令和5年11月
仙台国税局

T 調査等の状況

1 所得税の調査等の状況

○ 実地調査の件数、非違件数、申告漏れ所得金額の総額及び追徴税額の総額は増加

○ 簡易な接触を含めた調査等合計の申告漏れ所得金額及び追徴税額は、一件当たりも含めて増加

(1) 調査等件数及び申告漏れ等の非違があった件数の状況

  • 実地調査の件数は、特別調査・一般調査が2,385件(前事務年度1,627件)、着眼調査が414件(同247件)であり、合計2,799件(同1,874件)、このほか、簡易な接触の件数は29,388件(同30,875件)となっています。
  • これらの調査等の合計件数は32,187件(同32,749件)であり、そのうち申告漏れ等の非違があった件数は16,010件(同15,917件)となっています。

(2) 申告漏れ所得(調査等の対象となった全ての年分の合計)金額の状況

  • 実地調査による申告漏れ所得金額は、222億1千2百万円(同167億7千3百万円)であり、そのうち特別調査・一般調査によるものは213億6千8百万円(同160億8千2百万円)、着眼調査によるものは8億4千4百万円(同6億9千1百万円)となっています。
  • また、簡易な接触による申告漏れ所得金額は132億8千9百万円(同105億2千5百万円)となっており、調査等合計では355億円(同272億9千8百万円)となっています。

(3) 追徴税額(調査等の対象となった全ての年分の合計で加算税を含む。)の状況

  • 実地調査による追徴税額は、39億4千9百万円(同28億6百万円)であり、そのうち特別調査・一般調査によるものは38億6千8百万円(同27億4千1百万円)、着眼調査によるものは8千1百万円(同6千5百万円)となっています。 なお、実地調査による追徴税額を1件当たりでみると、141万1千円(同149万7千円)となっています。
  • また、簡易な接触による追徴税額は10億6千6百万円(同11億2千1百万円)となっており、調査等合計では50億1千5百万円(同39億2千7百万円)となっています。
(参考)

1 実地調査(特別調査・一般調査)とは、高額・悪質な不正計算が見込まれる事案を対象に深度ある調査を行うもので、特に、特別調査は、多額な脱漏が見込まれる個人を対象に、相当の日数(1件当たり10日以上を目安)を確保して実施しているものです。

2 実地調査(着眼調査)とは、資料情報や申告内容の分析の結果、申告漏れ等が見込まれる個人を対象に実地に臨場して短期間で行う調査です。

3 簡易な接触とは、原則、納税者宅等に臨場することなく、文書、電話による連絡又は来署依頼による面接を行い、申告内容を是正するものです。

〇 所得税の調査等の状況
所得税の調査等の状況
(注) 1  令和4年7月から令和5年6月までの間の実績で、いずれも調査等の対象となった全ての年分の合計の計数である。
2  上段は、前事務年度の計数である。
3  「簡易な接触」の件数には、更正の請求等に基づく減額更正や添付書類の未提出に対する提出依頼を行った件数等を含む。
4  追徴税額(本税)には、復興特別所得税額を含む。
5  実地調査の件数は、所得税と消費税の実地調査件数である。

(参考)譲渡所得の調査等の状況

  • 所得税のうち譲渡所得に係る調査等の件数が、1,030件(前事務年度666件)であり、そのうち申告漏れ等の非違があった件数が、842件(同515件)となっています。申告漏れ所得金額(調査等の対象となった全ての年分の合計)は、47億7千4百万円(同32億8千6百万円)となっています。
○ 譲渡所得の調査等の状況
譲渡所得の調査等の状況
(注) 1  土地建物等は、土地建物(分離譲渡所得)及び金地金等(総合譲渡所得)である。
2  土地建物等は、課税年分ごとに1件としている。

