別紙

1 事前照会の趣旨

 当社とA社は、共同持株会社(以下「親会社」といいます。)を設立するため、会社法の規定に基づき株式移転(以下「本件株式移転」といいます。)を行う予定です。
ところで、当社は、会社法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律第64条《商法の一部改正》の規定による改正前の商法(以下「旧商法」といいます。)に基づく租税特別措置法(以下「措置法」といいます。)第29条の2《特定の取締役等が受ける新株予約権等の行使による株式の取得に係る経済的利益の非課税等》の適用要件(以下「税制適格要件」といいます。)を満たすストックオプション(以下「旧商法新株予約権」といいます。)を発行しています。また、本件株式移転に際しては、当社の新株予約権者に対し、それぞれが所有する新株予約権と同一内容の親会社の新株予約権を新たに交付することとし、当社が発行している旧商法新株予約権はすべて消滅する予定です。
この旧商法新株予約権は、その発行決議において、旧商法第364条《株式移転》第3項各号に掲げる事項(株式移転に際して子会社の新株予約権に係る義務を完全親会社に承継すること等)をあらかじめ定めていませんが、株式移転計画に基づいて親会社から交付される新株予約権については、その付与株式数及び権利行使価額について適正な調整が行われていますから、引き続き税制適格要件を満たすものとして取り扱ってよろしいか伺います。

2 事前照会に係る事実関係

(1) 本件株式移転に係る株式移転計画

 当社及びA社が共同で作成している株式移転計画は、株式移転計画書において次のイないしハの事項を定め、本件株式移転に際して、当社の旧商法新株予約権と同一内容の新株予約権が親会社から交付されることを明らかにしています。

  1. イ 当社の普通株式1株に対して、親会社の普通株式1株を交付すること。
  2. ロ 親会社は、本件株式移転に際して、その設立日前日における当社の新株予約権原簿に記載又は記録された新株予約権者に対し、それぞれの者の保有する旧商法新株予約権1個につき親会社の新株予約権1個の割合をもって新株予約権を割り当て、交付すること。
  3. ハ 当社が発行している旧商法新株予約権と親会社が交付することとなる新株予約権は、次の内容が同一であること。
    1. (イ) 新株予約権の目的である株式の種類及びその数
    2. (ロ) 新株予約権の行使に際して払込みをすべき金額
    3. (ハ) 新株予約権を行使することができる期間の末日

(2) 本件株式移転に伴う親会社の新株予約権交付手続

 本件株式移転に伴う親会社の新株予約権の交付に当たっては、親会社において新たに株主総会の決議が行われず、株式移転計画にその交付する新株予約権の内容等が定められ、当社の株主総会の決議によって承認を受けた同計画に従って、親会社の設立の日に当社の旧商法新株予約権は消滅するものの、親会社から新株予約権が交付されることによって実質的には旧商法新株予約権に係る義務が親会社に引き継がれ、旧商法新株予約権に代えて親会社の株式を目的とする新株予約権を行使できるようにするものです。

3 事前照会者の求める見解となることの理由

 会社法上、株式移転をする場合において、株式移転計画に株式移転をする子会社(以下「完全子会社」といいます。)の新株予約権者に対して株式移転により設立する親会社(以下「設立完全親会社」といいます。)の新株予約権を交付する旨を定めている場合(会社法773丸1九、十)、設立完全親会社の成立の日に完全子会社の新株予約権は消滅し、当該新株予約権の新株予約権者は、株式移転計画の定めに従い、設立完全親会社の新株予約権者となります(会社法774丸4)。
ところで、措置法第29条の2により非課税とされる経済的利益は、特定の取締役等が株主総会の決議に基づき株式会社と取締役等との間に締結された契約(税制適格要件が定められているものに限ります。以下「付与契約」といいます。)により与えられた新株予約権を当該契約に従って行使することにより当該新株予約権に係る株式の取得をした場合の経済的利益とされています。
旧商法では、株式移転に際しては完全子会社の新株予約権に係る義務を設立完全親会社が承継するという法律構成となっていましたが、会社法上は、前述のとおり、完全子会社の新株予約権は消滅し、完全親会社が新たに新株予約権を交付するという法律構成となっているため、措置法第29条の2の文理上、設立完全親会社から交付される新株予約権は、完全子会社との付与契約により与えられた新株予約権を当該付与契約に従って行使するものには当たらないのではないかとの疑義が生じます。
しかしながら、株式移転に際して完全親会社が交付する新株予約権については、完全親会社において株主総会の決議が行われていないものの、株式移転計画の定めに従い、完全子会社とその使用人等との間で締結された付与契約に基づく新株予約権の内容に基づいて交付されるものであることから、その権利行使は、実質的に完全子会社との付与契約に従って行使するものといえます(注)。
したがって、本件株式移転により当社の旧商法新株予約権が消滅し、親会社の新株予約権の交付が行われたとしても、その新株予約権の行使は、当社と当社の使用人等の間で締結された従前の付与契約に従って行われるものであることから、新株予約権の付与株式数及び権利行使価額について適正な調整が行われている限り、措置法第29条の2が適用され、引き続き税制適格要件を満たすものとして取り扱われると考えます。

(注) 吸収合併が行われたことにより、消滅会社の新株予約権が消滅し、その消滅会社の新株予約権に代えて存続会社の新株予約権が交付されたとしても、その新株予約権の行使は消滅会社との付与契約の内容に従って行使するものであると認められるとして、引き続き税制適格要件を満たすものとして取り扱われることが、国税庁ホームページの質疑応答事例において明らかにされています。