別紙

1 事前照会の趣旨

当社は、所定の期間、当社において勤務した者に対する永年勤続表彰に当たり、記念品として旅行券を支給しています(この旅行券を以下「本件旅行券」といいます。)。
 これまで、当社は、本件旅行券の支給対象者(以下「表彰者」といいます。)が本件旅行券の支給から1年以内の期間に、本件旅行券を使用し当社へ報告した場合には、本件旅行券の支給により表彰者に生ずる経済的利益について課税を要しないものとして取り扱ってきました(以下、この期間を「本件報告期間」といいます。)。
 今般、当社は、新型コロナウイルス感染症の影響に鑑み、令和2年の表彰者のうち、本件報告期間中にその延長を申し出た表彰者(以下「本件延長申請者」といいます。)については、その期間を1年延長する措置(以下「本件延長措置」といいます。)を講じる予定です。
 本件延長措置を講じた場合において、本件延長申請者に生ずる経済的利益について課税しなくても差し支えないか照会します。
 なお、本件旅行券の額は、表彰者の勤続期間等に照らし、社会通念上相当なものであることを照会の前提とします。

2 事前照会に係る取引等の事実関係

(1) 当社の永年表彰制度について

  当社の永年表彰制度は、次の内容により実施しています。

  • イ 永年勤続表彰は、当社への入社日から起算して110年、220年、330年の年数に達した者に対して毎年4月1日に行う。
  • ロ 当社は、勤続満10年、勤続満20年及び勤続満30年の永年勤続表彰時には、記念品として所定の旅行券と特別休暇を、また、勤続満25年以上満30年未満の定年者に対しては永年勤続表彰として所定の旅行券を支給する。
  • ハ 表彰者は、本件旅行券を使用した場合、当社所定の様式に旅行実施者の所属・氏名・旅行期間・旅行先・旅行費用総額等を記入し、これに本件旅行券を使用した旨が記載された旅行会社の領収書を添付して、当社へ提出し、本件旅行券の使用について報告する。

(2) 本件延長措置について

  本件延長措置の内容は次のとおりです。

  • イ 令和2年の永年勤続表彰に当たり、当社は、表彰者に、令和2年4月1日(新型コロナウイルス感染症の影響で出社ができなかった一部の者には令和2年7月1日)に本件旅行券を支給した。
  • ロ 本件延長措置を講じた場合、本件延長申請者は、令和4年3月31日(令和2年7月1日に本件旅行券を支給された者は令和4年6月30日)までに上記(1)ハと同様の報告をする。

なお、当社は、本件延長措置を講じて延長した本件報告期間の終了時点までの新型コロナウイルス感染症の状況等を踏まえ、当該期間を再延長する措置(以下「本件再延長措置」といいます。)を講じることを検討しており、この場合には、再延長した期間内に上記(1)ハと同様の報告をすることとします。

3 事前照会者の求める見解となることの理由

(1) 永年勤続者に旅行券を支給する場合に生ずる経済的利益の取扱いについて

  所得税基本通達36-21においては、使用者が永年勤続した使用人の表彰に当たり、その記念として旅行等に招待し、又は記念品を支給する場合にその使用人に生ずる経済的利益については、一定の要件(1当該利益の額が永年勤続者の勤続期間等に照らし社会通念上相当と認められること及び2永年勤続表彰が、おおむね10年以上の勤続年数の者を対象とし、かつ、2回以上表彰を受ける者については、おおむね5年以上の間隔をおいて行われるものであること。)を満たすものについて課税しなくて差し支えないものとされています。
 これは、この記念品の支給などによる経済的利益については、長期間勤務したことにより使用者から受ける給与の後払い的な性格を有するものの、多分に一種の儀礼的な給付であり、このようなものにまでも課税することは社会通念上妥当でないという配慮から、課税上弊害のない範囲で課税しないこととしたものと考えられます。
 そして、使用者が永年勤続した使用人の表彰に当たり、その記念として旅行券を支給する場合にその使用人に生ずる経済的利益についても、例えば、1勤続年数が満25年又は満30年に到達した使用人にそれぞれ10万円、20万円の旅行券を支給する、2勤続年数が満15年に到達した際に初回の表彰を行う、3旅行の実施が当該旅行券の支給後1年以内である、4旅行の範囲が当該旅行券の額からみて相当なもの(海外旅行を含む。)である、5当該旅行券の支給を受けた者が当該旅行券を使用して旅行を実施した際に所定の報告書に必要事項を記載し旅行先等を確認できる資料を添付した上で使用者に提出する等の場合においては、所得税基本通達36-21を適用し、当該旅行券の支給について課税しなくて差し支えないものとされています(個別通達昭60.2.21付直法6−4「永年勤続記念旅行券の支給に伴う課税上の取扱いについて」)。

(2) 本件延長申請者に生ずる経済的利益について

  当社の永年表彰制度において表彰者に生ずる本件旅行券の経済的利益については、上記2(1)の事実関係に照らせば、所得税基本通達36-21を適用し、課税しなくて差し支えないものと考えます。
 そして、本件延長申請者に生ずる本件旅行券の経済的利益については、新型コロナウイルス感染症に係る緊急事態宣言に伴う外出自粛要請、海外における日本からの渡航者に対する入国制限措置及び入国後の行動制限措置などの影響を踏まえると、令和2年の表彰者が、本件報告期間中に本件旅行券を使用し、その報告をすることができるかどうかは不透明な状況にあり、このような状況においてその期間を延長しても本件旅行券の支給について儀礼的な性質が失われるものではないと考えられることからすれば、本件旅行券の支給後1年以内に旅行が実施されなかったとしても、当社に本件旅行券の使用について報告をするのであれば、所得税基本通達36−21の趣旨に反するものではないため、課税しなくて差し支えないものと考えます。
 なお、本件再延長措置を講じた場合についても、新型コロナウイルス感染症の状況等を踏まえて再延長した期間が妥当なものであれば、本件延長措置を講じた場合と同様に本件旅行券の経済的利益について課税しなくて差し支えないものと考えます。