別紙

1 事前照会の趣旨及び取引等の事実関係

(1) 当社は、就業規則において、従業員は定年年齢に達した日以降最初に到来する3月末日又は9月末日のいずれか早い日まで勤務することができることとしているところ、今般、就業規則を改正し、その定年年齢を満60歳から満65歳に延長しました。

(2) 当社の退職金制度は、退職金支給規則に基づく企業内退職金制度(以下、かかる制度により支給される退職金を「企業内退職金」といいます。)と規約型確定給付企業年金規約に基づく退職金制度(以下「DB制度」といいます。)があります。

(3) 就業規則改正以前に入社した従業員(以下「本件従業員」といいます。)は、満60歳に達した日以降最初に到来する3月末日又は9月末日のいずれか早い日に企業内退職金の打切支給を受けます(企業内退職金は、退職に準じた事実等が生じたことを給付事由として、当社から所得税基本通達30−2《引き続き勤務する者に支払われる給与で退職手当等にするもの》(5)に掲げる退職手当等として支払われるものであることを照会の前提とします。)。

(4) 本件従業員は、DB制度において、満60歳に達した日の前日に老齢給付金の支給要件を満たし、満60歳に達した日以降最初に到来する3月末日又は9月末日のいずれか早い日に加入者の資格を喪失するところ、その老齢給付金の年金の支給期間は、加入者の資格を喪失した日の属する月の翌月から始まりますが、老齢給付金の支給を請求していない場合は、実施事業所に使用されなくなる日(退職の日)の属する月まで老齢給付金の支給を繰り下げることが可能です。
 また、老齢給付金の支給を繰り下げた場合、その繰下げ期間中に老齢給付金の全部又は一部を一時金として支給することを請求することができます(以下、かかる一時金として支給を受けることとなる老齢給付金を「DB一時金」といいます。)。

(5) DB一時金は、その支給割合(老齢給付金のうちDB一時金として支給を受ける割合)を、1100%、275%、350%又は425%の中から選択することができます(既に275%、350%又は425%の割合を選択した者が再度DB一時金を請求することも可能ですが、その場合、残りの老齢給付金の100%の支給割合によることとされています。)。

(6) 本件従業員が、DB制度における老齢給付金の支給を退職の日の属する月まで繰り下げた場合において、退職の日より前に老齢給付金の裁定の請求をして支給を受ける次のDB一時金は、いずれも退職所得として取り扱って差し支えないか照会いたします。

イ 100%の支給割合により支給を受けるDB一時金(以下「DB全部一時金」といいます。)

ロ 25%の支給割合により支給を受けるDB一時金(以下「DB25%一時金」といいます。)及びその後、再度の請求に基づいて、残りの老齢給付金の100%の支給割合により支給を受けるDB一時金(以下「DB75%一時金」といいます。)

2 事実関係に対して事前照会者の求める見解となることの理由

(1) 法令等について

イ 所得税法第30条《退職所得》第1項は、退職所得とは、退職手当、一時恩給その他の退職により一時に受ける給与及びこれらの性質を有する給与(以下「退職手当等」といいます。)に係る所得をいう旨規定しています。

ロ 所得税法第31条《退職手当等とみなす一時金》第3号は、確定給付企業年金法の規定に基づいて支給を受ける一時金で加入者の退職により支払われるものは、退職手当等とみなす旨規定しています。

ハ 所得税基本通達31−1《確定給付企業年金法等の規定に基づいて支払われる一時金》(1)においては、確定給付企業年金規約に基づいて支給される年金の受給資格者に対し、当該年金に代えて支払われる一時金のうち、退職の日以後当該年金の受給開始日までの間に支払われるもの(年金の受給開始日後に支払われる一時金のうち、将来の年金給付の総額に代えて支払われるものを含む。)は退職所得として取り扱われています。