2 消費税(個人事業者)の調査等の状況

○ 実地調査の件数、非違件数及び追徴税額の総額は増加

○ 簡易な接触を含めた調査等合計の追徴税額は、一件当たりも含めて増加

(1) 調査等件数及び申告漏れ等の非違があった件数の状況

  • 実地調査の件数は、特別調査・一般調査が1,652件(前事務年度1,106件)、着眼調査が216件(同124件)であり、合計1,868件(同1,230件)、このほか、簡易な接触の件数は3,609件(同4,607件)となっています。
  • これらの調査等の合計件数は5,477件(同5,837件)であり、そのうち申告漏れ等の非違があった件数は3,834件(同3,804件)となっています。

(2) 追徴税額(調査等の対象となった全ての年分の合計で加算税を含む。)の状況

  • 実地調査による追徴税額は、17億9千4百万円(同12億6千5百万円)であり、そのうち特別調査・一般調査によるものは17億4千6百万円(同12億3千万円)、着眼調査によるものは4千8百万円(同3千5百万円)となっています。
    なお、実地調査による追徴税額を1件当たりでみると、96万1千円(同102万8千円)となっています。
  • また、簡易な接触による追徴税額は2億4千3百万円(同3億6千1百万円)となっており、調査等合計では20億3千7百万円(同16億2千6百万円)となっています。
○ 消費税(個人事業者)の調査等の状況
消費税(個人事業者)の調査等の状況
(注) 1  令和4年7月から令和5年6月までの間の実績で、いずれも調査等の対象となった全ての年分の合計の計数である。
2  上段は、前事務年度の計数である。
3  「簡易な接触」の件数には、更正の請求等に基づく減額更正や添付書類の未提出に対する提出依頼を行った件数等を含む。
4  消費税の追徴税額には、地方消費税(譲渡割額)を含む。

U トピックス(主な取組)

1 富裕層に対する調査状況
〜追徴税額の総額は増加、1件当たり追徴税額は高水準〜

● 有価証券・不動産等の大口所有者、経常的な所得が特に高額な個人、海外投資等を積極的に行っている個人など、「富裕層」に対して、資産運用の多様化・国際化が進んでいることを念頭に積極的に調査を実施しています。

  • 令和4事務年度においては、68件(前事務年度70件)実地調査(特別・一般)を実施しました。
  • 1件当たりの申告漏れ所得金額は、1,188万円(同1,251万円)となっており、所得税の実地調査(特別・一般)全体の896万円(同989万円)に比べ1.3倍となっています。また、申告漏れ所得金額の総額は8億8百万円(同8億7千5百万円)に上ります。
  • 1件当たりの追徴税額は405万円(同213万円)で、所得税の実地調査(特別・一般)全体の162万円(同169万円)に比べ2.5倍となっています。また、追徴税額の総額は2億7千6百万円(同1億4千9百万円)に上ります。
  • 特に、海外投資等を行っている「富裕層」に対しては、1件当たりの追徴税額は539万円(同525万円)で、所得税の実地調査(特別・一般)全体の162万円に比べ3.3倍となっています。
○ 富裕層に対する調査の状況
富裕層に対する調査の状況
○ 海外投資等をした「富裕層」に対する調査の状況
海外投資等をした「富裕層」に対する調査の状況

2 海外投資等を行っている個人に対する調査状況
〜調査件数及び非違件数は増加〜

● 経済社会の国際化に適切に対応していくため、有効な資料情報の収集に努めるとともに、海外投資を行っている個人や海外資産を保有している個人などに対して、国外送金等調書、国外財産調書、租税条約等に基づく情報交換制度のほか、CRS情報(共通報告基準に基づく非居住者金融口座情報)などを効果的に活用し、積極的に調査を実施しています。

  • 令和4事務年度においては、71件(前事務年度41件)実地調査(特別・一般)を実施しました。
  • 1件当たりの申告漏れ所得金額は、1,064万円(同2,090万円)となっています。また、申告漏れ所得金額の総額は7億5千6百万円(同8億5千7百万円)に上ります。
  • 1件当たりの追徴税額は209万円(同362万円)となっています。また、追徴税額の総額は1億4千9百万円(同1億4千9百万円)に上ります。
○ 海外投資等を行っている個人に対する調査状況
海外投資等を行っている個人に対する調査状況
○ 取引区分別の調査状況
【1件当たりの申告漏れ所得金額】
取引区分別の調査状況 1件当たりの申告漏れ所得金額

