当財団は、現在、個人事業主又は中小企業を対象として広く会員を募集し、会員から徴収する会費によって、会員に対し災害補償共済をはじめとした、災害防止、福利厚生に係るサービスの提供を行う事業を行っている特例民法法人(一般財団法人への移行を申請中)です。
このたび、保険業法の改正に伴い、当財団は認可特定保険業者への移行に係る認可を受けることとなり、特例民法法人から一般財団法人となり認可特定保険業者へと移行した後は、従来行っていた災害補償共済を事業総合傷害保険(以下「本件傷害保険」といいます。)へと変更した上で、従来と同様の事業を改めて行うことを予定しています。
当財団が認可特定保険業者へ移行後、当財団の会員(以下「本件会員」といいます。)が支払う会費(以下「本件会費」といいます。)及び本件傷害保険に基づき給付を受ける保険金(以下「本件保険金」といいます。)に係る所得税法及び法人税法の取扱いについては、下表のとおり取り扱ってよいか照会します。
本件傷害保険の契約者 | 本件傷害保険の被保険者 | 本件会費の取扱い | 本件保険金の支払事由 | 本件保険金の受取人 | 本件保険金の取扱い |
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個人事業主 | 個人事業主 | 全額必要経費 | 傷害 | 個人事業主 | 非課税 |
死亡 | 遺族 | 遺族の一時所得 | |||
事業専従者 | 傷害 | 個人事業主 | 非課税 | ||
死亡 | 個人事業主 | 一時所得 | |||
従業員 | 傷害 | 個人事業主 | 事業所得 | ||
死亡 | 個人事業主 | 事業所得 | |||
法人 | 役員・従業員 | 全額損金 | 傷害 | 法人 | 益金 |
死亡 |
認可特定保険業者へと移行後、当財団は、中小企業に係る本件傷害保険を実施するとともに、災害防止活動を促進し、福利厚生、労働条件の改善及び国際化等に対応した人材の育成を図る事業に対する援助を実施し、もって中小企業の健全な発展と福祉の増進に寄与することを目的として事業を行うこととしています。
具体的には、当財団は、本件会員から徴収した本件会費を基に、本件会員に対し、主に以下のサービスの提供を行うこととしています。
個人事業主又は法人を保険契約者及び保険金受取人とし、個人事業主、役員、従業員及び当該個人事業主と生計を一にし事業に専従する親族(以下「事業専従者」といいます。)を被保険者とする保険期間が1年間の傷害保険であり、以下の内容を補償するものです。
なお、本件傷害保険に係る保険料相当額は、その全額が掛捨てで、剰余金の分配や解約返戻金は生じません。
また、本照会では、保険契約者である本件会員は、役員や事業専従者を含む従業員等の全てについて、同様の条件により、本件傷害保険の被保険者とすること、
従業員等の退職金や見舞金等の資金の確保を本件傷害保険の加入目的とすることを照会の前提としています。
被保険者が、急激かつ偶然な外来の事故によって身体の傷害を被り、その直接の結果として、死亡した場合に、死亡保険金(1,000万円〜2,000万円)を支払います。
ただし、個人事業主が自己を被保険者として死亡した場合に支払われる死亡保険金は、当財団の定める約款に規定する次の受給順位に従い、その遺族に支払います。
業務上の事故を防止し、職場の安全衛生化の向上を進めるため、本件会員が当財団の指定する特定の機械・設備等を購入した場合、その購入費用につき所定の助成金を支払います。
また、安全衛生・健康づくりに関する教材の配付や各種セミナーを開催します。
本件会員の従業員等が、人間ドック・定期健康診断を受診した場合には、当財団は、本件会員に対し受診費用について所定の補助金を支払います。
また、本件会員の従業員等は、心と身体に関する健康相談や当財団を通じて契約施設を利用した場合に、その利用料金につき所定の割引が受けられます。
当財団は、本件会員を含む従業員等1人当たり月額2,000円の本件会費を本件会員から徴収し、当財団が提供する上記(1)に掲げる事業の原資としています。
なお、本件会費は、全額本件会員が負担することとなります。
また、当財団は、認可特定保険業者への移行に伴い、本件会費のうち本件傷害保険に係る保険料相当額を明示することを求められているところ、当該保険料相当額(以下「本件保険料相当額」といいます。)は、1,700円であることを照会の前提としています。
上記2(1)のとおり、当財団のサービスは、中小企業、個人事業主及びこれらの従業員等に対して災害防止や福利厚生等を目的として提供されるものであり、例えば、従業員等に不慮の事故があった場合には本件保険金を従業員の死亡や傷害等に伴う退職金や見舞金等の原資とするなど、本件会費はその全額が事業遂行上必要なものとして、事業所得の金額の計算上必要経費に算入されるものと考えられます。
なお、本件会費のうち、被保険者が個人事業主本人又は事業専従者である場合における本件保険料相当額については、家事上の経費との疑義も生じますが、そもそも個人事業主が本件会員にならなければ従業員は当財団のサービスの提供を受けられないこと、事業専従者は他の従業員と同様の条件により加入していることなどからすれば、事業遂行上必要なものと考えられます。
被保険者である個人事業主が死亡した場合に支払われる死亡保険金は、約款の定めるところにより、その遺族に支払われるものであるところ、その支払の範囲及び順序について、民法の規定する相続人の範囲及び順位決定の原則とは異なった定め方をしているのは、遺族は、個人事業主の死亡により当該死亡保険金の支払を請求する権利を自己の固有の権利として取得するためです。そして、当該死亡保険金の支払を請求する権利を取得した者は、その権利を行使することにより当該死亡保険金の支払を受けることとなりますので、当該死亡保険金の支払を請求する権利及びその行使により支払を受ける死亡保険金は、いずれも当該個人事業主の相続における本来の相続財産には該当しません。
また、本件傷害保険に係る契約は、相続税法第3条《相続又は遺贈により取得したものとみなす場合》第1項第1号及び相続税法施行令第1条の2《生命保険契約等の範囲》第2項に規定するいずれの契約にも該当しないことからすれば、当該死亡保険金は、みなし相続財産にも該当せず、当該遺族の一時所得に該当すると考えます(所得税法34)。
損害保険契約に基づく保険金で、身体の傷害に基因して支払を受けるものは、非課税とされています(所得税法9十七、所得税法施行令30一)。
したがって、被保険者が個人事業主である上記2(1)イの(ロ)ないし(ホ)に掲げる後遺障害、入院、通院及び往診保険金(以下「傷害保険金」といいます。)について、個人事業主本人が受け取った場合は、非課税になると考えます。
また、被保険者が事業専従者である傷害保険金について、個人事業主が受け取った場合であっても、所得税基本通達9−20《身体に傷害を受けた者以外の者が支払を受ける傷害保険金等》の定めにより、非課税として取り扱うことが相当と考えます。