24環都総第59号
平成24年4月19日

東京国税局 課税第一部
審理課長 殿

東京都環境局環境都市づくり担当部長
山本 明

別紙1-1 照会の趣旨

1 照会の趣旨

東京都では、気候変動の危機を回避し、東京を低炭素型都市へ移行させるため、平成20年7月に「都民の健康と安全を確保する環境に関する条例(平成12年東京都条例第215号)」(以下「条例」という。)の一部を改正し、温室効果ガス排出総量削減義務と排出量取引制度を導入しています(削減義務は平成22年4月から、排出量取引は平成23年4月から適用開始)。

[総量削減義務]

知事が指定する特定地球温暖化対策事業所の所有者等(以下「削減義務者」という。)は、条例で定める削減義務期間内において、特定温室効果ガス(燃料、熱又は電気の使用に伴って排出される二酸化炭素)の排出量を一定量以上削減する義務(以下「削減義務」という。)を負うこととされました(条例5の11)。

[排出量取引]

削減義務は、削減義務者自らが設備更新による省エネ対策等を実施して達成することが優先されるところ、実績排出量が排出上限量を下回っている場合には、東京都からその下回っている部分に相当するクレジット(以下「超過削減量(クレジット)」という。)の交付を受け、これを他の者に販売することができます。
また、実績排出量が排出上限量を超えている場合は、他の者から超過削減量(クレジット)やグリーン電力証書など他の制度で認められた電気等の環境価値を削減量に変換して発行されたクレジット(以下「再エネクレジット」という。)など(以下これらを合わせて「クレジット」という。)を取得し、削減義務に充当することによって達成することができます。このクレジットのやりとりを排出量取引といいます。
なお、削減義務に係る数値については、知事の登録を受けた登録検証機関による検証を受けて削減量を確定することで正確性を担保することとしています。

[罰則等]

義務履行期限を過ぎても削減義務が未達成の場合、措置命令(義務不足量×1.3倍の削減又はクレジットの充当)を行います。その後も措置命令に違反する削減義務者に対しては、罰金(上限50万円)、違反事実の公表、知事が調達した不足量に係る費用の請求を行うことができます。

2 照会事項

削減義務者が行う次の排出量取引に係る法人税及び消費税の取扱いは、次に掲げる取引の区分に応じ、それぞれ以下のとおりと解して差し支えないか、御照会申し上げます。

(1) 超過削減量(クレジット)の取得等に係る取引(別添「取引図丸1」参照)(PDF/51KB)

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  削減義務者自らが東京都から発行を受ける場合 他の者から購入する場合
@ 超過削減量(クレジット)を取得した時 【法人税】
処理なし(オフバランス)
【法人税】
取得に要した費用を無形固定資産等として計上する。
【消費税】
資産の譲渡等に該当しない(処理なし)。
【消費税】
課税仕入れとなる。
(注) 個別対応方式を採用している場合、丸1自社使用のために取得する場合は、削減義務対象事業所の業務・取引内容により用途区分を判定、丸2第三者への転売目的で取得する場合は、「課税資産の譲渡等にのみ要するもの」に該当する。
A 自社使用(償却目的による義務充当口座への超過削減量(クレジット)の移転時) 【法人税】
「販売費及び一般管理費」等として損金の額に算入する。この場合の損金の額は、移転(償却)時の帳簿価額となる。
【消費税】
資産の譲渡等に該当しない(処理なし)。
B 第三者へ売却した時 【法人税】
無形固定資産等の売却として処理する。
この場合の譲渡原価は、0(ゼロ)となる。
【法人税】
無形固定資産等の売却として処理する。
この場合の譲渡原価は、売却時の帳簿価額となる。
【消費税】
課税売上げとなる。
【消費税】
課税売上げとなる。

(2) 東京都と公益財団法人東京都環境公社(平成24年4月に「財団法人東京都環境整備公社」から改称。以下「公社」という。)が連携して実施した住宅用太陽エネルギー利用機器促進事業によるグリーン電力証書(電気の環境価値を証書化したもの)を変換した再エネクレジットの取得等に係る取引(別添「取引図丸2」参照)(PDF/51KB)

