別紙1-1 事前照会の趣旨

1 照会要旨

 当社は、国内において、社会人や学生などに対し、各種国家資格等の受験指導、職業訓練等の講座を開設し人材育成を図る、いわゆる教育・学習支援等を業とする株式会社です。
当社では、当社が行う職業訓練について、「職業訓練の実施等による特定求職者の就職の支援に関する法律」(平成23年法律第47号、以下「求職者支援法」といいます。)第4条第1項《厚生労働大臣による職業訓練の認定》に規定する特定求職者に対する職業訓練の適合の認定を厚生労働大臣から受け(以下、当該認定を受けた職業訓練を「認定職業訓練」といいます。)、当社の各施設において実施しています。
当社は、認定職業訓練の実施に伴い、国から、認定職業訓練実施基本奨励金(以下「基本奨励金」といいます。)及び認定職業訓練実施付加奨励金(以下「付加奨励金」といい、基本奨励金と併せて「本件奨励金」といいます。)の支給を受けていますが、本件奨励金については、いずれも資産の譲渡等の対価に該当しないことから、消費税の課税の対象外(不課税取引)と取り扱って差し支えないか照会いたします。

(注) 「特定求職者」とは、公共職業安定所に求職の申込みをしている者(雇用保険法(昭和49年法律第116号)第4条第1項に規定する被保険者である者及び同法第15条第1項に規定する受給資格者である者を除く。)のうち、労働の意思及び能力を有しているものであって、職業訓練その他の支援措置を行う必要があるものと公共職業安定所長が認めたものをいいます(求職者支援法2)。

別紙1-2 事前照会に係る取引等の事実関係

2 事実関係

(1) 求職者支援法等

丸1 求職者支援法
求職者支援法は、特定求職者に対し、職業訓練の実施、当該職業訓練を受けることを容易にするための給付金の支給その他の就職に関する支援措置を講ずることにより、特定求職者の就職を促進し、もって特定求職者の職業及び生活の安定に資することを目的とするものであり(求職者支援法1)、平成23年10月1日から施行されています。
求職者支援法においては、特定求職者に対する職業訓練の実施に関し、厚生労働大臣による職業訓練実施計画の策定、職業訓練の認定及び取消、認定職業訓練を行う者に対する国からの助成等が定められています(求職者支援法3〜6)。

丸2 職業訓練実施計画
職業訓練実施計画は、特定求職者について、その知識、職業経験その他の事情に応じた職業訓練を受ける機会を十分に確保するため、認定職業訓練その他の特定求職者に対する職業訓練の実施に関し重要な事項を定めた計画であり、厚生労働大臣が策定するものです。
職業訓練実施計画に定める事項は、特定求職者の数の動向に関する事項、特定求職者に対する職業訓練の実施目標に関する事項及び特定求職者に対する職業訓練の効果的な実施を図るために講じようとする施策の基本となるべき事項とされており、具体的には職業訓練の実施規模や訓練分野、就職率に係る目標等を掲げています。
「平成23年度の職業訓練実施計画」(以下「平成23年度計画」といいます。)では、認定職業訓練の内容について、成長分野とされている分野・職種に重点を置くとともに、地域における産業の動向や求人ニーズを踏まえたものとされており、実践コースについては、介護系、医療事務系、情報系及びその他の成長分野(農業、環境、観光など)等とされています。また、当該訓練の実施に当たり、平成23年度計画の実施方針及び推進体制においては、職業訓練を効果的に実施し、訓練修了者の就職を実現していく上で、国や都道府県の関係行政機関はもとより、地域の訓練実施機関などの団体や労使団体等の幅広い理解・協力が求められること、産業界・教育訓練機関団体等の協力を得ながら進めていくこととされています。

(2) 認定職業訓練の概要

 認定職業訓練は、基礎コースと実践コースに大別され、基礎コースは専ら就職に必要な基礎的な技能及びこれに関する知識(以下「基礎的技能等」という。)を付与するための職業訓練、実践コースは基礎的技能等並びに実践的な技能及びこれに関する知識を付与するための職業訓練とされています。

