1 事前照会の趣旨

 民法第859条の3(成年被後見人の居住用不動産の処分についての許可)には、「成年後見人は、成年被後見人に代わって、その居住の用に供する建物又はその敷地について、売却、賃貸、賃貸借の解除又は抵当権の設定その他これらに準ずる処分をするには、家庭裁判所の許可を得なければならない。」と規定されており、成年後見人が成年被後見人の所有する居住用不動産を売却する場合には、事前に家庭裁判所に対して売却許可申立を行い、売却の許可を得る必要があります。
 ところで、成年後見人が上記の売却許可申立を行うに当たり、当該申立の手続に要した費用がある場合、当該費用は、当該居住用不動産に係る譲渡所得の金額の計算上、譲渡費用に該当すると解して差し支えないでしょうか。

2 事前照会等に係る取引等の事実関係

 甲は、A市に家屋及びその敷地(以下、これらを「本件不動産」といいます。)を所有し、当該家屋に居住していましたが、平成26年2月に体調を崩したことから、A市の総合病院に入院しました。
 甲の息子である乙(甲とは別居)は、甲が100歳と高齢なこともあり、家庭裁判所に対して甲の成年後見人に就任する旨の申請を行ったところ、平成26年4月に甲の成年後見人として乙を選任する旨の審判がなされ、同年5月に当該審判に係る成年後見登記がされました。
 乙は、甲の収入が少ないことや本件不動産以外の資産に乏しく、入院費用等を捻出することが困難な状況であること、また、本件不動産において再び生活を始めることが見込めない状況であることから、本件不動産を売却して今後の入院費用等を捻出することとし、平成26年6月に家庭裁判所に対して本件不動産の処分許可申立(以下「本件許可申立」といいます。)を行いました。
 その後、家庭裁判所から本件不動産の売却を許可する旨の審判がなされたことから、乙は法人Bとの間において正式に本件不動産の売買契約を締結し、本件不動産を法人Bに売却しました。

3 事前照会者の求める見解となることの理由

(1) 法令の規定等
 譲渡所得の金額について、所得税法第33条第3項は、その年中の資産の譲渡による所得に係る総収入金額から当該所得の基因となった資産の取得費及びその資産の譲渡に要した費用の額の合計額を控除し、その残額から譲渡所得の特別控除額を控除した金額とする旨を規定しています。
(2) 資産の譲渡に要した費用の範囲
 所得税法第33条第3項に規定する「資産の譲渡に要した費用」について、所得税基本通達33-7は、具体的な費用を例示した上で「譲渡のために直接要した費用」及び「資産の譲渡価額を増加させるため当該譲渡に際して支出した費用」をいうものと定めています。
(3) 照会の場合
 民法第859条の3の規定によれば、成年後見人が成年被後見人所有の居住用不動産を売却する場合、その売却について家庭裁判所の許可を得なければならないこととされており、当該許可は成年被後見人所有の居住用不動産に関する処分行為の効力要件となりますので、家庭裁判所の許可なくしてなされた成年被後見人所有の居住用不動産の売却は無効なものとなります。
 このことからすれば、本件許可申立は、本件不動産を売却するために必要不可欠なものであったといえることから、本件許可申立の費用は、譲渡のために直接要した費用として本件不動産の譲渡費用に該当すると解して差し支えないものと考えます。

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