  グリーン電力証書を活用して再エネクレジットの発行を受ける場合
@ グリーン電力証書を取得した時(金銭等の支出をした時) 【法人税】
グリーン電力証書を取得する際に支出する金銭等の額を仮払金として計上する。
【消費税】
処理なし。
A  東京都から再エネクレジットを取得した時 【法人税】
上記@における仮払金の額を無形固定資産等として計上する。
【消費税】
課税仕入れとなる。
(注) 個別対応方式を採用している場合、丸1自社使用のために取得する場合は、削減義務対象事業所の業務・取引内容により用途区分を判定、丸2第三者への転売目的で取得する場合は、「課税資産の譲渡等にのみ要するもの」に該当する。
B 自社使用(償却目的による義務充当口座への再エネクレジットの移転時) 【法人税】
「販売費及び一般管理費」等として損金の額に算入する。この場合の損金の額は、移転(償却)時の帳簿価額となる。
【消費税】
資産の譲渡等に該当しない(処理なし)。
C 第三者へ売却した時 【法人税】
無形固定資産等の売却として処理する。この場合の譲渡原価は、売却時の帳簿価額となる。
【消費税】
課税売上げとなる。

(注) 本件の排出量取引における取引価格は、第三者間の取引、削減義務者自らが超過削減量(クレジット)を創出するための費用その他経済事情を参酌した適正なものによっていることを前提とします。

別紙1-2 照会に係る取引等の事実関係

3 事実関係

(1) 温室効果ガス排出総量の削減義務

イ 削減義務者
原油換算エネルギー使用量が3か年度連続して年間1,500キロリットル以上の事業所で、知事が指定した事業所の所有者が削減義務者となります(条例5の7九)。また、当該事業所の所有者以外にも当該事業所の事業活動に伴う温室効果ガスの排出について責任を有する者が都知事に届け出た場合も削減義務者となります(条例5の8丸2、都民の健康と安全を確保する環境に関する条例規則(平成13年東京都規則第34号)(以下「条例施行規則」という。)4の4)。

(注) 上記の所有者以外の責任を有する者とは、例えば、当該事業所の使用に伴い特定温室効果ガスを排出している一定のテナント事業者がこれに該当します。

ロ 条例に基づく温室効果ガス排出総量の削減義務
条例及び条例施行規則では、削減義務者に対して、平成14年度から平成19年度までの中から削減義務者が選択する連続した3か年度の特定温室効果ガスの年度排出量の平均を基準排出量とし(条例施行規則4の17)、これと比較して第一計画期間(平成22年度から平成26年度までの5年間)の特定温室効果ガスの平均排出量を、条例施行規則に定める区分に応じて6%又は8%削減することが義務付けられています。

ハ 削減義務に違反した場合の罰則等
履行期限(第一計画期間の終了後1年を経過する日)までに条例に基づく削減義務が履行されなかった場合には、知事は、相当の期限を定めて削減不足量の1.3倍の削減又はクレジットの充当を履行するように命ずること(措置命令)ができます(条例8の5丸1、条例施行規則5の4)。
また、上記内容が履行されない場合には、知事は、削減義務者に代わってクレジットを調達し、同命令に対する削減量として記録し(条例8の5丸3)、その調達費用を削減義務者に請求することができます(条例8の5丸4)。さらに、違反事実の公表(条例156)や50万円以下の罰金を科すことができます(条例159)。

ニ 削減義務の履行手段
削減義務の履行手段として、次の2つがあります。

  • 丸1 事業所の排出量の削減
    自らの事業所において、高効率なエネルギー消費設備・機器への更新や運用対策の推進等を行うことにより、事業所の実際の特定温室効果ガスの排出量を減少させます。
  • 丸2 排出量取引による排出削減量への充当
    下記(2)及び(3)の排出量取引によりクレジットを取得して削減義務に充当することができます。
    具体的には、東京都が開設する削減量口座簿(注)の一般管理口座において、他の者からクレジットを取得(購入)し、自己の事業所別の指定管理口座に移転させた上で、当該指定管理口座から知事の管理口座(以下「義務充当口座」という。)に移転させることにより、当該クレジットに係る排出削減量を自らの対象事業所の特定温室効果ガスの排出量から減少させることとなります。

