1 照会の趣旨

事業主は、障害者の雇用の促進等に関する法律(以下「障害者雇用促進法」といいます。)により、雇用する労働者数の一定割合(法定雇用率)の人数(法定雇用障害者数)以上の障害者を雇用しなければならないとされており、法定雇用率を達成した事業主には障害者雇用調整金(以下「調整金」といいます。)が支給され、他方、これを達成していない事業主は障害者雇用納付金(以下「納付金」といいます。)を納付することとされています。
 この法定雇用率を達成しているかどうかは、原則として、個々の事業主ごとに判定されますが、事業主(親事業主)が障害者の雇用に特別の配慮をした子会社(特例子会社)や特例子会社と一定の関係のある子会社(関係会社)を有する場合には、厚生労働大臣の認定に基づき、親事業主、特例子会社及び関係会社をグループとして(親事業主のみが労働者を雇用するものとみなして)、そのグループ全体で法定雇用率を達成しているかどうかの判定をすることができる制度が設けられています(以下、この制度を「特例子会社等制度」といいます。)。
 今般、特例子会社等制度の適用を受けて親事業主となった当社は、法定雇用率を達成したことから、調整金の支給を受けることになりました。
 この場合、当社が受領する調整金については、その全額を当社の益金の額に算入することになると解してよろしいか照会します。また、これに当たって、グループ内の各社から当社に対する寄附金の支出があったものとはされないと解してよろしいか照会します。
 なお、今後、法定雇用率を達成できない事態が生じた場合には、特例子会社等制度においても当社が納付金を納付することになりますが、当該納付金については、その全額を当社の損金の額に算入することになると解してよろしいか照会します。

2 照会に係る取引等の事実関係

(1) 障害者雇用促進法の概要

イ 全ての事業主は、対象障害者(身体障害者、知的障害者又は精神障害者)の雇用に関し、社会連帯の理念に基づき、適当な雇用の場を与える共同の責務を有するものであって、進んでその雇入れに努めなければならない(第37条)。

ロ 労働者を雇用する事業主は、常時雇用する労働者の雇入れ及び解雇がある場合には、その雇用する対象障害者である労働者の数が法定雇用障害者数(その雇用する労働者の数に法定雇用率を乗じて得た数)以上であるようにしなければならない(第43条)。

ハ 特例子会社とは、事業主(親事業主)に意思決定機関を支配されている株式会社であって、親事業主との人的関係が緊密であり、一定割合以上の対象障害者を雇用していること等の要件を満たすことについて厚生労働大臣の認定を受けたものをいい、特例子会社が雇用する労働者は当該親事業主のみが雇用する労働者と、当該特例子会社の事業所は当該親事業主の事業所とみなす(第44条)。

ニ 関係会社とは、親事業主に意思決定機関を支配されている株式会社(特例子会社を除く。)であって、その行う事業と特例子会社の事業との人的関係又は営業上の関係が緊密であること等の要件を満たすことについて厚生労働大臣の認定を受けたものをいい、関係会社が雇用する労働者は親事業主のみが雇用する労働者と、当該関係会社の事業所は当該親事業主の事業所とみなす(第45条)。

ホ 独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構(以下「機構」といいます。)は、各年度(4月1日〜3月31日)ごとに、常用雇用労働者の総数が100人を超える事業主であって、法定雇用率を達成したものに対して、所定の計算式により算出された金額を調整金として支給する(第50条第1項、附則第4条)。また、機構は、特例子会社等制度の適用を受けている親事業主、特例子会社又は関係会社に対して、調整金の額を分割して支給することができる(第50条第5項)。

ヘ 機構は、調整金の支給等に要する費用に充てるため、事業主から、毎年度、納付金を徴収する。また、事業主は、納付金を納付する義務を負う(第53条)。

ト 常用雇用労働者の総数が100人を超える事業主であって、法定雇用率を達成できなかったものは、所定の計算式により算出された金額を納付金として納付する(第54〜56条、附則第4条)。

