別紙1 事前照会の趣旨及び事実関係

私は、平成17年に家庭裁判所から成年後見人として選任され、その後、成年被後見人(物事を判断する能力が十分でない者)の後見の事務(財産管理や契約など法律行為に関するものであり、以下「本件後見事務」といいます。)を行っていますが、成年被後見人から本件後見事務に対する報酬を受領していませんでした。
 そのため、平成26年に家庭裁判所に対して、成年後見人選任時から平成26年までの本件後見事務に係る「成年後見人に対する報酬の付与」の申立て(以下「本件報酬付与申立て」といいます。)を行ったところ、本件後見事務に係る報酬を付与する旨の審判の告知がされたため、成年被後見人から成年後見人選任時から本件報酬付与申立てまでの間の本件後見事務に対する報酬(以下「本件報酬」といいます。)を受領しました。 本件報酬の収入すべき時期は、当該審判の告知によってその効力が生じた時と解してよろしいか伺います。
 (注)私は給与所得者であり、後見の事務を事業として行っているわけではありませんので、本件報酬は雑所得に該当するものであることを照会の前提とします。

別紙2 照会者の求める見解となることの理由

精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にある者について、家庭裁判所は、本人、配偶者、四親等内の親族等の請求により、後見開始の審判をすることができ(民法7)、後見開始の審判を受けた者を成年被後見人として、成年後見人を付すこととされています(民法8)。成年後見人は、成年被後見人の財産を管理し、その財産に関する法律行為について成年被後見人を代表するなどの後見の事務を行うこととなります(民法859)。
 この後見の事務を行う成年後見人に対して、家庭裁判所は、成年被後見人の財産の中から相当な報酬を与えることができるとされています(民法862)。しかしながら、成年後見人に対して報酬を与えるかどうかについて及びその額をいくらにするかについては、家庭裁判所が諸事情を考慮し、その審判により定めることとされていますので(家事事件手続法39)、家庭裁判所の審判があるまでは、その報酬を受けることができるか否かについて未確定な状態となっています。そして、家庭裁判所により成年後見人に審判の告知が行われ、その効力が生ずることによって初めて、成年後見人がその報酬を受けることができることが確定し、また、その額も確定することとなります(家事事件手続法74)。
 ところで、人的役務の提供による収入すべき時期は、役務提供を完了した日が原則とされています。ただし、人的役務の提供による報酬を期間の経過等に応じて収入する特約又は慣習がある場合におけるその期間の経過等に対応する報酬については、その特約又は慣習によりその収入すべき事由が生じた日とされています(所基通36-14(2)、36-8(5))。この点について、成年後見人は、通常、成年被後見人が病気などから回復し判断能力を取り戻したり、亡くなるまで、成年後見人として責任を負うと考えられることからすると、その任期満了日、つまり役務提供の完了した日は、成年被後見人の死亡日等になると解されます。
 しかしながら、本件報酬は、その成年後見人の任期中である成年後見人選任時から本件報酬付与申立てまでの期間に対応するものであること、並びに家庭裁判所の審判の告知によって成年後見人がその報酬を受けることができること及びその額が確定することを踏まえれば、上記ただし書にいう期間の経過等に対応する報酬の取扱いに準じて、当該審判の告知によってその効力が生じた時において収入すべき事由が生じたものとして取り扱うことが相当であると考えます。