(注) 削減量口座簿とは、取引可能なクレジットや、そのクレジットの取引の記録等を管理するための電子システムであり、東京都が整備し、削減義務者等の申請等に基づき記録が行われます。削減量口座簿は、丸1義務充当口座、丸2指定管理口座(削減義務者が、その削減義務のある事業所ごとに開設し、義務の履行状況の確認に用いる口座)、丸3一般管理口座(削減義務者及び排出量取引を事業として行う者(取引参加者)が開設し、クレジットの取得、保有、売却の際に利用する口座。一度、一般管理口座から指定管理口座へ移転させたクレジットは、再度一般管理口座へ移転させることはできない。)に区分されています。

(2) 超過削減量(クレジット)の取得等に係る取引

イ 超過削減量(クレジット)の取得
実績排出量が排出上限量を下回る削減義務者(削減義務達成者)は、東京都に対して超過削減量(クレジット)の発行申請を行うことにより、超過削減量(クレジット)を取得することとなります。他方、実績排出量が排出上限量を超えている削減義務者(削減義務未達成者)は、他の者が削減対策を実施したことにより東京都から発行を受けた超過削減量(クレジット)を譲り受けることにより、超過削減量(クレジット)を取得することができます。
なお、東京都は、削減義務者から毎年提出される特定温室効果ガスの年度排出量及び基準排出量に基づき超過削減量を算出することとしており、削減義務者が特定温室効果ガスの年度排出量等を届け出る際には、東京都の登録を受けた検証機関による検証を受ける義務があります(条例5の11丸4)。

(注) 削減義務者にかかわらず、取引参加者についても、一般管理口座を開設し、超過削減量(クレジット)の取得等を行うことができます。

ロ 超過削減量(クレジット)の償却(義務充当)
実績排出量が排出上限量を超えている削減義務者は、特定温室効果ガス排出総量の削減義務を履行するため、他の者から取得した超過削減量(クレジット)を削減義務に充当することができます。

ハ 超過削減量(クレジット)の売却
削減義務者及び取引参加者は、保有する超過削減量(クレジット)を相対取引で自由に売却することができます。この場合、東京都は、売却価格に関して市場動向を示すことはあっても、価格の決定に関与することはありません。

(注) 超過削減量(クレジット)の移転手続
超過削減量(クレジット)の償却及び売却といった移転の手続については、超過削減量(クレジット)を移転する口座(超過削減量(クレジット)を減少させる口座)の口座名義人(削減義務者又は取引参加者)が振替申請を行い、申請の内容に不備がなければ、東京都が超過削減量(クレジット)の移転記録を行うこととなります。

(3) 再エネクレジットの取得等に係る取引
削減義務者は、特定温室効果ガス排出総量の削減義務の履行手段の一つとして、公社からグリーン電力証書(注)を取得し、当該グリーン電力証書を東京都に対して再エネクレジットの発行に係る添付書類として提出することにより、再エネクレジットを取得することができます。
なお、公社が発行するグリーン電力証書を活用した再エネクレジットの取得等に係る取引は、条例第5条の11及び条例施行規則第4条の13並びに「大規模事業所への温室効果ガス排出総量削減義務と排出量取引制度に利用するグリーン電力証書販売要綱(平成23年11月21日付東京都環境整備公社理事長決定)」等に基づき行われることとなります。

イ グリーン電力証書の取得
削減義務者は、あらかじめ決められた購入価格を公社に支払うことによりグリーン電力証書を取得することができます。当該グリーン電力証書は、削減義務者のみが取得することができ、使用目的が「条例に基づく総量削減義務と排出量取引への利用」に限定されており、他の者に対して譲渡することはできません。
なお、グリーン電力証書(現物)は、再エネクレジットの発行に係る添付書類として東京都に提出する必要があることから、削減義務者に引き渡されることなく、公社がそのまま占有し、再エネクレジットの申請の際に東京都に提出することとなります。

