1 事前照会の趣旨

本県においては、ボランティア活動をはじめとする市民が行う自由な社会貢献活動としての特定非営利活動(特定非営利活動促進法第2条第1項に規定する特定非営利活動をいいます。)その他の社会貢献活動を促進するため、静岡県社会貢献活動促進基金条例による静岡県社会貢献活動促進基金(以下「ふじのくにNPO活動基金」といいます。)を創設し、静岡県内外の住民、法人及び団体(以下「県民等」といいます。)からの寄附を広く募集することとしました。

県民等から募集する寄附金は、次の3種類です。

丸1 特定の団体の社会貢献活動への支援を希望して行う寄附金(団体支援寄附) 
丸2 社会貢献活動の種類及び活動区域に関して具体的な支援を希望する寄附金(テーマ希望寄附)
丸3 静岡県内の社会貢献活動を広く支援するための寄附金(一般寄附)

ところで、法人税法第37条第3項第1号又は所得税法第78条第2項第1号の「国又は地方公共団体に対する寄附金」とは、国又は地方公共団体(以下「国等」という。)において採納されるものをいいますが、国等に対して採納の手続を経て支出した寄附金であっても、その寄附金が特定の団体に交付されることが明らかであるような場合には一般の寄附金として取り扱うこともあり得ると考えています。

この点、本県においては、県民等から募集する寄附のうち、

  • ・ 団体支援寄附(上記丸1)については、寄附をする県民等が助成金の交付先として希望するNPO法人等の名称を記載することができること

  • ・ テーマ希望寄附(上記丸2)については、寄附をする県民等が希望する特定の支援内容を記載することができ、その支援内容を行う団体が一つしかない場合には、その団体への寄附となることもありうること

から、その支出した寄附金は国等に対する寄附金に該当しない(一般の寄附金に該当する)のではないかという疑問が生じることも考えられます。

本県としては、このふじのくにNPO活動基金を活用したNPO法人等への支援を促進する観点から、県民等が特定のNPO法人等へ助成することを希望して支出する寄附金及び特定の支援内容を希望して支出する寄附金についての取扱いを明らかにすることにより県民等が寄附しやすい環境を整備したいと考えております。

つきましては、この募集に応じて県民等が支出する団体支援寄附及びテーマ希望寄附が、法人税法第37条第3項第1号又は所得税法第78条第2項第1号の「国又は地方公共団体に対する寄附金」に該当するものと解して差し支えないか照会申し上げます。

2 事前照会に係る取引等の事実関係

ふじのくにNPO活動基金事業の概要

1 事業目的

 ボランティア活動をはじめとする市民が行う自由な社会貢献活動としての特定非営利活動その他の社会貢献活動を促進するための事業を行うことを目的とする。

2 事業内容

 ふじのくにNPO活動基金事業とは、次に掲げる事業等から成り立っている。

(1) 新しい公共支援事業及びその事業管理運営事務(県の事務)

(2) NPO活動助成事業(助成事業)及びその事業管理運営事務(県の事務)

 次の丸1から丸3の事業をする者に対して助成を行う事業をいう。

  • 丸1 団体支援事業
     寄附を申込む県民等が支援を希望した助成対象団体(下記5参照)が企画・実施する社会貢献活動事業
  • 丸2 テーマ指定事業
     寄附を申込む県民等の希望に基づき知事が指定したテーマに関して、助成対象団体が企画・実施する社会貢献活動事業
  • 丸3 自由提案型事業
     助成対象団体が企画・実施する社会貢献活動事業

(3) その他のNPO支援施策(県の事業)

(注)  社会貢献活動事業とは、特定非営利活動促進法別表に掲げる17の特定非営利活動を行う事業である。なお、特定非営利活動には、例えば、丸1保健、医療又は福祉の増進を図る活動、丸2社会教育の推進を図る活動、丸3まちづくりの推進を図る活動、丸4学術、文化、芸術又はスポーツの振興を図る活動が含まれる。

3 基金の造成

 ふじのくにNPO活動基金事業を行うため、次の資金により基金を造成する。これらの資金のうち(1)及び(3)は、県の歳入(一般会計)として受け入れ、ふじのくにNPO活動基金として管理する。

