別紙

1 事前照会の趣旨及び事実関係

甲は、非上場会社であるA社の株式20,000株を所有していたところ、平成22年○月14日に母が死亡し、母が所有していたA社株式40,000株のうち13,333株を相続により取得したため、現在は33,333株を所有しています。
甲は、その所有するA社株式のうち3,600株を、母の相続に係る相続税の申告書の提出期限の翌日以後3年を経過する日までの間に、譲渡時の時価でA社へ譲渡する予定です。なお、母の相続に係る相続税の申告において、甲には納付すべき税額が生じています。
このように、甲が、その所有するA社株式のうち3,600株(以下「本件譲渡予定株式」といいます。)を譲渡した場合には、本件譲渡予定株式の全てが母から相続により取得したものからなるものとして、租税特別措置法(以下「措置法」といいます。)第9条の7《相続財産に係る株式をその発行した非上場会社に譲渡した場合のみなし配当課税の特例》第1項に規定する特例(以下「本件特例」といいます。)の適用があると解してよろしいかお伺いいたします。

2 事前照会者の求める見解となることの理由

(1) みなし配当課税の特例について
措置法第9条の7第1項は、相続又は遺贈(贈与者の死亡により効力を生ずる贈与を含みます。)(以下「相続等」といいます。)による財産の取得をした個人でその相続等につき納付すべき相続税額があるものが、その相続の開始があった日の翌日からその相続税の申告書の提出期限の翌日以後3年を経過する日までの間にその相続税額に係る課税価格の計算の基礎に算入された非上場会社の発行した株式を当該非上場会社に譲渡した場合において、当該譲渡の対価として当該非上場会社から交付を受けた金銭の額が当該非上場会社の資本金等の額のうちその交付の基因となった株式に対応する部分の金額を超えるときは、その超える部分の金額について、一定の手続の下、みなし配当課税を行わない旨規定しています。
したがって、本件特例の適用がある場合には、当該譲渡の対価として当該非上場会社から交付を受けた金銭の額は、その全てが株式等に係る譲渡所得等に係る収入金額とみなされることとなります。

(2) 取得費加算の特例について

イ 措置法第39条《相続財産に係る譲渡所得の課税の特例》(以下「取得費加算の特例」といいます。)第1項は、相続等による財産を取得した個人でその相続等につき相続税額があるものが、その相続の開始のあった日の翌日からその相続税の申告書の提出期限の翌日以後3年を経過する日までの間にその相続税額に係る課税価格の計算の基礎に算入された資産を譲渡した場合には、その譲渡した資産に係る譲渡所得の金額の計算上、その相続税額のうち一定の方法で計算した金額を加算した金額をもってその資産の取得費とする旨規定しています。

ロ 取得費加算の特例は、相続の開始のあった日の翌日から相続税の申告書の提出期限の翌日以後3年を経過する日までの間に相続税の課税価格の計算の基礎に算入された資産を譲渡した場合に適用があるため、相続等により取得した非上場会社の発行した株式の譲渡について本件特例の適用がある場合には、取得費加算の特例についても同時に適用があることとなります。

ハ また、取得費加算の特例の適用に当たり、租税特別措置法関係通達(以下「措置法通達」といいます。)39−20《同一銘柄の株式を譲渡した場合の適用関係》は、譲渡所得の基因となる株式を相続等により取得した個人が、当該株式と同一銘柄の株式を有している場合において、措置法第39条第1項に規定する期間内に、これらの株式の一部を譲渡したときには、その株式の譲渡は相続等により取得した株式から優先的に譲渡したものとして同特例の適用がある旨定めているところ、その理由は次のとおりとされています。

丸1 同一銘柄の株式については、相続財産であっても相続人固有の財産であっても、その資産としての性質は同一であり、いずれを譲渡したとしても、これを区別して特例の適用を判断する合理的理由に乏しいこと(相続等により取得した株式を譲渡したことが明らかであることを条件に特例の適用を認めることは現実的でないこと。)。

丸2 所得税基本通達33−6の4《有価証券の譲渡所得が短期譲渡所得に該当するかどうかの判定》における長期・短期の区分に係る取扱い(先入先出法による判定)は、いずれの株式から譲渡したかが判然としない場合に、納税者有利に取り扱うこととするものと考えられるところ、これを取得費加算の特例に準用すると、納税者にとって不利になる場合があること。

(3) 本件特例の適用関係
上記(2)ハの丸1及び丸2の理由は、本件特例及び取得費加算の特例がいずれも相続税納付のための相続財産の譲渡に係る課税の負担軽減を目的とするものであることからすれば、本件特例においても同様に当てはまるものと考えられます。そして、本件特例の適用がある場合には取得費加算の特例も同時に適用があることを併せ考えれば、本件特例の適用に当たり、取得費加算の特例の適用における措置法通達39−20の取扱いと異なる取扱いをすることは適当でないと考えられることから、本件特例の適用に当たっても、措置法通達39−20の取扱いと同様に、相続等により取得した非上場会社の発行した株式から優先的に譲渡したものとして取り扱うことが相当であると考えます。
以上のことからすると、本件譲渡予定株式は、本件特例の適用対象となる甲が母から相続により取得したA社株式13,333株の範囲内の株数であることから、その全てが母から相続により取得したものとして取り扱われることとなるため、本件譲渡予定株式を譲渡した場合には、その全てに本件特例の適用があり、その結果、甲がA社から本件譲渡予定株式の譲渡の対価として交付を受けた金銭の額について、みなし配当課税は行われず、その全てが申告分離課税の株式等に係る譲渡所得等に係る収入金額とみなされるものと解されます。