別紙1 事前照会の要旨

当法人(3月決算法人)は、特定非営利活動促進法第2条《定義》第2項に規定する特定非営利活動法人(以下「NPO法人」といいます。)です。
 当法人は、平成28年3月31日に横浜市長から児童福祉法第34条の15第2項の規定に基づき家庭的保育事業等(注1)のうち小規模保育事業を行うことについての認可(注2)を受け、同年4月1日から同事業を開始しています(以下、この横浜市長から認可を受けた小規模保育事業を「横浜市小規模保育事業」といいます。)。
 この横浜市小規模保育事業の認可を受けるに当たっては、「乳児又は幼児が、明るく衛生的な環境において、素養があり、かつ、適切な訓練を受けた職員が保育を提供することにより、心身ともに健やかに育成されること」といった横浜市条例(注3)の目的に合致するよう、同事業を行う保育施設、設備及び従事する者(注4)等について横浜市条例に規定された基準を満たす必要があります。
 ところで、NPO法人は、法人税法に規定する公益法人等(法法2六)とみなされ、各事業年度の所得のうち収益事業から生じた所得についてのみ法人税を納める義務があります(法法41ただし書、7)。また、この場合の収益事業とは、販売業、製造業その他一定の事業で、継続して事業場を設けて行われるものをいいます(法法2十三、法令51)。
 横浜市小規模保育事業における当法人の収入は、子ども・子育て支援法に基づき支給される地域型保育給付費及び横浜市からの助成金のほか、園児の保護者からの保育料(以下「本件保育料」といいます。)となります。
 この場合、当法人が行う横浜市小規模保育事業は、上記の法人税法第2条《定義》第13号に規定する収益事業に当たらないと解して差し支えありませんか。
 また、同事業に係る本件保育料は、消費税法上の非課税となる資産の譲渡等(以下「非課税資産の譲渡等」といいます。)の対価に該当すると解して差し支えありませんか。

(注)1 家庭的保育事業等とは、家庭的保育事業、小規模保育事業、居宅訪問型保育事業又は事業所内保育事業をいいます。

2 横浜市家庭的保育事業等の設備、運営等の基準に関する条例第27条《小規模保育事業の区分》に規定する「小規模保育事業A型」の認可を受けています。

3 横浜市条例とは、「横浜市家庭的保育事業等の設備、運営等の基準に関する条例」をいい、当該条例は、小規模保育事業に従事する者及びその員数、並びにその運営に関する事項等について児童福祉法の規定に基づき定めた「平成28年厚生労働省令第23号家庭的保育事業等の設備及び運営に関する基準」(以下「本件厚労省令」といいます。)に従い又は参酌して定めたものと考えられます。

4 当法人の保育施設の職員構成及び園児数

(職員構成)
園長1名、保育士8名、看護師1名、栄養士1名、事務員1名、その他2名
(園児数)
0歳 6名 1歳 7名 2歳 6名 計19名

別紙2 事前照会に係る取引の事実関係

1 横浜市小規模保育事業について

(1) 小規模保育事業の概要

  • イ 小規模保育事業とは、児童福祉法第6条の3第10項に規定する次の事業をいい、その利用者が10人に満たない場合を除き、社会福祉法第2条《定義》第3項に規定する第二種社会福祉事業(注)に該当します。
  • (イ) 保育(養護及び教育(児童福祉法第39条の2第1項に規定する満3歳以上の幼児に対する教育を除きます。)を行うことをいいます。以下同じです。)を必要とする乳児・幼児であって満3歳未満のものについて、当該保育を必要とする乳児・幼児を保育することを目的とする施設(利用定員が6人以上19人以下であるものに限ります。)において、保育を行う事業
  • (ロ) 満3歳以上の幼児に係る保育の体制の整備の状況その他の地域の事情を勘案して、保育が必要と認められる児童であって満3歳以上のものについて、上記(イ)に規定する施設において、保育を行う事業
  • (注) 園児が10人に満たない小規模保育事業は、社会福祉事業には含まれないものとされていますが(社会福祉法24四、社会福祉法施行令1二)、当法人が運営する保育施設は、別紙1の(注)4のとおり、利用者が19人ですので、第二種社会福祉事業に該当します。
  • ロ 小規模保育事業を行う者が、国、都道府県及び市町村以外の者である場合には、市町村長に申請し、市町村が定めた条例で定める基準や児童福祉法で規定された基準に適合するかどうかの審査を経た上で、市町村長から認可を得る必要があります(児童福祉法34の15)。
     なお、市町村が当該条例を定めるに当たっては、本件厚労省令のうち事業に従事する者及びその員数並びにその運営に関する事項については、本件厚労省令で定める基準に従い定めるものとし、その他の事項についても本件厚労省令で定める基準を参酌するものとしています(児童福祉法24、34の15、34の16)。
  • ハ 横浜市条例の内容は、横浜市小規模保育事業を利用している乳児又は幼児が、明るく衛生的な環境において、素養があり、かつ、適切な訓練を受けた職員が保育を提供することにより、心身ともに健やかに育成されることを目的とし(横浜市条例3)、配置される職員や設置される設備の基準等を定めるとともに、厚生労働大臣が定める保育所保育指針(平成20年3月28日厚生労働省告示第141号)に準じ、保育する乳幼児の心身の状況等に応じた保育を提供しなければならないとされています(横浜市条例24ないし31)。

