得て、平成16年9月1日に本件新株予約権を発行いたしました。
本件新株予約権は、権利行使時の権利行使価額を1株当たり1円とし、その権利行使期間は、発行日から30年以内において、役員を退任したときに、退任した日の翌日から10日を経過する日までの間に限り、一括して権利行使しなければならないことになっております。
本件新株予約権には、取締役会の承認を要する旨(商法第280条の20第2項第8号)の譲渡制限を定めるとともに、更に当社と対象者との間で締結した本件新株予約権割当契約書第8条において、本件新株予約権の譲渡を禁止する旨の条項を定めております。
 
3 2の事実関係に対して事前照会者の求める見解となることの理由
上記2の「事前照会に係る取引等の事実関係」に記載のとおり、平成16年9月1日に発行した本件新株予約権は、無償にて発行され、商法第280条の21第1項(特に有利な条件による新株予約権の発行)に定める株主総会の特別決議を経て発行されたため、所得税法施行令第84条第3号に規定する新株予約権に該当します。
所得税基本通達23〜35共−6(2)イにより、株式等を取得する権利を与えられた場合の所得区分は、上記所得税法施行令第84条第3号に掲げる権利を与えられた者がこれを行使した場合は、発行法人と権利を与えられた者との間の雇用契約又はこれに類する関係に基因して当該権利が与えられたと認められるときは、所得税基本通達23〜35共−6(1)の取扱いに準ずるとされており、その(1)においては、給与所得とする。ただし、退職後に当該権利の行使が行われた場合において、例えば、権利付与後短期間のうちに退職を予定している者に付与され、かつ、退職後長期間にわたって生じた株式の値上がり益に相当するものが主として供与されているなど、主として職務の遂行に関連を有しない利益が供与されていると認められるときは、雑所得とするとされています。
更に、「平成16年版所得税基本通達逐条解説(発行所:財団法人大蔵財務協会)」通達23〜35共−6の解説の(1)(注)において、「退職した場合に限り権利行使を認めることとしているなど、退職に基因して権利行使が可能となっていると認められる場合には、給与の一種ではあるが、退職により一時に受けるもの(実現するもの)ということとなるため、これを退職所得として課税することになる。」と説明されています。
退職所得とは、退職手当、一時恩給その他の退職により一時に受ける給与及びこれらの性質を有する給与(以下「退職手当等」という。)に係る所得をいうものとされ(所法30丸1)、退職手当等とは、本来退職しなかったとしたならば支払われなかったもので、退職したことに基因して一時に支払われることとなった給与をいうものとして取り扱われています(所基通30−1)。
本件新株予約権は、現実に役員を退任しなければ権利行使をすることができず、また、退任後極めて短期間に一括して権利行使をしなければなりません。
したがって、本件新株予約権について課税関係が生じるのは、退任後の権利行使時(本件新株予約権を割り当てられた時に就任していた会社の役員を退任した日の翌日から10日間)であることから、本件新株予約権の権利行使益は、所得税法第30条第1項に規定する「退職により一時に受ける給与」と認められ、退職所得として課税されるものと判断されます。
 

 

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