1 事前照会の趣旨

一定の自然災害により、その生活基盤に著しい被害を受けた場合で、その被害の規模が一定以上であれば、被災者生活再建支援法(以下「支援法」といいます。)に基づき、生活再建を支援するための支援金(以下「法定支援金」といいます。)の支給を受けることができるところ、愛知県では、同県の被災者生活再建支援事業費補助金交付要綱に基づき、支援法による支援の対象とならない被災者に対して県内の市町村が被災者生活再建支援金の支給を行う場合、当該市町村に対して被災者生活再建支援事業費補助金を交付することとしています。
 この度、愛知県日進市(以下「日進市」といいます。)では、「日進市被災者生活再建支援金支給要綱」(以下「本件市要綱」といいます。)を策定し、支援法による支援の対象とならない被災者に対して日進市被災者生活再建支援金(以下「本件支援金」といいます。)を支給することとしていますが、当該被災者が本件支援金の支給を受けた場合の次の(1)から(3)までの課税関係について、下記3のとおり解して差し支えないか照会します。

(1) 本件支援金は非課税所得に該当するか。

(2) 雑損控除に係る損失の金額の算定に当たって、本件支援金の額を当該損失の金額から控除すべきか。

(3) 住宅借入金等特別控除額の算定に当たって、本件支援金の額を住宅の取得等に係る対価の額又は費用の額から控除すべきか。

2 事前照会に係る取引等の事実関係

(1) 本件市要綱の概要

イ 本件支援金の目的

本件市要綱第1条は、自然災害により、その生活基盤に著しい被害を受けた世帯のうち、支援法による支援の対象とならない世帯の生活再建を図ることを目的とする旨定めています。

ロ 自然災害

本件市要綱第2条(1)は、自然災害とは、暴風、豪雨、豪雪、洪水、高潮、地震、津波、噴火、竜巻、落雷その他の異常な自然災害により市内において生じる被害をいう旨定めています。

ハ 本件支援金の支給対象

本件市要綱第3条は、自然災害による被災世帯(1居住する住宅が全壊した世帯(全壊世帯)、1居住する住宅が半壊し又は住宅の敷地に被害が生じ、当該住宅の倒壊を防止する必要があるなどの事由により当該住宅を解体するに至った世帯(半壊解体・敷地被害解体世帯)、1被害が発生する危険な状況が継続することなどの理由により、居住する住宅が居住不能のものとなり、かつ、その状態が長期にわたり継続することが見込まれる世帯(長期避難世帯)、1居住する住宅が半壊し、大規模な補修を行わなければ当該住宅に居住することが困難であると認められる世帯(大規模半壊世帯))の世帯主に対し、次表に掲げる本件支援金を支給する旨定めています。

(単位:万円)

区分 基礎支援金※1 加算支援金※2 合計
(支給額/世帯)
住宅の被害の程度 支給額 住宅の再建方法 支給額
複数世帯 全壊
半壊解体・敷地被害解体
長期避難
100 建設・購入 200 300
補修 100 200
賃借 50 150
大規模半壊 50 建設・購入 200 250
補修 100 150
賃借 50 100
単数世帯 全壊
半壊解体・敷地被害解体
長期避難
75 建設・購入 150 225
補修 75 150
賃借 37.5 112.5
大規模半壊 37.5 建設・購入 150 187.5
補修 75 112.5
賃借 37.5 75

※1 基礎支援金

基礎支援金とは住宅の被害の程度に応じて支給する支援金をいい、使途の制限は一切なく、事後の報告も求めていません。法定支援金のうち住宅の被害の程度に応ずる部分と同額となっています。

※2 加算支援金

加算支援金とは住宅の再建方法に応じて支給する支援金をいい、支給を受けるには居住する住宅を建設する等の要件がありますが、その使途については制限していません。法定支援金のうち住宅の再建方法に応ずる部分と同額となっています。

ニ 状況報告

本件市要綱第8条は、支援対象者は、申請内容どおりに住宅の再建を完了したことが分かる書類を、被災者生活再建支援金再建状況報告書により再建後速やかに市長に提出しなければならない旨定めています。

(2) 本件市要綱と支援法の比較

本件支援金の支給は、日進市が、支援法による支援の対象とならない被災者に対して、支援法と同程度の支援となるよう行うものであるため、支援法と本件市要綱とでは、その対象となる自然災害の規模や被害発生世帯数の規模が異なるほか、その手続において、本件市要綱では住宅の再建が完了したことを確認するため状況報告を求めるという点が異なっていますが、本件支援金の交付目的、対象となる住宅の被害の程度及び支給する金額は同じものとなっています。

