別紙1 事前照会の趣旨

 個人甲(以下「甲」といいます。)は、妻である個人乙(以下「乙」といいます。)とともに居住の用に供している乙名義の家屋(以下「本件家屋」といいます。)を取り壊した後、本件家屋の敷地である甲名義の土地(以下「本件土地」といいます。)を売却しました。
 この場合、甲の本件土地の売却に係る譲渡所得に対して、租税特別措置法通達(以下「措置法通達」といいます。)35−2《居住用土地等のみの譲渡》の要件に該当する場合には、同通達35−4《居住用家屋の所有者と土地の所有者が異なる場合の特別控除の取扱い》(1)の「その家屋とともにその敷地の用に供されている土地等の譲渡があったこと」との要件を満たすものとして、同通達の他の要件((2)及び(3))も含めて、これらのすべての要件に該当する場合には、租税特別措置法(以下「措置法」といいます。)第35条《居住用財産の譲渡所得の特別控除》第1項(以下「本件特別控除の特例」といいます。)の適用があると解してよろしいか、ご照会申し上げます。

別紙2 事前照会に係る取引等の事実関係

  • 1 甲は、A市に本件土地を所有しており、乙は、本件土地の上に本件家屋を所有していました。
  • 2 甲は、本件土地の売買に当たり、買主である第三者個人丙(以下「丙」といいます。)の希望に従い、本件家屋を取り壊し本件土地を引き渡しました。
  • 3 甲と乙は生計を一にする夫婦であり、本件家屋を取り壊す3か月前まで本件家屋に居住していました。
  • 4 本件土地は、本件家屋を取り壊した後、貸付けその他の用に供していません。

別紙3 事前照会者の求める見解となることの理由

T 法令等の定め

1 措置法通達35−2《居住用土地等のみの譲渡》
 本件特別控除の特例は、「譲渡者が居住の用に供している家屋」を核として構成されており、土地又は土地の上に存する権利(以下「土地等」といいます。)の譲渡にあっては、災害によりその家屋が滅失した場合を除いては、その家屋が現存する場合で、かつ、その家屋とともに譲渡されるその家屋の敷地の用に供されている土地等の譲渡に限り、この特例の対象とされることになっており、土地等のみの譲渡については、この特例は適用されないのが原則とされています。
 しかしながら、買主からの注文により売主が家屋を取り壊したうえ土地だけを譲渡することがしばしば見受けられるという不動産取引の実態に鑑み、居住の用に供している家屋(当該家屋でその居住の用に供されなくなったものを含みます。)を取り壊し、その家屋の敷地の用に供されていた土地等を譲渡した場合(その取壊し後、当該土地等の上にその土地等の所有者が建物等を建築し、当該建物等とともに譲渡する場合を除きます。)において、当該土地等の譲渡が次に掲げる要件のすべてを満たすときは、当該譲渡は、家屋をその敷地の用に供されている土地とともに譲渡した場合に準ずるものとして、措置法第35条第1項に規定する譲渡に該当するものと取り扱うこととされています。ただし、その居住の用に供している家屋の敷地の用に供されている土地等のみの譲渡であっても、その家屋を引き家して当該土地等を譲渡する場合には、当該譲渡は、同項に規定する譲渡に該当しないこととされています。

  • (1) 当該土地等の譲渡に関する契約が、その家屋を取り壊した日から1年以内に締結され、かつ、その家屋を居住の用に供さなくなった日以後3年を経過する日の属する年の12月31日までに譲渡したものであること。
  • (2) その家屋を取り壊した後譲渡に関する契約を締結した日まで、貸付けその他の用に供していない当該土地等の譲渡であること。