丸1 認定の要件
厚生労働大臣は、職業訓練を行う者の申請に基づき、当該者の行う職業訓練について、次のとおり、求職者支援法第4条第1項及び「職業訓練の実施等による特定求職者の就職の支援に関する法律施行規則」(平成23年厚生労働省令第93号、以下「求職者支援法規則」といいます。)第2条《法第四条第一項第三号の厚生労働省令で定める基準》に掲げる事項のいずれにも適合するものであるものを認定することができるとされています。

  • イ 職業訓練実施計画に照らして適切なものであること
  • ロ 就職に必要な技能及びこれに関する知識を十分に有していない者の職業能力の開発及び向上を図るために効果的なものであること
  • ハ その他厚生労働省令で定める基準(求職者支援法規則第2条)に適合するものであること
    また、当該基準のうち、主なものは、次のとおりです。
  • (イ) 訓練を行う者については、次の要件及びその他一定の要件の全てに該当する者であること
    • A) 認定を受けようとする職業訓練(以下「申請職業訓練」という。)を開始しようとする日から遡って1年間において、当該申請職業訓練と同等の内容の職業訓練を適切に行ったことがあること
    • B) 国、地方公共団体、特別の法律により特別の設立行為をもって設立された法人(その資本金の全部若しくは大部分が国からの出資による法人又はその事業の運営のために必要な経費の主たる財源を国からの交付金若しくは補助金によって得ている法人に限る。)、独立行政法人及び地方独立行政法人でないこと
  • (ロ) 教科については、その科目が就職に必要な技能及びこれに関する知識を十分に有していない者の職業能力の開発及び向上を図るために効果的なものであること
  • (ハ) 訓練受講に係る費用については、入学料(受講の開始に際し納付する料金をいう。)及び受講料が無料であること。また、申請職業訓練を受講する特定求職者等が所有することとなる教科書その他の教材等に係る費用としてあらかじめ明示したものを除き、無料であること

丸2 申請者が行う手続き等
認定職業訓練の認定申請から訓練の開始までの手続きは次のとおりです。

  • イ 申請者は、独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構都道府県職業訓練支援センター(以下「センター」といいます。)に対し、訓練の申請に関して相談
  • ロ 申請者は、認定基準に合致する訓練計画を策定
  • ハ 申請者は、センターに対し申請書及び添付書類を提出
  • ニ 独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構(以下「機構」といいます。)による審査
  • ホ 機構本部又はセンターは、申請者に対し審査結果を通知(認定の場合には認定通知を送付、以下認定通知を受けた者を「訓練実施機関」といいます。)
  • ヘ 公共職業安定所(以下「ハローワーク」といいます。)で受講者の募集・申込受付
  • ト ハローワークは、受講申込者に受講申込書原本を交付し、受講申込者が当該受講申込書原本を訓練実施機関に提出
  • チ 訓練実施機関による受講者の選考
    なお、選考は、受講申込者全員に対し、筆記試験、面接など適切な方法により実施
  • リ 訓練実施機関は、訓練開始日の2週間前までに選考結果の合否を「選考結果通知書」により受講申込者、ハローワーク、センターに通知
  • ヌ 訓練実施機関において訓練を開始

(注) 認定に関する事務については、機構が行うこととされています(求職者支援法4丸3)。

(3) 本件奨励金の交付等

 本件奨励金は、求職者支援法第5条《認定職業訓練を行う者に対する助成》に基づき、認定職業訓練が円滑かつ効果的に行われることを奨励するための金員であり、次のとおり、丸1基本奨励金及び丸2付加奨励金の支給に係る訓練を適切に実施した訓練実施機関に対して、国が支給するものです。
なお、本件奨励金の支給に当たっては、訓練実施機関は、訓練実施後、申請期限までの間に支給申請書その他関係書類を訓練実施施設を管轄する都道府県労働局長に提出し、当該労働局長は、審査終了後、訓練実施機関に対して支給・不支給の通知をすることとされています。
丸1基本奨励金及び丸2付加奨励金については、要旨次のとおりとされています(求職者支援法規則7、8)。