ロ 再エネクレジットの取得
削減義務者は、公社が行う東京都に対する再エネクレジットの代理申請に基づき、東京都から次の式により算定された再エネクレジットの発行を受けることによって取得することとなります。

再エネクレジット(tCO2)=グリーン電力証書の認証発電電力量(千キロワットアワー)×0.382tCO2/千キロワットアワー×1.5

(注)

  • 1 「グリーン電力証書」とは、財団法人日本エネルギー経済研究所グリーンエネルギー認証センターにより認証された電気の環境価値を表示する証書をいい、この場合の「環境価値」とは、再生可能エネルギーを変換して得られる電気又は熱が有する地球温暖化及びエネルギーの枯渇の防止に貢献する価値をいいます(公社「グリーン電力証書販売要綱」より)。
  • 2 公社は、東京都と連携して、平成21年度及び平成22年度に都内の住宅用太陽エネルギー利用機器設置者(補助対象者)に対して経費補助事業を実施し、当該補助対象者は、当該経費補助の条件として当該機器の利用に伴い生み出された環境価値のうち、当該補助を受け機器を設置した住宅において使用された電力量等に相当する10年分の環境価値を公社に対して無償で譲渡することとされています。

(4) 会計上の取扱い
企業会計基準委員会における排出量取引専門委員会の検討では、クレジットの取得及び売却については、当面、実務対応報告第15号「排出量取引の会計処理に関する当面の取扱い」で定められている試行排出量取引スキームの会計処理に準じて処理することで問題はないと考えられるとの意見が出されています(H22.4.9 第199回企業会計基準委員会議事内容)。
しかしながら、企業会計基準委員会では、東京都排出量取引制度における具体的な会計処理について大きなところは示されたものの、本制度で発生する全ての個別取引にまで踏み込んだ会計処理に言及されていませんので、本制度における削減義務者及び取引参加者の実務上の参考となるよう、「東京都環境確保条例に基づく総量削減義務と排出量取引制度の会計処理に関する考え方」(平成22年8月東京都環境局)を作成し、本制度における会計処理の基本的な考え方を示しています。
具体的に一例を申し上げますと、実務対応報告第15号においては、次の定めがなされていますが、上記基本的な考え方では、一度、一般管理口座から指定管理口座へ移転したクレジットについては、再度一般管理口座へ移転させることができない(他の者に売却できず、義務充当口座に移転することのみが可能である)ことから、一般管理口座から指定管理口座へ移転した時点で費用計上(「販売費及び一般管理費」など)を行うことなどを示しています。

【実務対応報告第15号 4(1)】

資産として計上された排出クレジットは、自社の排出量削減に充てられたときに、これを費用として計上する。具体的には、排出クレジットを国別登録簿(割当量口座簿)の政府保有口座へ償却を目的として移転した時点において費用とする。また、実際に政府保有口座に移転していなくとも移転することが確実と見込まれる場合や、第三者へ売却する可能性がないと見込まれる場合には費用とすることが適当である。

別紙1-3 照会者の求める見解となることの理由

4 検討内容

(1) 超過削減量(クレジット)及び再エネクレジットの資産性の有無について
照会事項の排出量取引に係る法人税及び消費税の取扱いの検討に当たっては、本件の取引における超過削減量(クレジット)及び再エネクレジットに資産性があるかどうかが前提となることから、その点についてまず検討を行います。

イ 先例(京都メカニズムを活用したクレジット及び国内クレジット)の取扱い
平成21年2月24日国税庁文書回答「京都メカニズムを活用したクレジットの取引に係る税務上の取扱いについて」(以下「京都メカニズム文書回答」という。)及び平成22年3月26日国税庁文書回答「国内クレジットの取引に係る法人税の取扱いについて」(以下「国内クレジット文書回答」という。)では、それぞれの制度におけるクレジットについて、次の理由から資産性があるものと整理されています。

