別紙1 事前照会の趣旨

当社は、少子化に伴い新卒者の採用が難しくなってきているなか、働ける高年齢者を確保することを目的として、就業規則を改正し、平成30年4月1日より従業員の定年を60歳から65歳に延長することを決定しました。
 定年の延長に伴い退職金規程を改正し、退職一時金(以下「本件退職一時金」といいます。)の支給は65歳に延長されますが、延長前(平成30年3月31日以前)に入社した従業員に対しては、定年延長にかかわらず、延長前の定年(以下「旧定年」といいます。)である満60歳の月末に達したときに本件退職一時金を支給することとしました。
 この旧定年のときに支給される本件退職一時金は、引き続き勤務する従業員に対して支給するものであり、本来の退職所得とはいえませんが、所得税基本通達30-2(5)《引き続き勤務する者に支払われる給与で退職手当等とするもの》に定める給与に該当し、退職所得として取り扱って差し支えないか照会いたします。

別紙2 事前照会に係る取引等の事実関係

  • 1  照会者の退職金制度について

    当社の退職金制度は、確定拠出年金制度と退職一時金制度から構成されており、退職一時金制度に係る本件退職一時金は、退職金規程に定められた方法により計算し、支給されます。
     当社は、就業規則を改正し、平成30年4月1日以降は従業員の定年を60歳から65歳に延長しました。定年の延長に伴い退職金規程を改正し、本件退職一時金を定年(65歳)に達したときに支給することになりますが、定年延長前(平成30年3月31日以前)に入社した従業員に対しては、旧定年である満60歳の月末に達したときに支給します。
     本件退職一時金は、旧定年である満60歳に達した日までを基礎として計算し、定年を延長した期間は本件退職一時金の計算の基礎に含めません。
     また、本件退職一時金を支給した後は、定年を延長した期間に対する退職金の支給はしません。
     なお、確定拠出年金制度に係るグループ企業年金規約は改正しないため、当社の事業主掛金の拠出期間、従業員(加入者)の資格喪失の年齢(60歳に達したとき)及び老齢給付金の支給を請求できる年齢(60歳以上)に変更はありません。

  • 2  定年を延長する理由

    少子化に伴い新卒者の採用が難しくなってきているなか、働く意思があり、体力的にも問題がないのにもかかわらず、60歳定年により雇用を打ち切ることは、従業員にとっても当社にとっても損失になりますので、法律や社会情勢等を考慮し現在の再雇用終了時である65歳まで定年を延長することとしました。

  • 3  旧定年のときに本件退職一時金を支給する理由

    定年延長前に入社した従業員に対しては、入社時に、本件退職一時金を旧定年時に支給する旨を説明していますので、当該従業員は旧定年である60歳に本件退職一時金が支給されるものと期待しています。実際に従業員の一部からは、本件退職一時金をマイホームの購入資金に充てることを予定しており、その支給が65歳になると不都合が生じるため、定年を延長した場合においても旧定年のときに本件退職一時金を支給するように要求がありました。
     また、退職金規程の改正前及び改正後においても、本件退職一時金の計算の基礎となるのは満60歳に達した日までであり、定年の延長にかかわらず、本件退職一時金の金額は変わらないことになりますから、本件退職一時金の支給が65歳に延長された場合には、従業員にとって不利益な変更となりますので、少なくとも入社時の説明のとおり旧定年である満60歳のときに支給することとしました。

別紙3 別紙2の事実関係に対して事前照会者の求める見解となることの理由

所得税法第30条第1項《退職手当》は、退職所得とは、退職手当、一時恩給その他の退職により一時に受ける給与及びこれらの性質を有する給与(以下この条において「退職手当等」といいます。)に係る所得をいう旨規定し、所得税基本通達30-1《退職手当等の範囲》は、本来退職しなかったとしたならば支払われなかったもので、退職したことに基因して一時に支払われることとなった給与をいう旨定めています。
 また、所得税基本通達30-2(5)は、引き続き勤務する役員又は使用人に対し退職手当等として一時に支払われる給与のうち、労働協約等を改正していわゆる定年を延長した場合において、その旧定年に達した使用人に対し旧定年に達する前の勤続期間に係る退職手当等として支払われる給与であり、その支払をすることにつき相当の理由があると認められるもので、その給与が支払われた後に支払われる退職手当等の計算上その給与の計算の基礎となった勤続期間を一切加味しない条件の下に支払われるものは、同通達30-1にかかわらず、退職手当等とする旨定められています。
 以上のような退職所得に関する法令等を前提とすると、本件退職一時金は、次の理由から所得税基本通達30-2(5)に定める給与に該当し、退職所得として取り扱うのが相当であると考えます。

  • 1  当社は、就業規則及び退職金規程を改正して定年を65歳に延長したものの、平成30年3月31日以前に入社した従業員に対しては、旧定年である満60歳の月末に達したときに本件退職一時金を支給することとしており、また、本件退職一時金を支給した後は、定年を延長した期間に対する退職金の支給はしませんので、本件退職一時金は、いわゆる打切支給の退職手当等であると認められます。
  • 2  本件退職一時金の金額は、旧定年である満60歳に達した日までを基礎として計算することとしていますので、本件退職一時金は「旧定年に達する前の勤続期間に係る退職手当等として支払われる給与」であると認められます。
  • 3  定年延長前に入社した従業員に対して、旧定年のときに本件退職一時金を支給することとしたのは、当該従業員は、旧定年のときに本件退職一時金が支給されることを前提に生活設計をしており、定年延長に伴い本件退職一時金の支給が65歳になると不都合が生じるため、定年を延長する場合においても旧定年のときに本件退職一時金を支給するように要求していること、また、定年延長に伴い改正された退職金規程の改正前及び改正後においても本件退職一時金の金額は変わらないことは、本件退職一時金の支給が65歳に延長された場合には従業員にとって不利益な変更となるため、このような不都合及び不利益は、雇用主として配慮する必要がありますので、定年延長前に入社した従業員に対し、旧定年のときに本件退職一時金を支給することについて「相当な理由」があると認められます。