1 事前照会の趣旨

特定非営利活動促進法第2条《定義》第2項に規定する特定非営利活動法人である当法人は、A市との間で、家庭における保育が困難な乳幼児を一時的に預かることにより、子育て中の保護者の子育てを支援するとともに、その負担を軽減することにより、乳幼児の健全な育成を図ることを目的として、「A市乳幼児一時預かり事業委託」に関する業務委託契約(以下「本件契約」といいます。)を締結し、A市内において、児童福祉法第6条の3《事業》第7項の規定する「一時預かり事業」を、平成27年7月17日27文科初第238号・雇児発0717第11号文部科学省初等中等教育局長及び厚生労働省雇用均等・児童家庭局長通知「一時預かり事業の実施について」により定められた別紙「一時預かり事業実施要綱」に定める「地域密着U型」の実施方法により、本件契約、「A市乳幼児一時預かり事業委託仕様書」(以下「本件仕様書」といいます。)及び「A市乳幼児一時預かり事業実施要綱」(以下「本件実施要綱」)に基づき実施しています(以下、当法人が実施している事業を「本件事業」といいます。)。
 本件事業に係る当法人の収入は、A市からの業務委託料の受領のほか、利用登録者である乳幼児の保護者が本件事業を利用した際に負担する利用料の受領となりますが、この場合、法人税法上の公益法人等である当法人が行う本件事業は、同法第2条《定義》第13号に規定する収益事業には当たらないと解して差し支えありませんか。
 なお、本照会は、本件事業が本件契約及び本件仕様書の定め並びに本件実施要綱に従って適切に運営されることを前提とします。
 また、一時預かり事業実施要綱では一時預かり事業の実施主体が市町村とされており、A市と当法人が業務委託契約を締結することから、本件事業が事務処理の委託を受けるものであれば収益事業である請負業(法人税法施行令5@十)に当たることになりますが、本照会は、当法人が実質的に事業主体として事業を行うものであることを前提とします。

2 事前照会に係る取引の事実関係

(1) 本件事業の内容

イ 一時預かり業務
  乳幼児の一時預かり(一時保育)業務を行います。併せて、当該一時預かり業務に係る利用者の登録受付業務、利用申請業務及び報告業務を行います。

ロ 子育て支援に係る取組
 上記イの一時預かり業務を行うスペースに隣接するA市が設置した保護者の休憩スペースにおいて、A市が設置した棚にA市が提供する保育に関するチラシ等の補充及びA市が設置した遊具等の管理を行います。
(上記ロの取組は、本件仕様書に記載があるものの、当法人及びA市との間において対価のある業務とされておらず、本照会の内容に含まないことを前提とします。)

(2) 一時預かり事業の地域密着U型について

イ 一時預かり業務
  一時預かり事業とは、家庭において保育を受けることが一時的に困難となった乳幼児について、主として昼間において、保育所、認定こども園その他の場所において、一時的に預かり、必要な保護を行う事業(ただし、特定の乳幼児のみを対象とするものは除かれます。)とされています(児童福祉法6の3F、同法施行規則1の8)。一時預かり事業の開始時には都道府県知事への届出が必要であり、その届出により社会福祉法上の第二種社会福祉事業にも該当することとなります(児童福祉法34の12@、社会福祉法2B二、69@)。
 また、一時預かり事業の実施主体は市町村とされ、市町村は、市町村が認めた者へ委託等を行うことができる旨が定められています(一時預かり事業実施要綱2)。

ロ 地域密着U型
 一時預かり事業の実施方法には、一般型、幼稚園型、余裕活用型、居宅訪問型及び地域密着U型の5種があり、このうち地域密着U型については、要旨、次のとおり定められています(一時預かり事業実施要綱4)。

