別紙1 照会の趣旨

静岡県社会福祉士会では、成年後見制度の下、後見開始の審判の申立てがあった者について家庭裁判所から成年後見人の候補者の推薦依頼を受け、専門職成年後見人として社会福祉士を推薦しているところです。
 ところで、この成年後見制度における成年被後見人とは、家庭裁判所において「精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にある者」として後見開始の審判を受けた者をいいますので(民法7、8)、家庭裁判所から後見開始の審判を受け、社会福祉士が成年後見人としてその事務を行うに当たり、成年被後見人は、所得税法上、特別障害者として障害者控除の適用があるのではないかとの疑義が寄せられておりますので、その適用があると解してよいか照会します。

別紙2 照会に係る取引等の事実関係

成年後見制度とは、認知症、知的障害及び精神障害などによって物事を判断する能力が十分でない者について、本人の権利を守る援助者(成年後見人)を選ぶことで、成年被後見人を法律的に支援する制度で、次のとおりとなっています。

1 後見開始の審判等
 「精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にある者」については、家庭裁判所は、本人、配偶者、四親等内の親族、未成年後見人、未成年後見監督人、保佐人、保佐監督人、補助人、補助監督人又は検察官の請求により、後見開始の審判をすることができることとされ(民法7)、後見開始の審判を受けた者は、成年被後見人とし、これに成年後見人を付すこととされています(民法8)。
 そして、成年後見人は、成年被後見人の財産を管理し、かつ、その財産に関する法律行為について成年被後見人を代表し(民法859)、成年被後見人が病気などから回復し判断能力を取り戻したり、あるいは亡くなったりするまでの間、その責任を負うこととなります。

2 家庭裁判所による鑑定
 家庭裁判所は、後見開始の審判をするには、本人の精神の状況について医師その他適当な者に鑑定をさせなければならないこととされ(家事審判規則24)、裁判所が指定した鑑定人により鑑定が行われることになりますが、鑑定人となる者は、本人の精神の状況について医学上の専門的知識を用いて判断されることから、それにふさわしい者(専門的な知見を有する医師)が選任されます。
 鑑定内容は、最高裁判所事務総局家庭局が示している「成年後見制度における鑑定書作成の手引」により示された「鑑定書記載ガイドライン」によると、丸1精神上の障害の有無、内容及び障害の程度、丸2自己の財産を管理・処分する能力、丸3回復の可能性などにつき、精神医学的診断及び能力判定等が行われます。

(注) 後見開始の審判の内容等は、後見開始の審判がされたときに、その裁判所書記官の嘱託に基づき後見登記が行われますので、法務局が発行する登記事項証明書により確認することができます。

別紙3 照会者の求める見解となることの理由

所得税法上、「精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にある者」は特別障害者とされ(所法2丸1二十九、所令10丸2一)、居住者又は控除対象配偶者若しくは扶養親族が特別障害者である場合には、40万円の障害者控除が認められています(所法79)。
 この「精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にある者」について、所得税法に特段の定義はなく、民法第7条に定める「精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にある者」と同一の用語を用いていることから、家庭裁判所が、鑑定人による医学上の専門的知識を用いた鑑定結果に基づき、「精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にある者」として後見開始の審判をした場合には、所得税法上も、成年被後見人は「精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にある者」に該当し、障害者控除の対象となる特別障害者に該当すると考えられます。
 この点、現行の所得税法の規定が、「民法の一部を改正する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律(平成11年12月8日法律第151号)」により、「民法の一部を改正する法律(平成11年12月8日法律第149号)」による民法の改正に併せて改正されていることからも、民法に定める「精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にある者」は、所得税法に定める「精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にある者」に該当すると考えられます。
 なお、後見開始の審判の事実は、上記2の(注)のとおり、登記事項証明書により確認することができます。