A 京都メカニズム文書回答におけるクレジットの資産性
環境省に設置された研究会により取りまとめられた登録簿報告書においては、クレジットは、京都議定書の排出削減約束達成に使用できるという意味において、元々ある種の法律上の利益又は地位としての実態を有しているとしつつ、権利移転方法の簡便性・明確性及び取引の安全の確保といった観点から、「動産類似の財産権」的な存在として扱うことが妥当であるとしています。この考え方を基礎として、地球温暖化対策の推進に関する法律の一部を改正する法律(平成18年6月2日法律第57号)においては、クレジットの帰属は、国別登録簿における記録によって定まること、国内におけるクレジットの譲渡の効力は、譲受人の保有口座における当該クレジットの増加記録をもって効力が発生すること、悪意又は重大な過失がない限り、政府や内国法人がその保有口座においてクレジット増加の記録を受けた場合には、そのクレジットを正当に取得したとみなされること等を規定し、クレジットを資産的存在として取引するための基本的な法的基盤を提供しています。また、手続面では、内国法人が我が国登録簿内に保有口座を開設する場合やクレジットを自らの保有口座から他(政府及び民間)の保有口座に移転する場合の手続き等を定めクレジット取引の安定性を担保しているものです。

B 国内クレジット文書回答におけるクレジットの資産性
国内クレジットは、以下の特徴を有しているところ、その性格が京都議定書の約束達成に使用するよう制度設計され、第三者認証を経て発行された後、事業者間を一定の価格により流通することが想定されていることから、京都クレジットに極めて類似しており、また、大企業等が自主行動計画の目標達成のために取得するという期待をもって価値が付くものであることから、資産性を認めるとしています。

  • (A) 事業者は政府への無償移転を通じて自主行動計画等における目標達成に使用できるように、制度設計されていること。
  • (B) 排出削減事業の実施により実際に発生した排出削減量を第三者機関が認証し、認証された分がクレジット化されること。
  • (C) 我が国の実排出量を引き下げることにより我が国の京都議定書約束達成に実質的に貢献するものであること。
  • (D) 排出削減事業の実施主体である中小企業等からクレジットの需要者である大企業等に金銭等を介して移転することが想定されていること。
  • (E) 大企業等が取得した後、専用の国内クレジット管理システム上で他の事業者に移転することが可能であること。

ロ 本件のあてはめ
超過削減量(クレジット)及び再エネクレジットについて、京都メカニズムを活用したクレジット及び国内クレジットにおける資産性の判断と同様の検討をすると、次のことから資産性を有するものと解されます。

A 削減義務者が削減義務を履行するために使用することができるよう制度設計がされていること。〔法的安定性、流通性の確保〕

B 超過削減量(クレジット)は、排出量を登録検証機関が審査、検証したものを東京都がクレジット化したものであり、また、再エネクレジットは、その基となるグリーン電力(電気の環境価値)を第三者機関が認証し、それを東京都がクレジット化するものであること。〔恣意性の排除(客観性の確保)〕

C 削減義務者及び取引参加者間で金銭等を介して取引の対象とされ、財産的価値を有するものとして移転することが可能であること。〔取引可能性〕

(2) 超過削減量(クレジット)の取得等に係る取引について

イ 超過削減量(クレジット)の取得
[法人税関係]

  • 丸1 削減義務者自らが東京都から発行を受けた超過削減量(クレジット)
    上記(1)のとおり、超過削減量(クレジット)については資産性を有するものの、削減義務者自らが東京都から発行を受けた超過削減量(クレジット)については、削減義務者が一定の手続を東京都に対して行い、東京都がこれを受けて発行するものであるから、当該超過削減量(クレジット)は東京都が発行することにより初めてその効力が生じる(発生する)こととなる。すなわち、当該超過削減量(クレジット)は東京都の発行により創出され、同時に削減義務者に帰属する(付与される)ものであり、当該超過削減量(クレジット)を取得するための具体的な対価の支払がないことから、処理を行わなくても差し支えない。
  • 丸2 他の者から取得する超過削減量(クレジット)
    削減義務者及び取引参加者が他の者から取得する超過削減量(クレジット)については、上記(1)のとおり資産性を有するものであるため、当該超過削減量(クレジット)が自己の一般管理口座に記録された日(移転が完了した日)の属する事業年度において、当該超過削減量(クレジット)の取得に要した費用を「無形固定資産(投資その他の資産)」又は「棚卸資産」として計上することとなる。

