1 事前照会の趣旨

 本県は、一団の土地(居住用建物又は業務用建物及び自動車の保管場所が機能的に一体利用されている画地)内に存する自動車の保管場所の一部又は全部が土地収用法の規定に基づき収用等される場合において、収用の対価たる金額(対価補償金)とは別に、残地内の建物の移転等を伴わなければ従来利用していた駐車場の用に供することが著しく困難となるときの自動車保管場所に係る補償について、平成5年3月26日付中央用地対策連絡協議会理事会決定の「自動車の保管場所の確保に要する費用の補償取扱要領」に準じて、「自動車の保管場所の確保に要する費用の補償取扱要領」(以下「本件要領」といいます。)を定めています。
 本件要領は、自動車保管場所に係る補償についての標準的な取扱について定めたものであり、自動車保管場所が存する敷地の用途に従って、「一般住宅」、「共同住宅(貸家)」、「業務用建物(支障建物有)」及び「業務用建物」という4つの類型を例示し、それぞれの類型に係る補償の手順を示しています。
 自動車保管場所に係る補償については、本県が、これらの類型ごとに定められた条件を順にあてはめて検討を行った上で、以下の丸1から丸6の方法のうちから合理的な方法を決定し、一団の土地の所有者がこれに従うときに行うこととなります。

  1. 丸1 残地内の建物を移転することなく、物置その他の工作物及び立竹木を再配置することにより、保管場所を確保する。
  2. 丸2 近隣を保管場所とする土地を確保する。
  3. 丸3 近隣の貸駐車場を借り上げる。
  4. 丸4 残地内に立体駐車場を設置する。
  5. 丸5 残地内の建物の全部又は一部を残地内で移転することにより、保管場所を確保する。
  6. 丸6 残地内の建物の全部又は一部を残地外へ移転することにより、保管場所を確保する。

 このうちの丸4の方法によることが合理的であるとして補償金(以下「立体駐車場補償金」という。)を支払い、その支払を受けた者が立体駐車場補償金の全額をもって残地内に立体駐車場を設置した場合の立体駐車場補償金の所得税及び法人税の課税関係については、収用等の場合の課税の特例(措法33、33の4、64、65の2)の適用はなく、下記のとおり取り扱われると解してよろしいか照会いたします。
 なお、立体駐車場補償金は、本県に返還を要しないものです。

(1) 所得税
個人が、立体駐車場補償金の交付を受けた年に、当該立体駐車場補償金を立体駐車場の設置費用に充てた場合、所得税法第42条《国庫補助金等の総収入金額不算入》の規定の適用がある。
(2) 法人税
法人が、立体駐車場補償金の交付を受けた事業年度に、当該立体駐車場補償金を立体駐車場の設置費用に充てた場合で、当該立体駐車場につき、その設置費用に充てた立体駐車場補償金の額に相当する金額(以下「立体駐車場補償金相当額」といいます。)の範囲内でその帳簿価額を損金経理により減額し、又はその立体駐車場補償金相当額以下の金額をその事業年度の確定した決算において積立金として積み立てる方法により経理したときは、法人税法第42条《国庫補助金等で取得した固定資産等の圧縮額の損金算入》の規定の適用がある。
(注) 収用等の対象となった一団の土地の所有者と建物及び自動車の保管場所の所有者が異なる場合には、収用の対価たる金額は一団の土地の所有者に、立体駐車場補償金は建物及び自動車保管場所の所有者に支払われることとなりますが、その場合も上記と同様に取り扱われると解しています。

2 事前照会に係る取引等の事実関係

 本件における立体駐車場補償金の事実関係は次のとおりです。
本県は、本県の施行する街路整備事業により、50世帯の共同住宅(賃貸アパート)の用に供されている一団の宅地2,000平方メートルのうち、当該共同住宅の自動車保管場所の用に供されている部分の一部500平方メートルを事業用地として取得する必要があり、当該事業用地取得後、残地内において自動車20台分の駐車スペースが不足することになります。
 このため、本県は、上記1に基づき保管場所の機能回復の方法を検討した結果、上記1の丸4の残地内に立体駐車場を設置する方法を合理的な方法と決定し、上記一団の宅地の所有者がこれに従うことを確認した上で、立体駐車場補償金を支払いました。
 そして、その支払を受けた者は、立体駐車場補償金の全額をもって残地内に立体駐車場を設置します。

