別紙1 事前照会の趣旨

 当県では、県内の地域医療の確保を図ることを目的として、B県医学生修学資金貸付規則(以下「本件規則」といいます。)を制定し、平成20年4月から、将来当県内の医療機関において医師として従事しようとする大学の医学部の学生に対して、修学に要する資金を無利息で貸与する制度(以下「本件制度」という。)を実施しています。
 本件制度では、本件制度に基づいて奨学金の貸付けを受けた医学生(以下「奨学生」といいます。)が、卒業後一定の期間、医師として当県内の医療機関において医療法第30条の4第2項第5号イからヘまでに掲げる医療(注)に係る業務(以下単に「業務」といいます。)に従事した場合には、奨学金の返還債務を免除することとしています。
 この場合、奨学生が返還債務を免除されたことにより受ける経済的利益については、別紙3のとおり取り扱われると考えてよろしいか照会いたします。
(注)具体的には、丸1救急医療、丸2災害時における医療、丸3へき地の医療、丸4周産期医療、丸5小児医療(小児救急医療を含む。)及び丸6その他特に知事が必要と認める医療をいいます。

別紙2 事前照会に係る取引等の事実関係

1 本件奨学金等の対象者及び貸付金額等

 本件制度では、本件規則(平成20年4月施行)に基づき、下表のとおり修学に要する資金を、第1種修学資金(以下「本件奨学金1」といいます。)又は第2種修学資金(以下「本件奨学金2」といい、本件奨学金1と併せて「本件奨学金等」といいます。)として無利息で貸与しています。
 なお、本件制度では、奨学生が一定の要件に該当することとなったときに、本件奨学金等の全額についてその返還債務を免除します。

項目 第1種奨学金(本件奨学金1) 第2種奨学金(本件奨学金2)
対象者 次の要件を全て満たす者
  • 丸1 B大学医学部医学科の地域枠入学者
  • 丸2 大学卒業後の一定期間、県内の医療機関において、業務に従事する意思のある者
次の要件を全て満たす者
  • 丸1 B大学医学部医学科在学者(地域粋入学者を除く)又は県内出身者であってB大学以外の大学の医学を履修する課程に在籍している者
  • 丸2 大学卒業後の一定期間、県内の医療機関において、業務に従事する意思のある者
※他の同種の修学資金の貸付等を受けている者を除く。
募集人数 25名(新規貸付分) 10名(新規貸付分)
貸付金額 月額:100,000円
授業料相当額:535,800円(年額)
入学金相当額:282,000円(初年度入学時)
(6年間の合計:10,696,800円)
月額:100,000円
(6年間の合計:7,200,000円)
利息 無利息 同左
貸付期間 原則として、大学の正規の修業期間 同左

2 返還免除の要件

 本件奨学金等の返還債務が免除される要件は次のとおりです。
 なお、返還免除を受けない場合は、返還すべき理由が生じた日の属する月の翌月から起算して1年以内に、貸与を受けた本件奨学金等を一括して返還しなければならないこととしています。

(1) 本件奨学金1

 次の要件を全て満たした場合は、返還債務の全額を免除します。

  • 丸1 医師免許取得後、直ちに臨床研修を県内医療機関で修了すること
  • 丸2 臨床研修修了後引き続き、B県内協議会(注)が奨学生の希望を踏まえて作成するプログラムに基づき、県内医療機関で貸付期間の1.5倍に相当する期間を業務に従事し、そのうちの3分の2に相当する期間を知事が指定する医療機関(以下「指定医療機関」という。)に勤務すること

(注) B県内協議会は、B県内に勤務する医師の育成と地域医療の確保を目的としてB県内の主要9病院及びB大学医学部によって構成される組織です。

【例】本件奨学金1の貸付けを6年間受けた場合における返還免除に必要な勤務期間

大学6年間 臨床研修 業務従事必要期間9年(6年×1.5)
貸付期間
(6年)
(2年間)
県内医療機関
1 2 3 4 5 6 7 8 9
指定医療機関 県内医療機関 指定医療機関

(2) 本件奨学金2

 次の要件を全て満たした場合は、返還債務の全額を免除します。

  • 丸1 医師免許取得後、直ちに臨床研修を県内医療機関で修了すること
  • 丸2 臨床研修修了後、引き続き県内医療機関で貸付期間と同期間(貸付期間が2年未満の場合は2年)を業務に従事し、そのうちの2分の1に相当する期間を指定医療機関に勤務すること

(3) 指定医療機関の範囲

 上記(1)及び(2)における指定医療機関として、公的な医療機関等を中心に95の医療機関が指定されていますが、これらのうち当県が直接運営する病院が1機関、当県が出資して設立した地方独立行政法人が運営する病院が3機関含まれています。

別紙3 事前照会者の求める見解となることの理由

 所得税法第9条第1項第15号では、学資に充てるため給付される金品(以下「学資金」といいます。)は非課税とされていますが、学資金であっても、給与その他対価の性質を有するものは、非課税の対象から除くと規定されています。
 また、市販されている書籍では、学生に対し卒業後自社に勤務することを条件に奨学金を無利息で貸与し、一定期間勤務すればその返済を免除する場合の課税関係について、将来の雇用を条件として支給するものは、給与その他対価の性質を有するものと認められるので非課税の学資金には該当しないとされています。
 すなわち、学資金の返還免除に係る経済的利益が所得税法第9条第1項第15号に規定する学資に充てるため給付される金品として非課税となるかどうかは、給与その他対価の性質を有するか否かにより判断することとなると考えます。
 本件制度においては、大学卒業後の一定期間に県内の医療機関で業務に従事する意思のある者を貸付対象とし、その返還免除についても、医師免許取得後貸付期間に応じた一定期間、県内医療機関において業務に従事することを要件とするもので、本件奨学金等の貸与者である当県が運営する医療機関への勤務を条件とするものではありません。
 また、当該一定期間のうちの一部の期間(3分の2又は2分の1)は、指定医療機関において業務に従事することが求められていますが、この指定医療機関として現在95の医療機関を指定しており、そのうち当県が直接運営する医療機関及び当県が出資して設立した医療機関(地方独立行政法人が運営)は4機関にすぎません。
 さらに、県内医療機関及び本件奨学金2の場合の指定医療機関への勤務は奨学生の選択によることとし、本件奨学金1の場合の指定医療機関への勤務についても、奨学生の希望を踏まえた上でB県内協議会が作成したプログラムに基づき決定することとしています。
 このように、本件制度においては、学資金の貸与をした者の下での勤務にかかわりなく学資金の貸与及び返還免除が行われることから、本件奨学金等の貸与及び返還免除と県内医療機関又は指定医療機関での勤務という役務の提供とは対価関係になく、その返還免除による経済的利益(債務免除益)は、所得税法第9条第1項第15号に規定する学資金として、非課税になると考えます。
 なお、本件奨学金1では、入学金及び授業料とは別に毎月10万円の奨学金を貸与することとしていますが、これは、下宿代や通学費用、食費、教科書や医学書の購入費用など、医学生が修学する上で必要と認められる範囲で貸与するものであり、学資金として相当なものと考えています。