3 2の事実関係に対して事前照会者の求める見解となることの理由

(1) 本件支援金は非課税所得に該当するか否かについて

資産に加えられた損害につき支払を受ける相当の見舞金及びこれに類するものは、事業所得等に係る収入金額に代わる性質を有するもの、役務の対価たる性質を有するもの及び必要経費に算入される金額を補てんするためのものを除き、所得税を課さないこととされています(所得税法第9条第1項第17号、所得税法施行令第30条第3号)。
 また、災害等の見舞金で、その金額がその受贈者の社会的地位、贈与者との関係等に照らし、社会通念上相当と認められるものについては、所得税法施行令第30条の規定に基づき、課税しないものと取り扱われています(所得税基本通達9−23)。
 これを本件についてみると、本件支援金は、自然災害により居住する住宅が1全壊、1半壊解体・敷地被害解体、1長期間居住不能(長期避難)、1大規模半壊の被害を受けた世帯を対象としており、当該住宅を含む資産に生じた損害に対して支給されるものであり、また、災害に伴い地方公共団体が被災者に対して支払う見舞金と捉えることができるものであり、被害及び再建方法に応じて法定支援金と同額が支給されることを踏まえれば、その金額も社会通念上相当であると考えます。
 したがって、本件支援金は、資産に加えられた損害につき支払を受ける相当の見舞金に該当し、また、事業所得等に係る収入金額に代わる性質を有するもの、役務の対価たる性質を有するもの及び必要経費に算入される金額を補てんするためのものではないことから、非課税所得に該当するものと考えます。

(2) 雑損控除に係る損失の金額について

雑損控除に係る損失の金額の算定に当たっては、保険金、損害賠償金その他これらに類するものにより補てんされる部分の金額については当該損失の金額から除く旨規定されています(所得税法第72条第1項)。
また、法定支援金については、東日本大震災後の実情などを踏まえ、雑損控除に係る損失の金額から控除しないものと取り扱われています(平成23年12月付「被災者生活再建支援金の税務上の取扱いについて−所得税の雑損控除の取扱いを見直します−」参照)。
 これを本件についてみると、本件支援金は、被災世帯の生活再建を目的として支給されるものであるところ、被災者の損害額を個別具体的に算定の上、その金額の全部又は一部を補てんするというものではなく、使途を制限しない定額渡切りとなっていること、また、その交付目的、対象となる住宅の被害の程度及び支給する金額は支援法と同じであることからすれば、本件支援金は、法定支援金と同様に、雑損控除に係る損失の金額から控除すべきとされている保険金、損害賠償金その他これらに類するものには該当しないと解するのが相当であると考えます。
 したがって、雑損控除に係る損失の金額の算定に当たっては、本件支援金の額を当該損失の金額から控除しないものとして取り扱うことが相当であると考えます。

(3) 住宅借入金等特別控除の対象となる住宅の取得等に係る対価の額又は費用の額について

住宅借入金等特別控除額の算定に当たっては、補助金等の交付を受ける場合には、住宅の取得等に係る対価の額又は費用の額から当該補助金等の額を控除する旨規定されているところ、当該補助金等とは、国若しくは地方公共団体から直接交付される補助金又は国若しくは地方公共団体から補助金等の交付事務の委託を受けた法人を通じて交付されるもので、住宅の取得等と相当の因果関係のあるものをいうものと取り扱われています(租税特別措置法第41条第1項、租税特別措置法施行令第26条第5項、租税特別措置法に係る所得税の取扱いについて41−26の2)。
 また、法定支援金は、住宅の取得等と相当の因果関係を有するとは認められないことから、法定支援金の金額を住宅の取得等の対価の額又は費用の額から控除する必要はないものと取り扱われています(平成23年12月27日付個人課税課情報第11号「平成23年分の住宅税制の適用に当たり留意すべき事項について(情報)」第2質疑応答の6参照)。
 これを本件についてみると、本件支援金は被災世帯の生活再建を目的として地方公共団体から直接交付される補助金であるところ、被災者の再建する住宅の取得等に係る対価の額又は費用の額を個別具体的に算定の上、その金額の全部又は一部を補てんするというものではなく、使途を制限しない定額渡切りとなっていること、また、その交付目的、対象となる住宅の被害の程度及び支給する金額は支援法と同じであるところ、その手続について、本件市要綱では住宅の再建が完了したことを確認するため状況報告を求めるという点では支援法と相違があるものの、当該状況報告は住宅の再建が申請された方法で行われていることを確認するために求めているものであり、実際に本件支援金をその申請した住宅の再建のための支出に充てたか否かを確認するものではないことからすれば、本件支援金は、法定支援金と同様に、住宅の取得等と相当の因果関係を有するものではないと解するのが相当であると考えます。
 したがって、住宅借入金等特別控除額の算定に当たっては、本件支援金の額を住宅の取得等に係る対価の額又は費用の額から控除しないものと取り扱うことが相当であると考えます。