(1) 当社は、現在、退職一時金制度及び当社が事業主となる確定給付企業年金制度(以下「本件DB制度」といいます。)で構成される退職金制度を採用していますが、今後、本件DB制度から、当社が事業主となる企業型確定拠出年金制度(以下「本件DC制度」といいます。)に移行する予定です。これに伴い、本件DB制度を終了し、本件DB制度による確定給付企業年金(以下「本件DB」といいます。)の年金資産は、本件DC制度による企業型確定拠出年金(以下「本件DC」といいます。)の資産管理機関に移換して、各社員の個人別管理資産に充てる予定です。
(2) 本件DCに係る企業型確定拠出年金規約(案)における加入者資格の取得と喪失の時期に関する規定はおおむね次のとおりです。
イ 本規約の加入者は、本規約を適用する厚生年金適用事業所(実施事業所)に使用される60歳未満の第1号等厚生年金被保険者のうち、就業規則に定める一定の社員とします。
ロ 上記イの加入者は、その使用される事業所が実施事業所となったとき等に至った日に加入者の資格を取得します。
ハ 当該加入者の資格は、加入者が死亡したとき、実施事業所に使用されなくなったとき等に該当するに至った日の翌日又は60歳に達するに至った日(注)に喪失します。
(注)当社の就業規則では、定年は60歳とし、誕生日の前日に退職することとされています。また、自己都合により退職を願い出て当社が承認したとき、又は退職願提出後14日を経過したときも、退職することとされています。
ニ 加入者の資格を取得した月にその資格を喪失した者は、その資格を取得した日に遡って、加入者でなかったものとみなされます(注)。
(注)確定拠出年金法第12条《企業型年金加入者の資格の得喪に関する特例》では、企業型年金加入者の資格を取得した月にその資格を喪失した者は、その資格を取得した日に遡って、企業型年金加入者でなかったものとみなすこととされています。
(3) また、本件DB制度が終了した場合、当社は、当社の確定給付企業年金規約に基づき、当社が給付の支給に関する義務を負っていた者のうち本件DB制度の終了日における加入者について、残余財産の全部を本件DCの資産管理機関に移換しますが、確定拠出年金法第12条の規定により本件DCの加入者でなかったとみなされた者については、本件DB制度の終了に伴う残余財産を分配することとされています。
(4) したがって、定年や自己都合による退職のため、本件DB制度の終了日以後、同月中に本件DCの加入者資格を喪失し、確定拠出年金法等の規定により当初から本件DCの加入者でなかったとみなされる社員(以下「本件退職者」といいます。)については、本件DB制度の終了に伴う残余財産の分配金(以下「本件分配金」といいます。)が、当社の選任する清算人名義の口座に入金された後、改めて本件退職者の口座に送金されることとなります。
(5) この本件退職者が受ける本件分配金は、所得税法第31条《退職手当等とみなす一時金》によって退職手当等とみなされる一時金に該当し、退職所得として取り扱って差し支えないか照会いたします。
(1) 法令等について
イ 所得税法第30条《退職所得》第1項は、退職所得とは、退職手当、一時恩給その他の退職により一時に受ける給与及びこれらの性質を有する給与(以下「退職手当等」といいます。)に係る所得をいう旨規定しています。
ロ 所得税法第31条《退職手当等とみなす一時金》第3号は、確定給付企業年金法の規定に基づいて支給を受ける一時金で加入者の退職により支払われるもの等については、退職手当等とみなす旨規定しています。
ハ 確定給付企業年金法第89条《清算人等》第6項は、終了した確定給付企業年金の一定の残余財産は、政令で定める基準に従い規約で定めるところにより、その終了した日において当該確定給付企業年金を実施する事業主等が給付の支給に関する義務を負っていた者(終了制度加入者等)に分配しなければならない旨規定しています。
(2) 本件分配金の所得区分について
イ 上記(1)ロのとおり、確定給付企業年金法の規定に基づいて支給を受ける一時金で加入者の退職により支払われるものは、退職手当等とみなされますが、それ以外の事由である確定給付企業年金制度の終了により支払われる一時金は、「加入者の退職により支払われるもの」に当たらないため、原則として、一時所得として取り扱われます。
ロ 本件退職者は、本件DB制度の終了に伴いその加入者資格を喪失すると同時に、本件DCの加入者資格を一旦取得するところ、同月中に退職することによって、本件DCの加入者資格を喪失し、その資格を取得した日に遡って、本件DCの加入者でなかったものとみなされます(上記1の(2)ロ、ニ)。
そのため、本件退職者は、その退職の日においては本件DB及び本件DCのいずれの加入者でもありませんが、本件分配金については、本件DB制度が終了するまでは本件DBの加入者である本件退職者が、本件DC制度への移行により本件DCの加入者資格を取得した後に、その退職を理由として本件DCの加入者でなかったものとみなされることにより、確定給付企業年金法の規定に基づいて支給を受ける一時金である(上記(1)ハ)ことを踏まえれば、本件分配金は、確定給付企業年金法の規定に基づいて支給を受ける一時金で加入者の退職により支払われるものと解するのが相当であり、退職所得として取り扱って差し支えないものと考えます。