別紙1−1

1 照会の趣旨(法令解釈・適用上の疑義の要約及び事前照会者の求める見解の内容)

当社(本店所在地 大阪府)は、旅行業務を行う株式会社A(以下「A」といいます。)(本店所在地 東京都)の子会社で、A及びAの関係会社が旅行業務を行うための店舗の企画、設計及び施工を行っています。
 今回、当社は、Aの子会社で旅行業務を行う外国法人B社(以下「B」といいます。)(本店所在地 シンガポール)が、シンガポール国内の施設内に新店舗を設置するに当たり、その店舗の内装工事デザインコンセプト及び基本設計業務(以下「本件設計等」といいます。)を請け負うことになりました。
 当社とBの本件設計等の取引に関しては、Bの本店が直接関与しBの日本国内にある5か所の支店及びAは一切関わっていません。
 そこで、本件設計等の役務の提供に対する消費税法上の取扱いは、別紙1−3のとおり、消費税が免除される取引(以下「輸出免税」といいます。)として取り扱われるものと解して差し支えないか、お伺いいたします。

別紙1-2

2 個別の取引等の事実関係

1 取引関係者の概要
  • (1) 当社
    • 株主 : A(発行済株式の100%を保有)
    • 本店所在地 : 大阪府
    • 主な事業 : 旅行店舗や小売店舗等の企画・設計・施工
  • (2) A
    • 本店所在地 : 東京都
    • 主な事業 : 旅行業務その他
  • (3) B
    • 株主 : A(発行済株式の100%を保有)
    • 本店所在地 : シンガポール
    • 主な事業 : 経営管理業務、旅行業務その他
    • 国内支店の状況 : 5支店
       ※ 各支店では旅行業務全般を行っています。
2 権利義務関係等
  • (1) 契約書等
    • イ 平成21年2月5日付の「注文書」はBのシンガポール取締役支店長から当社の代表取締役社長に対し発行されています。
      ※「注文書」の主な記載内容
      • 1 業務内容:Bの店舗内装工事デザインコンセプト及び基本設計業務
      • 2 工事場所:シンガポール国内の施設内
      • 3 業務期間:平成21年●月●日から平成21年●月●日
      • 4 業務報酬:××万円
      • 5 その他(支払い条件等)
    • ロ 平成21年2月10日付の「請書」は当社の代表取締役社長からBの本店の取締役社長に対し発行されています。
  • (2) 契約実行等
     Bがシンガポールにおいて旅行業務を行うための店舗の本件設計等を当社に依頼するに当たり、当社との契約締結交渉、事務の取次ぎ、代金決済等の一切の事務をBの本店においてBの担当者が直接行い、当社とBの国内における事務打ち合わせ等において、Bの国内支店に所属する者は参加していません。なお、本件設計等は当社の本店(国内)で行い、店舗の施工は当社と関係しない現地の業者が行います。

別紙1-3

3 2の事実関係に対して事前照会者の求める見解となることの理由

事業者が国内において行う課税資産の譲渡等のうち、輸出取引又は輸出類似取引に該当するものについては、消費税を免除することとされています(消法71)。
 そこで、本件設計等について検討すると、次のとおりになるものと考えます。

  • 1 国内取引に該当するか
    • (1) 関係法令等
       資産の譲渡等が国内において行われたかどうかの判定は、役務の提供が行われた場所により行うものとされ(消法43二)、その役務の提供が情報の提供又は設計の場合は、その情報の提供又は設計を行う者の情報の提供又は設計に係る事務所、事業所その他これらに準ずるもの(以下「事務所等」といいます。)の所在地とされています(消令62五)。
    • (2) 本件への当てはめ
       別紙1−2の1(1)のとおり、本件設計等を行う事務所等である当社の本店は国内に所在していますので、国内取引に該当するものと考えます。
  • 2 輸出類似取引に該当し輸出免税の対象となるか
    • (1) 関係法令等
      • イ 輸出取引等の範囲
         非居住者(※)に対して行われる役務の提供で、1国内に所在する資産に係る運送又は保管、2国内における飲食又は宿泊、31及び2に掲げるものに準ずるもので、国内において直接便益を享受するもの以外のものは、輸出免税の対象になるとされています(消令172七)。
        ※ 本邦内に主たる事務所を有さない法人は、非居住者に該当します(消令12二、外国為替及び外国貿易法61五、六)。
      • ロ 国内に支店等を有する非居住者に対する役務の提供
         国内に支店等を有する非居住者に対する役務の提供については、当該役務の提供が当該支店等を経由して役務の提供を行ったものとして消費税法施行令第17条第2項第7号の規定が適用されず、輸出免税に該当しないものとして取り扱われるとされています(消基通7−2−17)。
         ただし、国内に支店等を有する非居住者に対する役務の提供であっても、次の要件のすべてを満たす場合には、消費税法施行令第17条第2項第7号に規定する役務の提供に該当し、輸出免税に該当するものとして取り扱って差し支えないとされています(同通達ただし書)。
        • 1 役務の提供が非居住者の国外の本店等との直接取引であり、当該非居住者の国内の支店等はこの役務提供に直接的にも間接的にもかかわっていないこと。
        • 2 役務の提供を受ける非居住者の国内の支店等の業務は、当該役務の提供に係る業種と同種、あるいは関連する業務でないこと。

      このただし書は、消費地課税主義に沿って国境税調整をするという輸出免税の趣旨に鑑み、その役務の提供が、非居住者である外国法人等の国外の本店等に対して直接行われているものであり、国内の支店等が当該役務の提供に係る取引に関与していない場合など、一定の要件に該当する場合には輸出免税の対象として取り扱うこととするものと解しています。

    • (2) 本件への当てはめ
       Bは、別紙1−2の1(3)のとおり本店所在地がシンガポールであり、本邦内に主たる事務所を有しないため非居住者に該当し、本件設計等の役務の提供は、シンガポールにある店舗に係るものであるため、国内において直接便益を享受するものには該当しません。
       更に、Bは国内に支店を有していますが、別紙1−2の2のとおり、当社との契約締結交渉から代金決済までの一切の事務をBの本店が直接行っており、Bの当該支店は本件役務の提供に直接的にも間接的にも全く関わっておらず、また、当社とBはともにAの100%子会社であるものの、Bの当該支店が行う旅行業務は、当社が役務の提供として行う本件設計等の業種と同種、あるいは関連する業務ではありません。
       したがって、本件役務の提供は、上記2(1)ロに掲げる1及び2の要件のすべてを満たす場合に該当するものと考えます。

以上のことから、当社が行うBに対する本件設計等の役務の提供は、輸出免税の対象になるものと考えます。