(2) 当社を含むグループ会社の概要

  当社は傘下企業に対して経営指導等を行う持株会社であり、常用雇用労働者が100人以下の事業主ですが、子会社にA社、B社、C社及びD社(いずれも常用雇用労働者が100人を超える事業主であり、以下、これらの会社を「関係会社各社」といいます。)を有しています。
 今般、新たに子会社(以下「E社」といいます。)を設立し、E社が上記(1)ハの特例子会社の認定を受けるとともに、関係会社各社についても上記(1)ニの関係会社の認定を受け、当社は親事業主に該当することになりました。
 これによって、当社、特例子会社であるE社及び関係会社各社の計6社のグループとして法定雇用率を達成したことから、当社は機構から調整金の支給を受けることになりました。
 なお、今後、グループとして法定雇用率を達成できない事態が生じた場合には、当社が機構に対して納付金を納付することになります。

3 事前照会者の求める見解となる理由

障害者雇用促進法においては、上記2(1)イ及びロのとおり、対象障害者を雇用する義務を負うのは事業主とされ、上記2(1)ホのとおり、機構は、法定雇用率を達成した事業主に対して調整金を支給することとされています。
 また、特例子会社等制度においては、上記2(1)ハ及びニのとおり、特例子会社及び関係会社が雇用する労働者は親事業主の労働者と、特例子会社及び関係会社の事業所は親事業主の事業所とみなすこととされていますので、当該制度を適用する場合には、上記2(1)ホのとおり、機構は、原則として親事業主に対して調整金を支給することとなります。このことからすれば、当該制度における対象障害者の雇用義務や調整金の支給を受ける権利は、親事業主にあると考えられます。
 なお、このように特例子会社等制度において調整金の支給が原則として親事業主に対して行われる理由としては、親事業主は、障害者の雇用の促進及び安定を図るためにグループ全体の障害者雇用計画の策定や障害者雇用に伴う業務体制の見直し等を行うとともに、調整金の申請や納付金の申告に係る諸手続きを行うなど、グループ全体の障害者雇用に関して主導的な役割を担っていること等が考えられます。
 この点、当社は傘下企業を統括する持株会社として、障害者雇用をグループ全体の課題として捉え、グループ全体で障害者の雇用の促進及び安定を図るという社会的責務を果たすべく、障害者の社会進出の場を創出するためにE社を設立するとともに、E社と営業上の関係を有する関係会社各社を含めて厚生労働大臣の認定を受けるための手続きを行うなど、グループ全体の障害者雇用に関して主導的な役割を担っていますので、原則どおり、親事業主である当社が調整金の支給を受けることとしています。
 他方で、実際に障害者を多く雇用しているE社や営業上の関係等によりその雇用に貢献している関係会社各社において、障害者の雇用に係る費用が生じていることに鑑みると、これらの会社が調整金の支給を受けるべきという考え方もあり、上記2(1)ホのとおり、制度上もグループ内の各社で分割して調整金の支給を受けることができることとされているところです。
 この考え方については、特例子会社等制度において、親事業主、特例子会社及び関係会社を1つのグループとみて(特例子会社及び関係会社が雇用する労働者を親事業主のみが雇用する労働者とみなして)グループ全体で調整金の算定を行うこととされ、上記のとおり、調整金の支給を受けるのは原則として親事業主とされていることからすれば、当社が調整金の支給を受けたとしても、他の会社(E社又は関係会社各社)から当社に対する経済的な利益の無償の供与があったものとはされず、グループ内において寄附金課税の問題は生じないと考えます。
 以上のことから、当社が機構から支給を受ける調整金については、その全額を当社の益金の額に算入することが相当であると考えます。
 なお、今後、グループとして法定雇用率を達成できず、当社が機構に納付金を納付するような事態が生じた場合においても、上記と同様に、その全額を当社の損金の額に算入することが相当であると考えます。

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