1 照会の要旨

A社(3月末決算)は、民事再生法の適用を受けたB社(3月末決算)を被合併法人とする吸収合併(以下「本件合併」という。)を平成25年10月1日に実施することを予定しています。
 本件合併は、法人税法上、A社とB社との間にX市(同一の者)による支配関係がある場合の適格要件を満たし、適格合併に該当することが見込まれています。また、被合併法人であるB社は、本件合併時において未処理欠損金額を有することとなります。
 A社については、昭和52年8月2日にX市がA社の株式の50%超を保有することによりX市との間に支配関係が発生し、以降、本件合併時まで当該支配関係が継続することが見込まれています。
 一方、B社は、平成23年4月1日に、X市及びX市と支配関係のある法人がB社の株式の50%超を保有することによりX市との間に支配関係が発生し、以降、当該支配関係が継続していましたが、平成25年1月31日に、裁判所から認可を受けた民事再生計画に基づき、再生計画の遂行前のB社の発行済株式の全てを取得、消却(以下「自己株式の取得及び消却」という。)し、資本金の額を全額減少させるいわゆる100%減資(以下、自己株式の取得及び消却と併せて「本件減資」という。)を行うとともに、同日、X市が保有するB社に対する債権の現物出資を受け、その対価として新株を発行するDES:デット・エクイティ・スワップ(以下「本件DES」という。)を行うことにより、同日以降、X市がB社の株式の100%を保有しています。
 この場合に、平成23年4月1日に生じたA社とB社との間の支配関係が、本件減資により平成25年1月31日に途切れないと解して差し支えないか御照会いたします。
 なお、照会の趣旨といたしましては、本件の場合、法人税法施行令第112条第3項に規定する要件(以下「みなし共同事業要件」という。)を満たさなければ、法人税法第57条第3項《青色申告書を提出した事業年度の欠損金の繰越し》に規定する被合併法人の未処理欠損金額の引継制限の適用を受けることになりますが、このみなし共同事業要件を判定するに当たって、法人税法施行令第112条第3項第3号に規定する「被合併法人支配関係発生時」及び同項第4号に規定する「合併法人支配関係発生時」並びに同項第5号に規定する「被合併法人が…合併法人と最後に支配関係があることとなった日」(以下「支配関係発生日等」と総称する。)がいつであるかについて疑義が生じたため、本件の照会を行うものです。

【取引図】
 照会の要旨に基づく取引等を表している図

2 事前照会に係る取引等の事実関係

(1) A社とB社との間の支配関係及び本件合併に係る事実関係

  • イ X市は、昭和52年8月2日から本件合併時までA社の株式の50%超を継続して保有することが見込まれている。
  • ロ X市及びX市と支配関係のある法人は、平成23年4月1日から平成25年1月31日までB社の株式の50%超を継続して保有していた。
  • ハ B社は、平成25年1月31日に、民事再生計画に基づき、本件減資を行うとともに、同日、X市が保有するB社に対する債権の現物出資を受け新株を発行する本件DESを行い、X市がB社の株式の100%を保有することとなった。
  • ニ X市は、平成25年1月31日から本件合併時までB社の株式の100%を継続して保有することが見込まれている。
  • ホ A社は、平成25年10月1日に、B社を被合併法人とする本件合併を行うことを予定している。
     なお、本件合併は外郭団体を削減していくというX市の取組みの1つであり、平成24年1月にはX市議会の常任委員会において本件合併に関する説明がなされている。

(2) B社の民事再生に係る事実関係

  • イ 平成24年2月○日、B社が裁判所に再生手続開始の申立てを行った。
  • ロ 平成24年3月○日、裁判所が再生手続を開始決定した。
  • ハ 平成24年10月○日、B社が裁判所に再生計画案を提出した。

 再生計画案の基本方針、本件減資及び本件DESに関する内容は次のとおりである。

1 基本方針
 早急にB社における債務超過状態及び累積欠損金を解消し、財務体質の抜本的改善を図るため、(中略)、B社は100%減資をした上で、大口債権者1名(X市)が有する再生債権全額について、]市はB社に現物出資し、B社はそれを受けてX市に対し株式を発行する。

2 本件減資の内容
 B社は、民事再生計画認可決定確定前のB社の発行済株式の全てを無償で取得、消却するとともに、資本金の額を全額減少させる。
 B社が株式を取得する日及び資本金の額の減少の効力が生ずる日は、再生計画認可決定確定後最初に行う募集株式発行の効力が生じる日とする。

3 本件DESの内容
 B社は、X市が保有するB社に対する債権全額の現物出資を受け、X市に対し募集新株を発行する。

  • ニ 平成24年12月○日、債権者集会で再生計画案が可決され、同日、裁判所が再生計画の認可を決定した。
  • ホ 平成25年1月15日、B社は取締役会を開催し、平成25年1月31日に本件減資及び本件DESを行う決議を行った。
  • ヘ 平成25年1月31日、B社は再生計画に基づき、本件減資及び本件DESを行った。