(2) 保育所保育指針について

 横浜市小規模保育事業を行う事業者は、上記(1)のハのとおり、保育所保育指針に準じ、保育する乳幼児の心身の状況等に応じた保育を提供しなければならないとされています。

 保育所保育指針第三章において、「保育の内容」に関する事項が記載されており、その前文は次のとおりとなっています。

第三章 保育の内容

 保育の内容は、「ねらい」及び「内容」で構成される。「ねらい」は、第一章(総則)に示された保育の目標をより具体化したものであり、子どもが保育所において、安定した生活を送り、充実した活動ができるように、保育士等が行わなければならない事項及び子どもが身に付けることが望まれる心情、意欲、態度などの事項を示したものである。また、「内容」は、「ねらい」を達成するために、子どもの生活やその状況に応じて保育士等が適切に行う事項と、保育士等が援助して子どもが環境に関わって経験する事項を示したものである。

 保育士等が、「ねらい」及び「内容」を具体的に把握するための視点として、「養護に関わるねらい及び内容」と「教育に関わるねらい及び内容」との両面から示しているが、実際の保育においては、養護と教育が一体となって展開されることに留意することが必要である。

 ここにいう「養護」とは、子どもの生命の保持及び情緒の安定を図るために保育士等が行う援助や関わりである。また、「教育」とは、子どもが健やかに成長し、その活動がより豊かに展開されるための発達の援助であり、「健康」、「人間関係」、「環境」、「言葉」及び「表現」の五領域から構成される。この五領域並びに「生命の保持」及び「情緒の安定」に関わる保育の内容は、子どもの生活や遊びを通して相互に関連を持ちながら、総合的に展開されるものである。

別紙3 事前照会者の求める見解の内容及びその理由

1 当法人が行う横浜市小規模保育事業は、法人税法第2条第13号に規定する収益事業に該当するか(法人税関係)

(1) NPO法人の課税上の取扱い

 NPO法人は、法人税法に規定する公益法人等(法法2六)とみなされ、各事業年度の所得のうち収益事業から生じた所得についてのみ法人税を納める義務があります(法法41ただし書、7)。また、この場合の収益事業とは、販売業、製造業その他一定の事業で、継続して事業場を設けて営まれるものをいいます(法法2十三、法令51)。

(2) 児童福祉法第35条第4項に規定する認可保育所で行う保育事業に係る収益事業の判定

  • イ 保育所(保育を必要とする乳児・幼児を日々保護者の下から通わせて保育を行うことを目的とする施設で、利用定員が20人以上であるものに限り、幼保連携型認定こども園を除きます。)を設置しようとする事業者が、都道府県及び市町村以外の者である場合には、都道府県知事に申請し、都道府県が定めた条例で定める基準(児童福祉法45)や児童福祉法で規定された基準に適合するかどうかの審査を経た上で、都道府県知事から認可を得る必要があります(児童福祉法35)。
     なお、都道府県が当該条例を定めるに当たっては、厚生労働大臣が定めた児童福祉施設の設備及び運営に関する基準(昭和23年厚生省令第63号。旧名称:児童福祉施設最低基準。以下「設備運営基準」といいます。)のうち事業に従事する者及びその員数並びにその運営に関する事項については、設備運営基準で定める基準に従い定めるものとし、その他の事項についても設備運営基準で定める基準を参酌するものとしています(児童福祉法452)。
  • ロ 公益法人等が、設備運営基準に適合するものとして都道府県知事の認可を受けた保育所(以下「認可保育所」といいます。)で行う保育事業(以下「認可保育事業」といいます。)(児童福祉法354、39)は、収益事業には当たらないものと取り扱われています。
     これは、設備運営基準が、保育所に入所している者が適切な訓練を受けた職員の指導により心身ともに健やかにして社会に適応するように育成されることを保障することをその趣旨としており(設備運営基準12)、配置される職員や設置される設備などの基準を定めるとともに(設備運営基準32、33、34)、その保育の内容の詳細については保育所保育指針に従うよう規定されていますので(児童福祉法7、45、設備運営基準35)、公益法人等が行う認可保育事業は、第二種社会福祉事業に該当し、保育に関する専門性を有する職員により養護及び教育を一体的に行う事業となりますので、収益事業として特掲されている34業種のいずれにも当たらないものとされていると考えられます。

