1 事前照会の趣旨及び事前照会に係る事実関係

当社は、日本において不動産管理業務を行う内国法人です。このたび、当社の同一企業グループに属する外国法人(以下「本件投資家」といいます。)が、日本に所在する商業用・賃貸用の不動産一物件(以下「本件国内不動産」といいます。)を信託財産とする日本の不動産信託(以下「本件信託」といいます。)の信託受益権を、その保有者から購入し、本件信託の受益者となる予定です(なお、本件投資家は本件信託と同様の信託の信託受益権を複数購入する予定です。)。
 本件投資家が当該信託受益権を購入した時点で、内国法人であり本件信託の受託者である信託銀行(以下「本件信託銀行」といいます。)は、本件投資家が指名する当社との間で、当社が本件国内不動産を転貸することを目的とするマスターリース契約(以下「本件マスターリース契約」といいます。)を締結する予定であり、本件マスターリース契約に基づき、当社は、本件信託銀行から賃借した本件国内不動産を第三者に転貸することを目的とするサブリース契約(以下「本件サブリース契約」といいます。)を締結し、本件サブリース契約に基づき当社が得た賃料収入(サブリース料)から一定の経費相当額を控除した金額を、本件マスターリース契約で定めたマスターリース料(以下「本件マスターリース料」といいます。)として本件信託銀行に支払うことになります。
 つきましては、本件マスターリース料の支払については、当社が源泉徴収義務を負わないものと解して差し支えないか照会します。
 また、その場合、当社が提出することとなる「不動産の使用料等の支払調書」(所法2251九、所規901、別表第五(二十四))について、「支払を受ける者」の欄は、本件信託銀行の所在地及び名称を記載することとして取り扱って差し支えないか照会します。
 なお、本件信託はいわゆる受益者等課税信託に該当すること、本件信託に係る受益者は本件投資家のみであること及び本件投資家は日本に恒久的施設を有しない外国法人に該当することを当社があらかじめ承知していることを照会の前提とします。

2 事前照会者の求める見解となることの理由

(1) 本件マスターリース料に係る源泉徴収義務について

受益者等課税信託の信託財産に帰せられる収益及び費用はその受益者の収益及び費用とみなされますので(法法121本文、所法131本文)、受益者等課税信託の信託財産である本件国内不動産の貸付けによる対価として支払われる本件マスターリース料は、法人税法及び所得税法上、その受益者である本件投資家の国内源泉所得として課税の対象とされます(所法1611七、178、法法1381五、141)。
 一方で、本件マスターリース料に係る源泉徴収義務について、1法人税法第12条≪信託財産に属する資産及び負債並びに信託財産に帰せられる収益及び費用の帰属≫第1項本文及び所得税法第13条≪信託財産に属する資産及び負債並びに信託財産に帰せられる収益及び費用の帰属≫第1項本文は受益者等課税信託に係る契約当事者である受益者の所得の帰属や計算を定めたものであり、本件信託に係る契約当事者でない当社には適用がないと考えられること及び2本件マスターリース料の支払は、当社が本件信託銀行との間で本件マスターリース契約を締結し、当該契約に基づく債務の履行として本件信託銀行に対して行うものであって、当社が外国法人に対して本件マスターリース料を支払うことにはならないことから、当社は源泉徴収義務を負わないものと考えます。

(2) 支払調書の記載について

上記(1)より、当社は、本件信託銀行に対して、国内において不動産の貸付けに係る対価の支払をする法人に当たると考えられますから、本件マスターリース料の支払に関する調書を税務署長に提出しなければならないこととなります(所法2251九)。
 その際、「不動産の使用料等の支払調書」(所規901、別表第五(二十四))の「支払を受ける者」は、本件マスターリース料を受領することとなる本件信託銀行について記載するのが相当と考えます。

○ 国税庁文書回答税目別検索