ニ 所得税基本通達31−1(3)においては、確定給付企業年金規約の加入者に対し、同通達30−2(5)に掲げる退職に準じた事実等(労働協約等を改正していわゆる定年を延長した場合)が生じたことに伴い加入者としての資格を喪失したことを給付事由として支払われる一時金(当該事実等が生じたことを給付事由として、使用者から同通達30−2(5)に掲げる退職手当等が支払われる場合に限る。)は退職所得として取り扱われています。

ホ 所得税法施行令第77条《退職所得の収入の時期》は、居住者が一の勤務先を退職することにより二以上の退職手当等の支払を受ける権利を有することとなる場合には、その者の支払を受ける当該退職手当等については、これらのうち最初に支払を受けるべきものの支払を受けるべき日の属する年における収入金額として所得税法第30条の規定を適用する旨規定しています。

(2) DB全部一時金の所得区分
 所得税基本通達31−1(1)の趣旨は、退職の日以後、年金支払開始日以前に支払われる一時金については、退職という事実があり、本来の退職一時金とその実質においては同様と認められることから、退職所得とするというものであると考えられます。
 また、所得税基本通達31−1(3)の趣旨は、いわゆる打切支給の退職金についても一定の条件の下に退職所得として取り扱っていることから、外部拠出の確定給付企業年金等から支給されるものについても、これと同様の事実等が生じたことにより、会社からも打切支給の退職金が支払われたことに併せて支給される一時金については、退職所得として取り扱うものであると考えられます。
 この点、DB全部一時金の次のような特徴を踏まえ、上記の所得税基本通達31−1(1)及び(3)の趣旨に照らし合わせると、DB全部一時金は、これらの取扱いに準じて、退職所得と取り扱って差し支えないと考えます。

イ DB全部一時金は、本件従業員の退職の日より前に支給を受けるものであるため、所得税基本通達31−1(1)に掲げる一時金のように、退職の日以後に支払われるものではありませんが、本件従業員には同通達30−2(5)に掲げる退職に準じた事実等が生じており、DB全部一時金は、その事実等が生じた日以後、老齢給付金の繰下げ期間(年金の受給開始日前)において老齢給付金の年金に代えて一時金として支給を受けるものであること(上記1(3)及び(4))。

ロ DB全部一時金は、加入者としての資格を喪失した本件従業員が退職の日の属する月まで老齢給付金の支給を繰り下げた上で、その後、老齢給付金の全部を一時金として支給することを請求することにより支給を受けるものであるため(上記1(4)及び(5))、所得税基本通達31−1(3)に掲げる一時金のように、同通達30−2(5)に掲げる退職に準じた事実等が生じたことに伴い加入者としての資格を喪失したことを給付事由として支払われる一時金に該当せず、同様の事実等が生じたことにより企業内退職金が支払われたことに併せて支給されるものではありませんが、当該企業内退職金が支払われた上で、外部拠出の確定給付企業年金から支給されるものであり、かつ、当該退職に準じた事実等が生じたことに伴い加入者としての資格を喪失した者に対して支払われるものであること(上記1(3)及び(4))。
 なお、DB全部一時金の収入計上時期は、所得税法施行令第77条の規定(上記(1)ホ)により、企業内退職金の収入計上時期と同じ年分になると考えます。

(3) DB25%一時金及びDB75%一時金の所得区分
 DB25%一時金は、上記(2)と同じ理由により、DB全部一時金と同様、所得税基本通達31−1(1)及び(3)の取扱いに準じて、退職所得と取り扱って差し支えないと考えます。
 また、DB75%一時金は、DB25%一時金が支払われた後に支払われるものですが、DB25%一時金が支給された後も老齢給付金の繰下げ期間において年金の支給は開始されていませんので(上記1(4)及び(5))、DB25%一時金と同様に、退職所得と取り扱って差し支えないと考えます。
 なお、DB25%一時金及びDB75%一時金の各収入計上時期は、所得税法施行令第77条の規定(上記(1)ホ)により、いずれも企業内退職金の収入計上時期と同じ年分になると考えます。

←上記照会の内容に対する回答はこちら