(イ) 実施場所

  地域子育て支援拠点や駅周辺等利便性の高い場所などで実施するものであること。

(ロ) 設備基準及び保育の内容

  児童福祉法第34条の13《一時預かり事業の基準の遵守》により委任を受けた、同法施行規則第56条《一時預かり事業の基準の特例》第2項第1号、第4号及び第5号に定める設備及び保育の内容に関する基準に準じて、すなわち下記(3)に記載する児童福祉施設の設備及び運営に関する基準(以下「厚労省令」といいます。)第32条《設備の基準》及び第35条《保育の内容》の基準に準じて、必要な設備を設けて事業を行い、食事の提供を行う場合においては、一定の調理機能を有する設備を備えるよう努めること。

(ハ) 職員の配置

  児童福祉法施行規則第56条第2項第2号及び第3号の規定に準じて、すなわち下記(3)イに記載する厚労省令第33条《職員》第2項に準じて、乳幼児の年齢及び人数に応じて担当者を配置すること、担当者の数は2人を下ることはできないこと及び担当者のうち保育について経験豊富な保育士を1名以上配置すること。

(ニ) 研修

  保育士資格を有していない担当者の配置は、市町村が実施する研修を受講・終了することを要件とすること。

(3) 本件事業の実施に当たり準ずることとなる厚労省令について

イ 設備基準及び職員の配置
  厚労省令第32条は、保育所の設備に関する基準を定め、厚労省令第33条第2項は、保育所の保育士の数に関する基準を定めています。
 保育士の数は、乳児おおむね3人につき1人以上、満1歳以上満3歳に満たない幼児おおむね6人につき1人以上、満3歳以上満4歳に満たない幼児おおむね20人につき1人以上、満4歳以上の幼児おおむね30人につき1人以上とし、保育所一につき2人を下ることはできないこととされています。

ロ 保育の内容
 厚労省令第35条は、保育所の保育の内容に関する基準を定めており、保育所における保育の内容は厚生労働大臣が定める保育所保育指針に従うことが定められています。
 同指針第2章においては、「保育の内容」について、「養護と教育が一体となって展開されることに留意する必要がある」とし、ここでいう「『養護』とは、子どもの生命の保持及び情緒の安定を図るために保育士等が行う援助や関わり」であり、また、「『教育』とは、子どもが健やかに成長し、その活動がより豊かに展開されるための発達の援助」であることが定められています。

(4) 本件事業の実施方法

イ 対象
  市内に居住し、主として保育所、幼稚園、認定こども園等に通っていない、又は在籍していない生後6か月から小学校就学前までの乳幼児が対象となります。

ロ 職員の配置
 乳幼児おおむね2人につき1人以上を置き、そのうち保育について経験豊富な保育士を1名以上配置します。保育士資格を有していない者の配置は、A市が認める研修を修了した者となります。また、利用乳幼児数にかかわらず常時少なくとも保育士資格を有する者1人を含む2人以上の職員を配置します。

ハ 定員
 同時に利用できる人数は10人以内です。

ニ 利用料
 事業の利用者から、その利用に関する費用の一部を実費負担として、利用時間1時間につき500円を徴収します。

ホ 施設及び設備の維持、管理等に関する事項
 実施場所全体の施設維持及び管理はA市が行います。

3 事前照会者の求める見解の内容及びその理由

公益法人等が行う保育に係る事業については、原則として、収益事業に該当しないと解されているところ、本件事業は、次の理由から、法人税法施行令第5条《収益事業の範囲》第1項各号に特掲されている34事業のいずれにも該当しないと考えられることから、法人税法第2条第13号に規定する収益事業には当たらないと解されます。

(1) 本件事業と類似する保育事業の取扱いについて
 本件事業は保育事業と類似していると考えられるところ、保育事業が収益事業に該当するか否かについて、国税庁ホームページに掲載されている質疑応答事例等によれば、次のように整理されています。