[消費税関係]

  • 丸1 削減義務者自らが東京都から発行を受けた超過削減量(クレジット)
    超過削減量(クレジット)は、上記(1)及び上記[法人税関係]のとおり資産性を有する権利その他これに類する無形固定資産等であると考えられることから、当該超過削減量(クレジット)の取得(付与)は、削減義務者における権利(財産権)の発生と取り扱うのが相当であり、資産の譲渡等には該当しない(消費税の課税の対象外であるから処理は不要である。)。
  • 丸2 他の者から取得する超過削減量(クレジット)
    超過削減量(クレジット)は、資産性を有するものであり、超過削減量(クレジット)の取得に当たりその内容、性質は同一性を保持しつつ、他の者(前所有者)から削減義務者又は取引参加者(取得者)に移転し、その対価として削減義務者又は取引参加者(取得者)から他の者(前所有者)に金銭等が支払われるものである。すなわち、超過削減量(クレジット)の取得は、事業者が、事業として他の者から資産を譲り受けるものであるから、課税仕入れに該当し、超過削減量(クレジット)が自己の一般管理口座に記録された日(移転が完了した日)が課税仕入れを行った日となる。
    なお、削減義務者及び取引参加者(取得者)が仕入控除税額の計算に当たり個別対応方式を採用する場合の用途区分は、課税仕入れを行った日の状況により次のとおりとなる。

A 自己の削減義務の履行に使用する場合
削減義務を課された事業所における事業(当該事業所において行われる資産の譲渡等)の内容に応じた用途区分に判定

B 他の者に売却する場合
課税資産の譲渡等のみに要するもの

ロ 超過削減量(クレジット)の償却(義務充当)
[法人税関係]
削減義務者は、京都メカニズム文書回答や国内クレジット文書回答のように任意にクレジットの無償移転を行うものとは異なり、条例に基づき課された削減義務を履行するため排出削減(超過削減量(クレジット)の無償移転)を実施するものであることからすれば、削減義務者が他の者から超過削減量(クレジット)を取得し、義務充当口座に移転することは、自己の業務を実施するために必要不可欠な行為であると考えられる。
したがって、削減義務者が償却を目的として他の者から取得した超過削減量(クレジット)を自己の指定管理口座から義務充当口座に移転した場合には、当該移転した日の属する事業年度において、移転(償却)時の帳簿価額を「販売費及び一般管理費」等として損金の額に算入することとなる。
[消費税関係]
削減義務者が行う超過削減量(クレジット)の償却は、上記[法人税関係]のとおり削減義務者が超過削減量(クレジット)を自己の指定管理口座から義務充当口座に移転させるものであるが、当該移転は、削減義務者が条例に基づき課された義務を履行するために行うものであり、削減義務者においては、何ら反対給付を受けるものではないことから資産の譲渡等には該当しない(消費税の課税の対象外であるから処理は不要である。)。

ハ 超過削減量(クレジット)の売却
[法人税関係]

  • 丸1 削減義務者自らが東京都から発行を受けた超過削減量(クレジット)
    削減義務者自らが東京都から発行を受けた超過削減量(クレジット)を他の者に売却(有償譲渡)をした場合には、「無形固定資産(投資その他の資産)」又は「棚卸資産」の譲渡として扱うことが相当であり、当該超過削減量(クレジット)の売却により生じた損益については、その確定した日を含む事業年度の益金又は損金の額に算入することとなる。なお、この場合の譲渡原価は、0(ゼロ)となる。
  • 丸2 他の者から取得した超過削減量(クレジット)
    削減義務者及び取引参加者が他の者から取得した超過削減量(クレジット)を他の者に売却(有償譲渡)した場合には、上記丸1と同様に取り扱うこととなる。ただし、この場合の譲渡原価は、売却時の帳簿価額となる。