3 事前照会者の求める見解の内容及びその理由

(1) 法令の規定

イ 支配関係に係る法令の規定
 支配関係とは、一の者が法人の発行済株式若しくは出資の総数若しくは総額の100分の50を超える数若しくは金額の株式若しくは出資を直接若しくは間接に保有する関係として政令で定める関係(以下「当事者間の支配の関係」という。)又は一の者との間に当事者間の支配の関係がある法人相互の関係をいう(法法2十二の七の五)。
 また、法人税法第2条第12号の7の5《定義》に規定する政令で定める関係は、一の者が法人の発行済株式等の総数又は総額の100分の50を超える数又は金額の株式又は出資を保有する場合における当該一の者と法人との間の関係(以下「直接支配関係」という。)とされており、この場合において、当該一の者及びこれとの間に直接支配関係がある1若しくは2以上の法人又は当該一の者との間に直接支配関係がある1若しくは2以上の法人が他の法人の発行済株式等の総数又は総額の100分の50を超える数又は金額の株式又は出資を保有するときは、当該一の者は当該他の法人の発行済株式等の総数又は総額の100分の50を超える数又は金額の株式又は出資を保有するものとみなされている(法令4の21)。

ロ 被合併法人の未処理欠損金額の引継制限(みなし共同事業要件)に係る法令の規定
 支配関係がある法人間で行われた適格合併が「共同で事業を営むための合併」として政令で定めるもの(みなし共同事業要件)に該当する場合には、被合併法人の未処理欠損金額の引継制限は適用されないこととされている(法法573)。
 また、法人税法第57条第3項に規定する政令で定めるものは、適格合併のうち、法人税法施行令第112条第3項の第1号から第4号までに掲げる要件又は同項の第1号及び第5号に掲げる要件に該当するものとされている(法令1123)。

(第1・2号省略)

第3号 被合併事業が当該適格合併に係る被合併法人と合併法人との間に最後に支配関係があることとなった時(以下この号において「被合併法人支配関係発生時」という。)から当該適格合併の直前の時まで継続して営まれており、かつ、当該被合併法人支配関係発生時と当該適格合併の直前の時における当該被合併事業の規模の割合がおおむね2倍を超えないこと。

第4号 合併事業が当該適格合併に係る合併法人と被合併法人との間に最後に支配関係があることとなった時(以下この号において「合併法人支配関係発生時」という。)から当該適格合併の直前の時まで継続して営まれており、かつ、当該合併法人支配関係発生時と当該適格合併の直前の時における当該合併事業の規模の割合がおおむね2倍を超えないこと。

第5号 適格合併に係る被合併法人の当該適格合併の前における特定役員(社長、副社長、代表取締役、代表執行役、専務取締役若しくは常務取締役又はこれらに準ずる者で法人の経営に従事している者をいい、以下この号において同じ。)である者のいずれかの者(当該被合併法人が当該適格合併に係る合併法人と最後に支配関係があることとなった日前において当該被合併法人の役員又は当該これらに準ずる者(同日において当該被合併法人の経営に従事していた者に限る。)であった者に限る。)と当該合併法人の当該適格合併の前における特定役員である者のいずれかの者(当該最後に支配関係があることとなった日前において当該合併法人の役員又は当該これらに準ずる者(同日において当該合併法人の経営に従事していた者に限る。)であった者に限る。)とが当該適格合併の後に当該合併法人の特定役員となることが見込まれていること。

(2) 検討
 本件合併は、A社とB社との間にX市(同一の者)による支配関係がある場合の適格要件を満たし、適格合併に該当することが予定されています。
 ところで、支配関係がある法人間で行われた適格合併がみなし共同事業要件を満たせば、被合併法人の未処理欠損金額は引継制限の適用を受けないところ、このみなし共同事業要件に係る法人税法施行令第112条第3項第3号、第4号及び第5号は、上記(1)のロのとおり規定され、これらの号に定める要件の判定に際しては、これらの号におけるそれぞれの支配関係発生日等がいつであるかを特定する必要があります。
 この点に関し、B社は、本件減資前はX市との間に支配関係(X市及びX市と支配関係のある法人による50%超の株式保有)があり、また、本件DES後はX市との間に完全支配関係(X市による100%の株式保有)がありますが、本件減資に際し発行済株式の全部の取得及び消却を行っていることから、本件減資の時点でB社とX市との間の支配関係がいったん途切れたとみて、みなし共同事業要件における支配関係発生日等は本件DESによりX市が現物出資を行いB社から新株の交付を受けた平成25年1月31日となるのかとの疑問が生じ得るところです。
 しかしながら、本件において、1本件減資と本件DESは裁判所の認可を受けた民事再生計画において、一連の手続として計画されたものであり、かつ、B社による自己株式の取得日と本件DESにおける募集株式発行の効力発生日は同日とする旨定められていること、2B社は、取締役会決議により、本件DESにおける現物出資財産の給付の期日(募集株式発行の効力発生日)を平成25年1月31日と定めていること、また、3実際に、当該民事再生計画に従って平成25年1月31日に自己株式の取得及び消却を行うとともに、X市からの現物出資財産の給付の期日(募集株式発行の効力発生日)を同日として本件DESを行ったことからすれば、法人税法上の支配関係の判定においては、平成25年1月31日に、B社の株主構成が、単に、X市及びX市と支配関係のある法人による50%超の株式保有からX市による100%の株式保有に切り替わったのみと考えられることから、B社とX市との間の支配関係は本件減資の前後を通じて継続していることとなります。
 したがって、本件において、みなし共同事業要件に係る支配関係発生日等については、X市とB社との間に支配関係が発生した平成23年4月1日と解され、同日に生じたA社とB社との間の支配関係は、本件減資により平成25年1月31日に途切れることはなく継続していることとなります。