イ 質疑応答事例「一定の水準を満たすものとして地方公共団体の証明を受けた認可外保育施設において公益法人等が行う育児サービス事業に係る収益事業の判定」
 当該質疑応答事例では、児童福祉法の規定による都道府県知事の認可を受けて設置された認可保育所において行う育児サービス事業(以下「認可保育事業」といいます。)は、保育に必要な施設を有し、保育に関する専門性を有する職員が養護及び教育を一体的に行う事業であることから、法人税法施行令第5条第1項各号に収益事業として特掲されている34事業のいずれにも該当しないものとして取り扱われていることが明らかにされています。
 また、都道府県知事の認可を受けていない認可外保育施設のうち、一定の質を確保し児童の安全を図る目的で定められた監督基準を満たしている認可外保育施設で行われる育児サービス事業(以下「認可外保育事業」といいます。)についても、@認可外保育施設の設備に関する基準、A保育内容に関する基準、B職員による保育及び設備の利用の実態確認を踏まえた上で、一定の水準が確保された認可保育事業に類する育児サービス事業であると認められることから、その認可外保育施設が証明施設であり、監督基準に従って運営されている場合には、認可保育事業と同様に収益事業に該当しないこととして差し支えない旨が明らかにされています。

ロ 平成28年11月7日付東京国税局文書回答「NPO法人が児童福祉法に基づく小規模保育事業の認可を受けて行う保育サービス事業に係る税務上の取扱いについて」
 当該文書回答では、児童福祉法の規定による横浜市長の認可を得て行う家庭的保育事業等のうち小規模保育事業(以下「小規模保育事業」といいます。)は、@事業に従事する者、その員数、その運営に関する事項及びその他の事項ついて、厚労省令に従い又は厚労省令で定める基準を参酌して定められた条例の基準に適合するものであること、A保育の内容は、厚生労働大臣が定める保育所保育指針に準じた保育を提供しなければならないとされていることを踏まえた上で、専門性を有する職員が安全かつ衛生的な環境において、保育所保育指針に準じた養護及び教育を一体的に行うことが制度的に担保されているため、認可保育事業と同様の性質を有する事業であると認められることから、法人税法施行令第5条第1項各号に収益事業として特掲されている34事業のいずれにも該当しないとする照会者の見解に対して、照会に係る事実関係を前提とする限り、照会者の意見のとおりで差し支えない旨が回答されています。

(2) 本件事業の収益事業該当性について
 上記(1)の質疑応答事例及び文書回答では、認可保育事業は、保育に必要な施設を有し、保育に関する専門性を有する職員が養護及び教育を一体的に行う事業であることから、また、認可外保育事業及び小規模保育事業については、「設備」、「職員の配置」及び「保育の内容」に関する基準と制度内容を踏まえ、いずれも法人税法施行令第5条第1項各号に収益事業として特掲されている34事業のいずれにも該当しないこととされています。
 本件事業は、上記1並びに2(2)及び(3)のとおり、児童福祉法に規定する一時預かり事業の地域密着U型として、同法施行規則第56条第2項各号に定めるところにより保育所の設備及び運営の基準に準じて実施されます。具体的には、「設備」の基準については厚労省令第32条の規定に準じることとされ、「職員の配置」の基準については厚労省令第33条第2項の規定に準じて担当者を配置するとともに、保育について経験豊富な保育士を1名以上配置することとされています。加えて、「保育の内容」については厚労省令第35条の規定に準じて保育所保育指針に従うことが定められており、同指針において、養護と教育が一体となって展開されることに留意する必要がある旨が定められています。
 これらのことを踏まえると、本件事業は、専門性を有する職員が安全かつ衛生的な環境で、保育所保育指針で定める養護及び教育が一体的に実施されることが制度的に担保されており、認可保育事業と同様の性質の事業を行っていると認められるため、法人税法施行令第5条第1項各号に特掲されている34事業のいずれにも該当しないことから、法人税法第2条第13号に規定する収益事業には当たらないと解されます。