丸1 基本奨励金
基本奨励金は、特定求職者に対して認定職業訓練を適切に実施した訓練実施機関に対して、次の区分に応じ、それぞれに定める額を支給することとされています。

  • イ 基礎コース
    基礎コースを受講し、出席率要件を満たした特定求職者等1人につき6万円に当該基本奨励金支給対象期間における基本奨励金支給単位期間の数を乗じて得た額
  • ロ 実践コース
    実践コースを受講し、出席率要件を満たした特定求職者等1人につき5万円に当該基本奨励金支給対象期間における基本奨励金支給単位期間の数を乗じて得た額

丸2 付加奨励金
付加奨励金は、実践コースに係る基本奨励金を受給し、当該実践コースの就職率が次のイ又はロに掲げる率に該当する実践コースを行った訓練実施機関に対して、次の区分に応じ、それぞれに定める額を支給するものとされています。

  • イ 就職率が40%以上55%未満
    実践コースに係る修了者等1人につき1万円に当該実践コースの付加奨励金支給単位期間の数を乗じて得た額
  • ロ 就職率が55%以上
    実践コースに係る修了者等1人につき2万円に当該実践訓練の付加奨励金支給単位期間の数を乗じて得た額

(注) 上記の計算方法については、基本奨励金支給単位期間における日数が少ないなどの場合、特例が設けられています。

(4) 当社における認定職業訓練の概要等

 当社が行う認定職業訓練の概要等は次のとおりです。

区分 基礎コース 実践コース
講座名 IT・パソコン基礎 医療事務 経理事務
訓練期間 3か月 3か月 3か月
定員 24名 24名 30名

自己負担額(教材費等)

約10,000円 約11,000円 約8,000円

(注) 入学金、受講料等は徴収していません(無料)。

別紙1-3 事前照会者の求める見解となることの理由

3 消費税法の規定等

(1) 消費税の課税対象

 消費税は、事業者が国内において行った資産の譲渡等(いわゆる国内取引)及び保税地域から引き取られる外国貨物(いわゆる輸入取引)を課税の対象としています。
国内において事業者が行う資産の譲渡等とは、事業として対価を得て行われる資産の譲渡及び貸付け並びに役務の提供をいい、このうち消費税法第6条第1項《非課税》の規定により非課税とされるもの以外のものが課税される取引とされています(消法2丸1八、九、4丸1丸2)。
このようなことから、国内取引については、国内において事業者が事業として行う資産の譲渡及び貸付け並びに役務の提供に対して反対給付を受けるものが消費税の課税の対象となるものと理解しており、次のいずれをも満たす取引が消費税の課税の対象となるものと考えます。

  • 丸1 国内において行うものであること
  • 丸2 事業者が事業として行うものであること
  • 丸3 対価を得て行われるものであること
  • 丸4 資産の譲渡、資産の貸付け及び役務の提供であること

 また、「対価を得て行われる資産の譲渡及び貸付け並びに役務の提供」とは、資産の譲渡及び貸付け並びに役務の提供に対して反対給付を受けることと解されています(消基通5-1-2)。

(2) 奨励金、助成金等に係る消費税の取扱い

 消費税法基本通達5-2-15《補助金、奨励金、助成金等》では、事業者が国又は地方公共団体等から受ける奨励金若しくは助成金等又は補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律第2条第1項《定義》に掲げる補助金等のように、特定の政策目的の実現を図るための給付金は、資産の譲渡等の対価に該当しないこととされています。
なお、この規定は、事業者は国又は地方公共団体等から特定の政策目的の実現を図るための奨励金、助成金又は補助金等を受けることがあるが、これらの給付金は、事業者が国等に対して資産の譲渡、資産の貸付け及び役務の提供を行うことの反対給付として受けるものではないのであるから消費税の課税の対象とはならないことを明らかにしているものであると理解しています。

