1 事前照会の趣旨

当社は、老人福祉法第29条第1項の規定による届出を行い、有料老人ホーム(以下「本件有料老人ホーム」といいます。)を運営している内国法人です。
 当社は、本件有料老人ホームの入居者(以下「本件入居者」といいます。)に対して食事の提供(以下「本件飲食料品の提供」といいます。)を行っています。
 本件飲食料品の提供の対価は、日額の食材費(食材の調達費。以下「食材費」といいます。)と月額の業務委託費(調理に係る費用。以下「業務委託費」といいます。)で構成されていますが、消費税の軽減税率制度の実施後に行われる本件飲食料品の提供は、飲食料品の譲渡に該当し、軽減税率の対象となると解して差し支えないか照会いたします。
 なお、ここでいう入居者とは、160歳以上の者、2要介護認定又は要支援認定を受けている60歳未満の者及び31又は2のいずれかの者と同居している配偶者をいいます(以下同じです。)。

2 事前照会に係る取引等の事実関係

当社が本件入居者との間で締結する入居契約書(以下「本件入居契約書」といいます。)には、要旨次の定めがあります。

  1. (1) 食事
    当社は、毎日、本件入居者に1日3食の食事を提供する。
  2. (2) 食費の負担
    本件入居者は、当社に対して、次の月額利用料表(以下「本件利用料表」といいます。)のとおり、月額の利用料(以下「本件利用料」といいます。)を支払う。
項目 食材費 業務委託費 合計
金額 800円(1日3食) 31,000円 55,000円
(消費税別) (消費税別) (30日の場合・消費税別)

  1. 1 業務委託費は、欠食(1日3食とも食べないことをいいます。以下同じです。)の有無にかかわらず、月額31,000円となる(消費税別)。
  2. 2 食材費は1日3食800円となる。本件入居者は800円(消費税別)に喫食(欠食以外のことをいいます。以下同じです。)日数を乗じた金額を当月分の食材費として支払う。
  3. 3 欠食の場合に限り、1日分の食材費は発生しない。

3 事前照会者の求める見解となる理由

  1. (1) 消費税法令等の規定

     令和元年10月1日から、消費税の軽減税率制度が実施され、酒類・外食を除く飲食料品の譲渡については、軽減税率の対象とされています。

    • イ 軽減税率が適用される飲食料品の譲渡について
       平成28年法律第15号附則第34条第1項において、課税資産の譲渡等のうち、同項第1号に規定する飲食料品の譲渡に係る消費税の税率は、軽減税率を適用する旨規定しています。
       そして、同号ロは、軽減税率が適用される飲食料品の譲渡に含まれないものとして、課税資産の譲渡等の相手方が指定した場所において行う加熱、調理又は給仕等の役務を伴う飲食料品の提供を掲げていますが、老人福祉法第29条第1項に規定する有料老人ホームその他の人が生活を営む場所として政令で定める施設において行う政令で定める飲食料品の提供は、飲食料品の譲渡として軽減税率が適用されることとされています。
    • ロ 上記イの政令で定める施設及び飲食料品の提供について
       平成28年政令第148号附則第3条第2項第1号は、上記イの「政令で定める施設」として、老人福祉法第29条第1項の規定による届出が行われている同項に規定する有料老人ホームを掲げ、この場合の「政令で定める飲食料品の提供」は、当該有料老人ホームの設置者又は運営者(以下「設置者等」という。)が、入居者(財務省令で定める年齢その他の要件に該当する者に限ります。)に対して行う飲食料品の提供(財務大臣の定める基準に該当する飲食料品の提供に限ります。)とする旨規定しています。
       なお、平成28年財務省令第20号附則第6条は、上記の「財務省令で定める年齢その他の要件に該当する者」として、第1号において60歳以上の者、第2号において要介護認定又は要支援認定を受けている60歳未満の者、第3号において第1号及び第2号のいずれかに該当する者と同居している配偶者を掲げ、これら各号のいずれかに該当する者であることとする旨規定しています。
       また、「消費税法施行令等の一部を改正する政令附則第3条第2項の規定に基づく財務大臣の定める基準」(平成28年財務省告示第100号)は、上記の「財務大臣の定める基準に該当する飲食料品の提供」として、有料老人ホームの設置者等が同一の日に同一の者に対して行う飲食料品の提供の対価の額が1食につき「入院時食事療養費に係る食事療養及び入院時生活療養費に係る生活療養の費用の額の算定に関する基準」(平成18年厚生労働省告示第99号)別表第一の1(1)に規定する金額(640円。以下「基準額」といいます。)以下であるもののうち、当該飲食料品の提供の対価の額の累計額が基準額に3を乗じて算出した金額(1,920円。以下「限度額」といいます。)に達するまでの飲食料品の提供であることとする旨規定しています。
  2. (2) 本件の当てはめ