(注)( )内の数値は構成比
 (参考)

  1. 1「輸出入」:事業に係る売上及び原価に係る取引で、海外の輸出(入)業者との契約による取引をいう。
  2. 2「役務提供」:工事請負、プログラム設計など海外において行う、労力、技術等の第三者に対するサービスの提供をいう。
  3. 3「海外投資」:海外の不動産、証券などに対する投資(預貯金等の海外での蓄財を含む。)をいう。
  4. 4「その他」:海外で支払を受ける給与など、1〜3に該当しない取引等をいう。

3 インターネット取引を行っている個人に対する調査状況
〜暗号資産等取引を行っている個人に対する調査に係る1件当たり追徴税額は高水準〜

● インターネット上のプラットフォームを介して行うシェアリングエコノミー等新分野の経済活動(注)に係る取引や暗号資産(仮想通貨)等の取引を行っている個人に対しては、資料情報の収集・分析に努め、積極的に調査を実施しています。

<シェアリングエコノミー等新分野の経済活動に係る取引を行っている個人に対する調査状況>

  • 令和4事務年度においては、70件(前事務年度59件)実地調査(特別・一般)を実施しました。
  • 1件当たりの申告漏れ所得金額は、808万円(同1,028万円)となっています。また、申告漏れ所得金額の総額は5億6千6百万円(同6億7百万円)に上ります。
  • 1件当たりの追徴税額は106万円(同207万円)となっています。また、追徴税額の総額は7千4百万円(同1億2千2百万円)に上ります。

(注) シェアリングエコノミー等新分野の経済活動とは、シェアリングビジネス・サービス、ネット広告(アフィリエイト等)、デジタルコンテンツ、ネット通販、ネットオークションその他新たな経済活動を総称した経済活動のことをいいます。

<暗号資産(仮想通貨)等取引を行っている個人に対する調査状況>

  • 令和4事務年度においては、25件(前事務年度14件)実地調査(特別・一般)を実施しました。
  • 1件当たりの申告漏れ所得金額は、1,354万円(同2,082万円)となっています。また、申告漏れ所得金額の総額は3億3千8百万円(同2億9千1百万円)に上ります。
  • 1件当たりの追徴税額は315万円(同386万円)となっています。また、追徴税額の総額は7千9百万円(同5千4百万円)に上ります。
○ シェアリングエコノミー等新分野の経済活動に係る取引(調査状況)
シェアリングエコノミー等新分野の経済活動に係る取引(調査状況)

【取引区分別の調査状況】

シェアリングエコノミー等新分野の経済活動に係る取引(調査状況)
○ 暗号資産(仮想通貨)等取引(調査状況)
暗号資産(仮想通貨)等取引(調査状況)

(注)( )内の数値は構成比
(参考):主な取引例

1 シェアリングビジネス・・・民泊、カーシェアリング、クラウドソーシングなど

2 デジタルコンテンツ・・・アプリ作成・配信、有料メルマガなど

3 ネット通販等・・・ネット通販、ネットオークション、ドロップシッピングなど

4 ネット広告・・・アフィリエイトなど

5 その他・・・1〜4に該当しない経済活動に該当する取引

4 無申告者に対する調査状況
〜所得税及び消費税の1件当たり追徴税額が過去最高〜

● 無申告は、申告納税制度の下で自発的に適正な納税をしている納税者に強い不公平感をもたらすこととなるため、的確かつ厳格に対応していく必要があります。こうした無申告者に対しては、更なる資料情報の収集及び活用を図るなどして、実地調査のみならず、簡易な接触も活用し積極的に調査を実施しています。

