別紙

1 事前照会の趣旨

当社は、居住者であるプロテニス選手甲と専属契約を締結し、毎月、甲に対し、各種大会に当社の契約選手として出場すること等に対する報酬(以下「本件報酬」といいます。)を支払うこととしています。
 また、当社は、本件報酬の支払に際し、甲からの請求書の受領に代えて、甲に対し、次のことを記載した報酬明細書(以下「本件明細書」といいます。)を交付する予定です。

(1) 1消費税及び地方消費税(以下「消費税等」といいます。)を含めた本件報酬に係る総額(以下「本件報酬の総額」といいます。)及び2内書として消費税等の額

(2) 本件明細書の送付後、7日以内に誤りのある旨の連絡がない場合、甲が本件明細書の記載内容のとおりであると確認したものとみなすこと。

ところで、平成元年1月30日付直法6−1「消費税法等の施行に伴う源泉所得税の取扱いについて」(以下「本件個別通達」といいます。)では、「所得税法第204条《源泉徴収義務》第1項の規定が適用される報酬・料金等が支払われる場合において、当該報酬・料金等が消費税法第28条《課税標準》に規定する消費税の課税標準たる課税資産の譲渡等の対価の額にも該当するときの源泉徴収の対象とする金額は、原則として、消費税等の額を含めた金額となるが、報酬・料金等の支払を受ける者からの請求書等において報酬・料金等の額と消費税等の額が明確に区分されている場合には、当該報酬・料金等の額を源泉徴収の対象とする金額として差し支えない」とされています。
 本件個別通達では、1本件報酬の支払者である当社がその支払を受ける者である甲に交付する本件明細書が、上記の「報酬・料金等の支払を受ける者からの請求書等」に該当するか及び2本件明細書のように、本件報酬の総額を記載し、かつ、消費税等の額を内書により記載することが、上記の「報酬・料金等の額と消費税等の額が明確に区分されている」といえるかについては、明らかになっておりません。
 そこで、以下の事実関係の下で、本件報酬の支払に際して当社が本件明細書を甲に交付する場合、当社が甲に支払う本件報酬については、本件報酬の総額から消費税等の額を控除した金額(以下「本件報酬の額」といいます。)を源泉徴収の対象とする金額として差し支えないか照会いたします。
 なお、本照会は、本件報酬が消費税法第28条に規定する課税資産の譲渡等の対価の額に該当することを前提とします。

2 事前照会に係る取引等の事実関係

(1) 当社と甲が締結する専属契約に係る契約書には、要旨次のとおり記載されています。

イ 甲は、各種国内テニス大会に当社の契約選手として出場する等の義務を負う。

ロ 当社は、毎月、甲に対し、上記イに対する報酬の額を支払う。

(2) 当社は、本件報酬の支払に際し、甲に対して本件明細書を交付します。
 なお、甲は、本件報酬の支払に関する請求書や領収証を発行しません。

(3) 本件明細書には、要旨次のとおり記載されています。なお、金額は例示です。

(単位:円)

項目 金額 内 消費税及び地方消費税の額 備考
本件報酬の総額(A) 1,100,000 100,000
所得税及び復興特別所得税の額(B) 102,100 (本件報酬の総額 − 消費税等の額)× 10.21%
支払額(A−B) 997,900

なお、送付後、7日以内に誤りのある旨の連絡がない場合、記載内容のとおり確認があったものとみなす。

(4) 当社は、甲に対し、本件明細書を初めて交付する際に、1「備考」欄(上記(3)参照)にある「(本件報酬の総額 − 消費税等の額)× 10.21%」により計算した所得税及び復興特別所得税(以下「所得税等」といいます。)を源泉徴収することや、2「送付後、7日以内に誤りのある旨の連絡がない場合、記載内容のとおり確認があったものとみなす」(上記(3)参照)こと、3今後も本件報酬の支払に際して本件明細書を交付することについて、口頭などの方法による説明(以下「本件説明」といいます。)を行い、甲からその説明内容について了解を得ることとしています。
 また、当社は、本件説明の際に使用した本件明細書の当社控え等に本件説明を行った旨及び甲がその説明内容について了解した旨を記載するなどの方法により、その経緯を記録に残します。

3 事実関係に対して事前照会者の求める見解となることの理由

(1) 本件報酬について
 本件報酬は、甲が各種国内テニス大会に当社の契約選手として出場すること等に対する報酬であることから(上記2(1))、所得税法第204条第1項及び所得税法施行令第320条《報酬、料金、契約金又は賞金に係る源泉徴収》第3項に規定するプロテニスの選手の業務に関する報酬に該当すると考えます。

(2) 本件個別通達について
 本件個別通達においては、所得税法第204条第1項の規定が適用される報酬・料金等が支払われる場合において、当該報酬・料金等が消費税法第28条に規定する課税資産の譲渡等の対価の額にも該当するときの源泉徴収の対象とする金額は、原則として、消費税等の額を含めた金額とし、ただし、報酬・料金等の支払を受ける者からの請求書等において報酬・料金等の額と消費税等の額が明確に区分されている場合には、当該報酬・料金等の額を源泉徴収の対象とする金額として差し支えない旨定めています。

(3) 本件への当てはめ
 本件明細書においては、本件報酬の総額及び内書として消費税等の額は記載されていますが、本件報酬の額については記載されていません。しかしながら、少なくとも、本件報酬の総額と消費税等の額は明記されることに加え、本件報酬に係る所得税等の額について、「(本件報酬の総額 − 消費税等の額)× 10.21%」により計算することが本件明細書の「備考」欄に記載されることから(上記2(3))、本件報酬の額は本件報酬の総額から消費税等の額を控除した金額として計算するものであることが分かりますので、本件明細書においては「報酬・料金等の額と消費税等の額が明確に区分されている」と考えられます。
 また、本件明細書は、当社(本件報酬の支払をする者)が甲(その支払を受ける者)に対して交付する書類であることから(上記2(2))、「その支払を受ける者から交付される請求書」には直ちに該当するとはいえないものとも考えられます。しかしながら、上記2(4)のとおり、1本件明細書の「備考」欄において、「(本件報酬の総額 − 消費税等の額)× 10.21%」により計算した所得税等を源泉徴収することを明記し、更に2本件明細書の「送付後、7日以内に誤りのある旨の連絡がない場合、記載内容のとおり確認があったものとみなす」ことについて甲の了解を得ることとしていることを踏まえると、本件明細書は「支払を受ける者からの請求書等」と同様に取り扱って差し支えないと考えられます。
 したがって、上記事実関係の下で当社が甲に支払う本件報酬については、本件報酬の額を源泉徴収の対象とする金額として差し支えないと考えます。