     本件有料老人ホームは、老人福祉法第29条第1項の規定による届出が行われている同項に規定する有料老人ホームであり、本件入居者に対して食事の提供を行っています。そして、次のイのとおり、本件飲食料品の提供の対価の額は、食材費と業務委託費の合計額であるところ、次のロのとおり、1食につき基準額以下であり、かつ1日の累計額が限度額以下の金額となりますので、本件飲食料品の提供は、飲食料品の譲渡に該当し、軽減税率の対象となると考えます。

    • イ 飲食料品の提供の対価について
       当社は、本件入居契約書の本件利用料表において、本件利用料を55,000円(30日の場合)と定め、その内訳として、食材費を800円(1日3食、消費税別)、業務委託費を31,000円(消費税別)と定めています。
       上記1記載のとおり、食材費は食材を調達するための費用、業務委託費は調理に係る費用であり、ともに本件飲食料品の提供を行うために要するものですので、本件入居契約書において、食材費と業務委託費が区分されている場合であっても、食材費と業務委託費の合計額が本件飲食料品の提供の対価の額になると考えます。
    • ロ 1日当たりの食費の累計額及び1食当たりの金額の計算
       当社は、本件入居契約書において、食材費は1日3食800円であり、800円に喫食日数を乗じた金額を当月分の食材費として頂戴する(欠食の場合に限り、食材費は発生しません。)旨、業務委託費は欠食の有無にかかわらず月額31,000円となる旨定めています。
       そして、月額で定められた業務委託費を含む本件飲食料品の提供の対価の額が、1食につき基準額以下であり、かつ1日の累計額が限度額以下であるかどうかの判定については、例えば、業務委託費の額を月の日数で除して食材費を含む1日当たりの食費の累計額を算定し、その累計額を1日当たりの食数で除して1食当たりの金額を算定するなどの合理的な方法によって行うことが相当と考えます。
       この考え方に従い、本件飲食料品の提供の対価の額について、1日当たりの食費の累計額及び1食当たりの金額を計算すると、次のとおり、いずれの場合においても限度額及び基準額以下となります。
    •   1日当たりの食費の累計額 1食当たりの金額
      31日
      の月
      一食でも食べる日 800円+31,000円÷31日=1,800円(≦1,920円) 1,800円÷3食=600円(≦640円)
      欠食する日 0円+31,000円÷31日=1,000円(≦1,920円) 1,000円÷3食=333円(≦640円)
      30日
      の月
      一食でも食べる日 800円+31,000円÷30日=1,833円(≦1,920円) 1,833円÷3食=611円(≦640円)
      欠食する日 0円+31,000円÷30日=1,033円(≦1,920円) 1,033円÷3食=344円(≦640円)
      28日
      の月
      一食でも食べる日 800円+31,000円÷28日=1,907円(≦1,920円) 1,907円÷3食=635円(≦640円)
      欠食する日 0円+31,000円÷28日=1,107円(≦1,920円) 1,107円÷3食=369円(≦640円)

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