平成19年4月施行の改正医療法により、医療法人の非営利性の徹底の観点から、施行後に認可申請を行い設立される社団である医療法人(以下「社団医療法人」といいます。)については、出資持分のある医療法人は設立できないこととされました。これに伴い、持分の定めのない医療法人の活動の原資となる資金の調達手段として基金への拠出を募集することができることとされています(医療法施行規則30の37)。
当法人は、このような基金を有する持分の定めのない社団医療法人ですが、この基金の税務上の取扱いについて、下記のとおり解して差し支えありませんか。
なお、照会に係る事実関係及び下記の見解に至った理由は、別紙1−2及び別紙1−3のとおりです。
記
当法人は、基金を有する持分の定めのない社団医療法人となるべく、平成20年4月29日の設立総会を経て、知事に設立認可申請を行い、平成20年6月26日に設立されました。
なお、当法人は基金への拠出を募集し、この募集に対して当法人の代表者が個人診療所を経営していた際に有していた資産など13百万円を平成20年5月末までに拠出する旨の申込みを行い、この拠出は申込みどおり履行されております。
平成19年4月1日に施行された医療法の一部を改正する法律(平成18年法律第84号)において剰余金の分配を目的としない医療法人の非営利性が徹底され、出資持分のある医療法人は設立できないこととされました。
これに伴い、出資持分の定めのない医療法人に必要となるその医療活動の原資となる資金の調達手段として、定款に出資持分の定めのない医療法人に係る基金(以下「基金」といいます。)を引き受ける者の募集をすることができる旨を定めることができるものとされました(医療法施行規則30の37)。
医療法上の持分の定めのない社団医療法人における基金とは次のイからヘまでに掲げる特性を有しています。
会社法上、株式会社における資本金の額は、別段の定めがある場合を除き、設立又は株式の発行に際して株主となる者が、当該株式会社に対して払込み又は給付をした財産の額とされています(会社法445)。
また、株式を所有する株主は、その有する株式の引受価額を限度として、一般的に有限責任を負っているとされています(会社法104)。
さらに、株主は有限責任を負う一方で、次の@からBまでの権利を有することとされています(会社法105)。
持分会社における資本金の額は、社員が出資の履行をした場合には次の及び
の合計額から
の額を減じて得た額の範囲内で持分会社が資本金の額に計上するものと定めた額が増加するものとされています(会社計算規則53
一)。
また、持分会社における出資者たる社員は、当該持分会社の財産をもってその債務を完済することができないなどの場合には、連帯して、持分会社の債務を弁済する責任を負うものとして、一般的には、無限責任を負っているものとされています(会社法580)。
さらに、社員は無限責任を負う一方で、次の@からBまでの権利を有していることとされています。
上記1(2)ニのとおり基金の総額及び代替基金は、出資金の額と同様に、貸借対照表の純資産の部に「基金」及び「代替基金」の科目をもって計上することが定められていることから、税務上も出資金の額に該当するとも考えられます。
上記2(2)のとおり株式会社の株主又は持分会社の社員は、その有する株式の引受価額を限度とした有限責任又は無限責任を負う一方で、次の@からBまでの権利を有しているところです。
これに対して基金の拠出者は、上記1(2)の特性にかんがみると、医療法施行規則の規定及び医療法人との間の合意に基づき返還を受ける権利を有しているものの、有限責任又は無限責任を負っているものではなく、上記@からBまでの権利は有していないこととされています。
一方、持分の定めのない社団医療法人は、拠出者に対して基金の返還義務を負っているとともに、基金は破産手続開始の決定を受けた場合、拠出者において約定劣後破産債権とされることから、債務と同様の性質を有しているものと認められます。
したがって、基金の拠出者にとって、基金への拠出額は、出資金の額には該当しないものと考えられます。