<所得税無申告者に対する調査状況>

  • 令和4事務年度においては、233件(前事務年度164件)実地調査(特別・一般)を実施しました。
  • 1件当たりの申告漏れ所得金額は、2,605万円(同2,053万円)で、所得税の実地調査(特別・一般)全体の896万円(同989万円)に比べ2.9倍となっています。また、申告漏れ所得金額の総額は60億6千9百万円(同33億6千7百万円)に上ります。
  • 1件当たりの追徴税額は過去最高の450万円(同275万円)で、所得税の実地調査(特別・一般)全体の162万円(同169万円)の2.8倍となっています。また、追徴税額の総額は10億4千9百万円(同4億5千1百万円)に上ります。

<消費税無申告者に対する調査状況>

  • 令和4事務年度においては、436件(同338件)実地調査(特別・一般)を実施しました。
  • 1件当たりの追徴税額は過去最高の253万円(同227万円)で、消費税の実地調査(特別・一般)全体の106万円(同111万円)の2.4倍となっています。また、追徴税額の総額は11億5百万円(同7億6千7百万円)に上ります。
○ 無申告者に対する調査の状況

<所得税>
無申告者に対する調査状況

<消費税>
無申告者に対する調査状況

5 消費税の還付申告者への調査状況

● 消費税の還付申告は、申告書の添付書類や保有する資料情報等に基づき厳格な審査を行い、申告内容に疑義がある場合には、還付を保留し、実地調査等を行うなどして還付原因等の解明・確認を実施しています。

<消費税の還付申告者への調査状況>

  • 令和4事務年度においては、69件(前事務年度41件)実地調査を実施しました。
  • 追徴税額の総額は6千1百万円(同2千7百万円)に上ります。
○ 消費税の還付申告者への調査の状況
消費税の還付申告者への調査の状況
(注) 1  「4事務年度」は、令和3年1月1日から令和3年12月31日までの課税期間における消費税及び地方消費税の還付申告を行なっている個人事業者のうち、令和4事務年度に実地調査を行った計数である。
2  「3事務年度」は、令和2年1月1日から令和2年12月31日までの課税期間における消費税及び地方消費税の還付申告を行なっている個人事業者のうち、令和3事務年度に実地調査を行った計数である。
3  消費税の追徴税額には、地方消費税(譲渡割額)を含む。

6 所得税の不正還付申告書の課税処理の状況

● 所得税の不正還付は、いわば国庫金の詐取ともいえる悪質性が高い行為であるため、特に厳格な審査・調査を実施しています。

● また、急増する不正還付申告に厳格に対応すべく、警察当局との連携も強め、悪質な不正還付申告書の提出が確認され、詐欺罪等に該当すると判断した場合には、必要に応じて刑事責任追及のための対応を行うことで適正・公平な課税の実現に努めています。

(注) 各種情報に照らして必要があると認められる場合は、還付金の支払を一旦保留しつつ、還付申告の内容が適正であるかを確認するため、勤務先等に給与等の支払実績の確認をお願いすることや、職員がご自宅等に直接赴き実地で調査を行うなどにより確認を行っております。

<所得税の不正還付申告書の課税処理の状況>

  • 令和4事務年度においては、15件(前事務年度15件)課税処理しました。
  • 追徴税額の総額は2千2百万円(同1千3百万円)に上ります。
○ 所得税の不正還付申告書の課税処理の状況
所得税の不正還付申告書の課税処理の状況

V 参考計表

○ 事業所得を有する個人の1件当たりの申告漏れ所得金額が高額な上位10業種
事業所得を有する個人の1件当たりの申告漏れ所得金額が高額な上位10業種
(注) 1  上記調査事績は、特別調査及び一般調査に基づく実施結果である。
2  「前年の順位」は、事業所得を有する個人の前年の1件当たりの申告漏れ所得金額が高額な上位20位に該当するものについて、その順位を記載している。
(付表) 事業所得を有する個人の1件当たりの申告漏れ所得金額が高額な業種
事業所得を有する個人の1件当たりの申告漏れ所得金額が高額な業種

(注) 1件当たりの申告漏れ所得は、調査全年分に係るものである。