3 照会者の求める見解となることの理由

1 収用等の場合の課税の特例

(1) 所得税
 個人の有する資産(棚卸資産を除きます。)が収用され、収用等の場合の課税の特例の対象となる補償金等は、名義のいかんを問わず、収用等による譲渡の目的となった資産の収用等の対価たる金額(対価補償金)をいうところ(措法33丸4、33の4丸1、措通33-8、33-9)、立体駐車場補償金は、収用等の対価とは別に支払われる残地内に立体駐車場を設置するための補償金であり、収用等による譲渡の目的となった資産である土地の収用等の対価でないため、対価補償金に該当しないものと考えます。
 また、収益補償金、経費補償金及び移転補償金にも該当しない(措通33−8)ことから、租税特別措置法通達33−11等の定めにより対価補償金として取り扱うことのできる補償金にも該当しないものと考えます。
 したがって、個人が取得する立体駐車場補償金について、収用等の場合の課税の特例の適用はないものと考えます。
(2) 法人税
 法人の有する資産(棚卸資産を除きます。)が収用され、収用等の場合の課税の特例の対象となる補償金等は、個人の場合と同様、名義のいかんを問わず、収用等による譲渡の目的となった資産の収用等の対価たる金額(対価補償金)をいうところとなります(措法64丸3、65の2丸1、措通64(2)-1、64(2)-2)。
 本件の場合、上記(1)のとおり、立体駐車場補償金は対価補償金に該当せず、対価補償金として取り扱うことのできる補償金にも該当しないことから(措通64(2)-5等)、法人が取得する立体駐車場補償金についても、収用等の場合の課税の特例の適用はないものと考えます。

2 国庫補助金等の特例

(1) 所得税
イ 所得税法第42条第1項は、個人(居住者)が、国庫補助金等の交付を受け、その年においてその国庫補助金等をもってその交付の目的に適合した固定資産の取得又は改良(以下「取得等」といいます。)をし、その年12月31日までに国庫補助金等の返還を要しないことが確定した場合には、国庫補助金等のうちその固定資産の取得等に充てた部分の金額の相当する金額は、各種所得の金額の計算上、総収入金額に算入しない旨規定しています。
ロ 本件の場合、個人に交付される立体駐車場補償金は、本件要領に基づき、残地の従来の機能である駐車場の機能を保全するために必要な立体駐車場を設置するための費用に係る補償金として本県から交付されるものであり、国庫補助金等に該当します。
 そして、立体駐車場補償金は、本県に返還を要しないものですから、立体駐車場補償金の交付を受けた年において交付の目的である立体駐車場の設置費用に充てられた場合、所得税法第42条の規定の適用があるものと考えます。
 したがって、立体駐車場補償金相当額は、各種所得の金額の計算上、総収入金額に算入しないこととする取扱いができます。
(参考) 立体駐車場補償金が立体駐車場の設置費用に充てられない部分の金額は、一時所得に係る総収入金額に算入されることになります(所基通34-1(9))。
(2) 法人税
イ 法人税法第42条第1項は、法人(内国法人)が、国庫補助金等の交付を受け、その事業年度においてその国庫補助金等をもってその交付の目的に適合した固定資産の取得等をした場合(その事業年度の終了の時までに当該国庫補助金等の返還を要しないことが確定した場合に限ります。)で、当該固定資産につき、その取得等に充てた国庫補助金等の額に相当する金額(以下「圧縮限度額」といいます。)の範囲内でその帳簿価額を損金経理により減額し、又はその圧縮限度額以下の金額をその事業年度の確定した決算において積立金として積み立てる方法により経理したときは、その減額し又は経理した金額に相当する金額は、その事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入する旨規定しています。
ロ 本件の場合、上記(1)ロのとおり、立体駐車場補償金は国庫補助金等に該当し、本県に返還を要しないものですから、立体駐車場補償金の交付を受けた事業年度において、その全額が交付の目的である立体駐車場の設置費用に充てられた場合で、当該立体駐車場につき立体駐車場補償金相当額の範囲内で帳簿価額を損金経理により減額し、又は立体駐車場補償金相当額以下の金額をその事業年度の確定した決算において積立金として積み立てる方法により経理したときは、法人税法第42条の規定の適用があるものと考えます。
 この場合、立体駐車場補償金相当額のうち上記減額した又は経理した金額に相当する金額は、その事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入することになります。
(参考) 当然のことではありますが、立体駐車場補償金は、その交付を受けた事業年度において益金の額に算入することになります。