2 措置法通達35−4《居住用家屋の所有者と土地の所有者が異なる場合の特別控除の取扱い》
 本件特別控除の特例は、上記1のとおり、「譲渡者が居住の用に供している家屋」を核として構成されており、家屋の所有者とその家屋の敷地の用に供している土地等の所有者が異なる場合には、当該土地等の所有者の当該土地等の譲渡所得については、この特例は適用されないのが原則とされています。
 しかしながら、譲渡家屋の所有者とその敷地の所有者とが、親族関係にあり、かつ、これらの者がその家屋に同居し、生計を一にしているときは、その家屋とその敷地は、一の生活共同体の居住用財産とみて本件特別控除の特例を適用するのが実情に則していると考えられることから、居住用家屋の所有者以外の者がその家屋の敷地の用に供されている土地等の全部又は一部を有している場合において、その家屋(その家屋の所有者が有する当該敷地の用に供されている土地等を含みます。)の譲渡に係る長期譲渡所得の金額又は短期譲渡所得の金額(以下「長期譲渡所得の金額等」といいます。)が本件特別控除の3,000万円の特別控除額に満たないときは、その満たない金額は、次に掲げる要件のすべてに該当する場合に限り、その家屋の所有者以外の者が有するその土地等の譲渡に係る長期譲渡所得の金額等の範囲内において、当該長期譲渡所得の金額等から控除できるものとされています。

  • (1) その家屋とともにその敷地の用に供されている土地等の譲渡があったこと。
  • (2) その家屋の所有者とその土地等の所有者とが親族関係を有し、かつ、生計を一にしていること。
  • (3) その土地等の所有者は、その家屋の所有者とともにその家屋を居住の用に供していること。

 この場合、(2)及び(3)の要件に該当するかどうかは、その家屋の譲渡の時の状況により判定することとされています。ただし、その家屋がその所有者の居住の用に供されなくなった日から同日以後3年を経過する日の属する年の12月31日までの間に譲渡されたものであるときは、(2)の要件に該当するかどうかは、その家屋がその所有者の居住の用に供されなくなった時からその家屋の譲渡の時までの間の状況により、(3)の要件に該当するかどうかは、その家屋がその所有者の居住の用に供されなくなった時の直前の状況により判定することとされています。

U 見解

1 本件特別控除の特例は、上記Tのとおり、「譲渡者が居住の用に供している家屋」を核として構成されており、土地等の譲渡にあっては、災害によりその家屋が滅失した場合を除いては、その家屋が現存する場合で、かつ、その家屋とともに譲渡されるその家屋の敷地の用に供されている土地等の譲渡に限り、この特例の対象とされることになっておりますので、措置法通達35−4の取扱いにおいても「その家屋とともにその敷地の用に供されている土地等の譲渡があったこと」との要件が付されているものと考えます。

2 一方、売主が任意に家屋を取り壊したうえ土地だけを譲渡した場合には、当該譲渡が措置法通達35−2の要件を満たしている場合は、当該土地等のみの譲渡についても、家屋をその敷地の用に供されている土地とともに譲渡した場合に準じて、本件特別控除の特例が適用できることとされています。
 このような取扱いの趣旨からすれば、措置法通達35−4(1)の「その家屋とともにその敷地の用に供されている土地等の譲渡があったこと」との要件は、上記1のとおり、家屋が現存する場合を前提とした要件と考えられるところ、同通達35−2の要件を満たす土地等のみの譲渡については、「その家屋とともにその敷地の用に供されている土地等の譲渡があったこと」との要件を満たすものとして取り扱うのが相当と考えます。

3 したがって、居住用家屋の所有者と土地の所有者が異なる場合において当該家屋を取り壊して土地のみを譲渡した場合の譲渡所得に対しての本件特別控除の特例の適用については、措置法通達35−2の要件に該当する場合には、同通達35−4 (1)の「その家屋とともにその敷地の用に供されている土地等の譲渡があったこと」との要件を満たすものとして、同通達の他の要件((2)及び(3))も含めて、これらのすべての要件に該当する場合には、本件特別控除の特例の適用があると解されます。