[消費税関係]

削減義務者が保有する超過削減量(クレジット)の売却は、自己が発行を受けたものか、あるいは他の者から取得したものかにかかわらず、自己が所有する資産をその同一性を保持しつつ、他の者に移転させ、その対価として金銭等を収受するものであるから資産の譲渡等に該当し、消費税の課税の対象となる。

(3) 再エネクレジットの取得等に係る取引について
上記3事実関係の(3)のとおり、削減義務者は、特定温室効果ガス排出量の削減義務を履行するため、公社からグリーン電力証書を取得し、当該グリーン電力証書を東京都に提出することにより、再エネクレジットを取得することができるものであるところ、

  • 丸1 当該グリーン電力証書は、削減義務者のみが取得することができ、使用目的が「条例に基づく総量削減義務と排出量取引への利用」に限定されており、削減義務者は、再エネクレジットの取得以外に使途がないこと、
  • 丸2 削減義務者は、グリーン電力証書を取得する際に提出する購入申請書に東京都から発行を受ける再エネクレジットの量に応じて「購入希望量:●トンCO2の再エネクレジットに相当する認証電力量●キロワットアワー」と記載するものであること、
  • 丸3 形式的には、公社からグリーン電力証書の取得をすることとなっているが、その後の再エネクレジットの取得までの手続は、必ず公社が東京都に対して代理申請を行うこととなっていること

からすれば、公社と削減義務者との取引は、グリーン電力証書を削減義務者が公社から取得することを目的とするものではなく、当初から削減義務者においては公社を通じてグリーン電力証書を再エネクレジットに変換した上で、すなわち、再エネクレジットの取得を目的としているものであると認められる。
したがって、削減義務者が行う再エネクレジットの取得等に係る取引については、次の処理を行うこととなる。

イ グリーン電力証書の取得
[法人税関係]
上記のとおり、公社と削減義務者の間における取引は、グリーン電力証書の取得を目的とするものではなく、再エネクレジットの取得を目的とするものであるところ、金銭等の支出をした時においては再エネクレジットを譲り受けるものではないことから、削減義務者は、その金銭等の支出をした日の属する事業年度において、その支出した金銭等の額、すなわち、再エネクレジットの取得に要する費用に相当する金額を仮払金として計上することとなる。
[消費税関係]
上記[法人税関係]のとおり、削減義務者は、再エネクレジットを譲り受けるものではなく、金銭等を支出したに過ぎないことから、金銭等の支出をした日の属する課税期間における課税仕入れの対象とはならない。

ロ 再エネクレジットの取得
[法人税関係]
上記(1)のとおり、再エネクレジットは資産性を有するものであるため、削減義務者が、公社による再エネクレジットの発行に係る代理申請に基づき、自己の一般管理口座に記録された日(再エネクレジットの発行を受けた日)の属する事業年度において、上記イにより仮払金として計上した金額を、「無形固定資産(投資その他の資産)」又は「棚卸資産」として計上することとなる。
[消費税関係]
再エネクレジットについては、上記(1)のロのとおり消費税法上、資産に該当するものであり、上記〔法人税関係〕のとおり、削減義務者が自己の一般管理口座に記録された日(再エネクレジットの発行を受けた日)が課税仕入れを行った日となる。
なお、削減義務者(他の者から再エネクレジットを取得する場合を含む。)が仕入控除税額の計算に当たり個別対応方式を採用する場合の用途区分は、課税仕入れを行った日の状況により次のとおりとなる。

A 自己の削減義務の履行に使用する場合
削減義務を課された事業所における事業(当該事業所において行われる資産の譲渡等)の内容に応じた用途区分に判定

B 他の者に売却する場合
課税資産の譲渡等のみに要するもの

ハ 再エネクレジットの償却(義務充当)及び売却
取得した再エネクレジットを償却及び売却した場合の法人税及び消費税の取扱いについては、上記(2)のロ及びハと同様に取り扱うこととなる。