別紙

1 事前照会の趣旨及び取引等の事実関係

当社は、会社法の規定(下記2(2)参照)に基づき、当社の発行する譲渡制限株式を取得した内国法人(以下、「本件取得者」といい、本件取得者が取得した譲渡制限株式を「本件譲渡制限株式」といいます。)に対し、その取得に係る承認請求を承認せず、本件譲渡制限株式を買い取ることとしました(このことを、以下「本件取得」といいます。)。
 そして、当社は、会社法に定められた金額を供託(この供託した金銭を、以下「本件供託金」といいます。)するとともに本件取得者に当該供託を証する書面を交付し、本件譲渡制限株式の全てを買い取る旨通知しました。
 その後、当社は、裁判所に対して本件譲渡制限株式に係る売買価格(以下「本件売買価格」といいます。)の決定の申立てを行ったため、今後、本件売買価格は、裁判所の決定により確定することとなりますが、本件売買価格が当社の資本金等の額のうち本件譲渡制限株式に対応する部分の金額を超える場合には、その超える部分の金額は、「みなし配当」(所法251五)に該当します。
 そうすると、本件取得者が、裁判所による本件売買価格の決定後に、本件供託金の還付請求により本件売買価格に応じて本件供託金の全部又は一部を受け取る場合(供託法8)においても、当社は、このみなし配当に係る源泉徴収義務を負うものと考えます。
 そこで、本件取得により生じるみなし配当に係る源泉所得税の納期限について、次のとおりと解してよろしいか照会します。

(1) 裁判所による本件売買価格の決定金額が本件供託金の額以下の場合

  裁判所の決定により「売買価格が確定したとき」の属する月の翌月10日

(2) 裁判所による本件売買価格の決定金額が本件供託金の額を超える場合

  • イ 本件供託金の額に係る部分については、上記(1)と同様
  • ロ 当該超える部分の額(差額)に係る部分については、当該差額を支払う日の属する月の翌月10日

(徴収すべき税額の計算例)

区分 支払額(うちみなし配当の額) 徴収すべき税額
合計 120(60) 12
1価格決定時
2差額の支払時
90(45)
30(15)
12×45/60=9
12×15/60=3

(注)「徴収すべき税額」は所得税と復興特別所得税の合計額です。

2 事前照会者の求める見解となることの理由

(1) 法人の配当等に係る所得に関する源泉徴収義務について

  内国法人に対し国内において所得税法第24条《配当所得》第1項に規定する配当等の支払をする者は、その支払の際、当該配当等について所得税を徴収し、その徴収の日の属する月の翌月10日までに、国に納付しなければならないこととされています(所法174二、2123)。
 また、上記「支払の際」の支払には、現実に金銭を交付する行為のほか、元本に繰り入れ又は預金口座に振り替えるなどその支払の債務が消滅する一切の行為が含まれることとされています(所基通181〜223共-1)。
 なお、支給総額が確定している給与等を分割して支払う場合の各支払の際徴収すべき税額は、当該確定している支給総額に対する税額を各回の支払額にあん分して計算するものとされています(所基通183〜193共-1)。

(2) 譲渡制限株式の買取りにおける売買価格の確定等について

  株式会社が、会社法第140条《株式会社又は指定買取人による買取り》第1項の規定に基づきその発行する譲渡制限株式を自ら買い取る場合においては、当該譲渡制限株式の譲渡等に係る承認請求をした者に対して1対象となる株式を買い取る旨及び2対象となる株式の数を通知することとされ、この通知をしようとするときは、当該株式会社は、一株当たりの純資産額として法務省令で定める方法により算定される金額に当該譲渡制限株式の数を乗じて得た金額を供託所に供託し、かつ、当該承認請求をした者に当該供託を証する書面を交付することとされています(会社法14112)。
 この通知があった場合、買い取る譲渡制限株式に係る売買価格について、株式会社は、裁判所に対して売買価格決定の申立てができることとされ、その後、裁判所により価格が決定されたときに当該譲渡制限株式に係る売買価格が確定するとされています(会社法14424)。
 そして、売買価格が確定したときは、株式会社は、供託した金銭に相当する額を限度として、売買代金の全部又は一部を支払ったものとみなされます(会社法1446)。
 また、供託金の額が売買価格に満たない場合には、株式会社は、その差額を支払うこととなります。

(3) 本件取得の対価を供託した場合のみなし配当に係る源泉所得税の納期限について

  上記(1)のとおり、所得税法上、源泉徴収義務が生じることとなる「支払の際」の支払には、その支払の債務が消滅する一切の行為が含まれることとされています。
 また、上記(2)のとおり、会社法上、株式会社がその発行する譲渡制限株式を自ら買い取る場合でその売買価格が確定したときには、供託された金銭に相当する額を限度として、当該株式会社は売買代金の全部又は一部を支払ったものとみなされることからすると、当該株式会社は、売買価格が確定した時に、代金支払義務の全部又は一部を履行したこととなります。
 そうすると、本件取得においては、裁判所の決定により本件売買価格が確定した時に、当社は、本件供託金の額を限度として本件譲渡制限株式の売買代金の全部又は一部を支払ったものとみなされ、当社の本件取得者への支払債務(代金支払義務)の全部又は一部が消滅する(履行される)こととなります。
 そして、裁判所の決定により本件売買価格が確定した時に、本件供託金の額のうちのみなし配当の額に係る支払債務も消滅したこととなることから、みなし配当に係る源泉所得税の納期限については、上記1(1)及び(2)のとおりと考えます。
 なお、裁判所により決定された本件売買価格が本件供託金の額を超える場合、本件供託金の額及び当該超える部分の額のうちのそれぞれのみなし配当の額に係る源泉所得税の額については、支給総額が確定している給与等を分割して支払う場合の税額の計算の取扱い(所基通183〜193共-1)に準じ、上記1(2)のとおり算出して差し支えないと考えます。