(3) 当法人が行う横浜市小規模保育事業の収益事業該当性

  • イ 別紙2の1の(1)のイのとおり、小規模保育事業は、社会福祉法上、その利用者が10人に満たない場合を除き、第二種社会福祉事業に位置付けられており、当法人が行う同事業は、別紙1の(注)4のとおり、園児が19人であることから、第二種社会福祉事業に該当します。また、別紙2の1の(1)のロのとおり、小規模保育事業を行う者が、国、都道府県及び市町村以外の者である場合には、児童福祉法に基づき市町村長に申請し、市町村が定めた条例で定める基準や児童福祉法で規定された基準に適合するかどうかの審査を経た上で、市町村長から認可を得る必要があります。
     なお、横浜市条例を定めるに当たっては、別紙2の1の(1)のロのとおり、本件厚労省令のうち事業に従事する者及びその員数並びにその運営に関する事項については、本件厚労省令で定める基準に従い定めるものとし、その他の事項についても本件厚労省令で定める基準を参酌するものとしています。
     そして、横浜市小規模保育事業における「保育の内容」については、別紙2の1の(1)のハのとおり、厚生労働大臣が定める保育所保育指針に準じ、保育する乳幼児の心身の状況等に応じた保育を提供しなければならないとされており、同指針では「保育の内容」について、「養護と教育が一体となって展開されることに留意することが必要である」とし、ここでいう「『養護』とは、子どもの生命の保持及び情緒の安定を図るために保育士等が行う援助や関わりであ」り、また、「『教育』とは、子どもが健やかに成長し、その活動がより豊かに展開されるための発達の援助であり、・・・」としています(別紙2の1の(2))。
  • ロ これらのことを踏まえると、当法人が行う横浜市小規模保育事業は、上記(2)のロの認可保育事業との比較において、施設の利用定員の規模の大小の違いはあるものの、事業の目的及びその性質において異なるところはなく、第二種社会福祉事業として専門性を有する職員が安全かつ衛生的な環境において、保育所保育指針に準じた「養護及び教育」を一体的に行うということが制度的に担保されていると認められます。
  • ハ 以上のとおり、当法人が行う横浜市小規模保育事業は、認可保育事業と同様の性質を有する事業であると認められます。
     したがって、当法人が行う横浜市小規模保育事業は、上記(2)のロの認可保育事業と同様に、法人税法施行令第5条《収益事業の範囲》第1項に列挙される34事業のいずれにも当たらないものと解されますので、収益事業には該当しないものと考えます。

2 本件保育料は消費税法上の非課税資産の譲渡等の対価に該当するか(消費税関係)

(1) 資産の譲渡等の対価の判定

 消費税法第2条《定義》第1項第8号は、資産の譲渡等とは、事業として対価を得て行われる資産の譲渡及び貸付け並びに役務の提供をいうと規定しています。

 本件保育料は、当法人が行う横浜市小規模保育事業の利用者に対して保育(役務)を提供することに対する反対給付(対価)であることから、資産の譲渡等(役務の提供)の対価に該当するものと考えます。

(2) 非課税資産の譲渡等の対価の判定

 消費税法第6条《非課税》第1項は、国内において行われる資産の譲渡等のうち、消費税法別表第一に掲げるものには、消費税を課さないと規定しています。

 また、消費税法別表第一第7号ロでは、非課税資産の譲渡等として、社会福祉法第2条に規定する社会福祉事業として行われる資産の譲渡等が掲げられており、同条第1項は、社会福祉事業とは、第一種社会福祉事業及び第二種社会福祉事業をいうと規定しています。

 当法人が行う横浜市小規模保育事業は、上記1の(3)のイのとおり、第二種社会福祉事業に該当し、本件保育料は、消費税法別表第一第7号ロに規定する社会福祉事業として行われる資産の譲渡等の対価となりますので、非課税資産の譲渡等の対価に該当するものと考えます。

○ 国税庁文書回答税目別検索