4 照会者の見解となることの理由

(1) 求職者支援法は、上記2の(1)の丸1《求職者支援法》のとおり、特定求職者の就職を促進し、もって特定求職者の職業及び生活の安定に資するという特定の政策目的の実現を図るために制定されたものですから、当該求職者支援法に規定する認定職業訓練は、特定の政策目的を実現するために実施されるものと考えます。そうすると、本件奨励金は、上記2の(3)《本件奨励金の交付等》のとおり、認定職業訓練を実施した訓練実施機関に対して国から給付されるものですから、特定の政策目的の実現を図るための給付金として、一義的には、上記3の(2)《奨励金、助成金等に係る消費税の取扱い》により資産の譲渡等の対価に該当しないものと取り扱うのが相当であると考えます。

(2) 一方で、上記3の(2)《奨励金、助成金等に係る消費税の取扱い》の取扱いは、奨励金、助成金等は一般的に反対給付として受けるものではない、すなわち対価性がないものであることから消費税の課税の対象とならないことを明示しているものであり、また、消費税の課税の対象となるかどうかは名称のみで判断すべきものではありませんから、本件奨励金が消費税の課税の対象となるかどうかは、上記3の(1)《消費税の課税対象》の要件に該当するかどうかも検討し、判断すべきものと考えます。
本件奨励金が消費税の課税の対象となるかどうかは、認定職業訓練は当社が国内において行う役務の提供ですから、本件奨励金が資産の譲渡等の対価に該当するか、すなわち、当該認定職業訓練を行った反対給付として受けるものかどうかにより判断されると考えます。

(3) ところで、事業者が国から当該国が事業主体となる事業の委託を受けて実施する場合に収受する委託料等は、国に対する役務の提供の対価として収受されるものですから、資産の譲渡等の対価に該当すると考えます。
本件奨励金は、国と訓練実施機関との間で収受される金員であるところ、認定職業訓練は、厚生労働大臣が策定した職業訓練実施計画に基づき実施されるものですが、求職者支援法の規定からすると、国を事業主体とするものではなく、民間の訓練実施機関等の理解・協力により実施されるものと考えられます。このことは、上記2の(1)の丸2《職業訓練実施計画》のとおり、平成23年度計画の実施方針及び推進体制において定められた協力体制の内容からもうかがうことができます。
また、認定職業訓練の認定手続きにおいても、当該認定を受けるかどうか、すなわち認定職業訓練を実施するかどうかの判断は事業者に委ねられており、事業者自らが自主的に判断して当該認定を受ける仕組みとされていますから、手続上も国から認定職業訓練の実施を委託されるものではないと解されます。なお、国と訓練実施機関との間では委託契約等の締結も行われません。
このようなことから、認定職業訓練は、訓練実施機関が国からの委託等を受けて実施するものではない、すなわち、認定職業訓練は国に対して行うものではないと考えます。

(4) また、認定職業訓練は、訓練実施機関が特定求職者に対して実施するものですから、その便宜、すなわち役務の提供を受けるのは当該特定求職者であり、本件奨励金は、国が特定求職者に代わって認定実施機関に支払うものとの考えもあります。
しかしながら、本件奨励金は、上記2の(3)《本件奨励金の交付等》のとおり、受講人員等に応じて給付されるものですが、

  • 丸1 認定職業訓練は、無料(教材費等の実費を除く。)で実施されるものですから、特定求職者においては受講料等の支払債務は生じないこと
  • 丸2 本件奨励金の債権債務は、国と訓練実施機関の間の権利義務であり、国と特定求職者の間には何ら権利義務は生じないこと

から、役務の提供を受けた特定求職者に代わって国が訓練実施機関に支払うもの、すなわち訓練実施機関においては、受講料等として国から受領するものとは考えられません。

(5) 以上のことから、本件奨励金は、認定職業訓練を行った反対給付として受けるものではありませんから、資産の譲渡等の対価に該当せず、消費税の課税の対象外(不課税取引)と取り扱われるものと考えます。