(1) 県民等からの3種類の寄附金

  • 丸1 団体支援寄附
     特定の団体の社会貢献活動への支援を希望して行う寄附金
  • 丸2 テーマ希望寄附
     社会貢献活動の種類及び活動区域に関して具体的な支援を希望する寄附金
  • 丸3 一般寄附
     静岡県内の社会貢献活動を広く支援するための寄附金

(注)

  • 1 県民等からの申し出がある場合には、上記丸1の団体支援寄附にあっては、県民等が助成金の交付先として希望する助成対象団体の名称等を、上記丸2のテーマ希望寄附にあっては、県民等が助成金の交付先として希望する支援の内容等を記載することができる。
  • 2 県は、交付先の決定等をする際に、上記1の希望に対する配慮をすることとされている。ただし、その配慮は、寄附を行う年度から翌々年度末までの期間について行われ、その期間において希望どおりの交付ができなかったものは一般寄附として取り扱われる。

(2) 県の拠出金

(3) 国の交付金(新しい公共支援事業交付金)

(4) 基金の運用から生ずる収益

4 基金の処分(助成・支出)

 以下のとおり、造成された基金ごとに、これらの資金を財源としてそれぞれ助成事業を行うとともに、県が行う事業管理運営事務及び上記2の(3)(その他のNPO支援施策)に係る経費に使用するものとする。

(1) 県民等からの3種類の寄附金

  • 丸1 団体支援寄附
     上記2の(2)の丸1の団体支援事業を行う助成対象団体に対して助成を行う。
  • 丸2 テーマ希望寄附
     上記2の(2)の丸2のテーマ指定事業を行う助成対象団体に対して助成を行う。
  • 丸3 一般寄附
     上記2の(2)の丸1から丸3の団体支援事業及びテーマ指定事業を含むNPO活動助成事業の対象事業を行う助成対象団体に対して助成を行う。

(注)

  • 1 上記丸1及び丸2については、上記3の(1)の(注)1に記載のとおり、県民等は希望を記載することができるとしているが、この県民等の希望は助成金の交付先及び金額の審査において配慮されるものの、その希望どおりに助成されるものではない。
  • 2 これらの寄附金の一部は、事業管理運営事務(上記2の(2)に係るものに限る。)及びその他のNPO支援施策に係る経費にも使用する。

(2) 県の拠出金

 NPO活動助成事業の助成対象事業を行う助成対象団体に対して助成をするとともに、事業管理運営事務(上記2の(2)に係るものに限る。)及びその他のNPO支援施策に係る経費に使用される。

(3) 国の交付金(新しい公共支援事業交付金)

 新しい公共支援事業を行うとともに、事業管理運営事務(上記2の(1)に係るものに限る。)に係る経費に使用される。

5 基金事業の流れ

(1) 助成対象団体の登録

・  上記2の(2)に掲げる事業の実施団体として登録を受けようとする団体は、ふじのくにNPO活動基金団体登録申請書に団体の概要、事業内容及び活動実績等が分かる資料を添付し、助成対象団体としての登録を申請する。
 なお、登録の申請を行うことができる団体は、次のいずれかに該当する団体とする。

  • 丸1 公益目的事業に関して静岡県内で1年以上の継続的な活動実績があるNPO法人、公益社団法人、公益財団法人
  • 丸2 社会貢献活動に関して静岡県内で1年以上の継続的な活動実績がある一般社団法人、一般財団法人又は社会貢献活動を行う任意団体

・  県は、申請した団体が静岡県社会貢献活動促進基金実施要領第12条に規定する要件を満たす場合は登録し、当該団体宛に通知する(登録期間:2年)。

・  県は、登録した団体の組織・事業の概要、今後の活動方針及び助成希望事業等の情報をホームページ等で広く公表して、県民等からの寄附を募集する。

(2) 寄附の募集

 県民等は、3種類の寄附金のうちいずれかを選択した上で寄附を行うことになる。

(3) 事業の募集

 登録された助成対象団体は、自ら企画・実行する事業につき、3種類の助成対象事業のうちいずれかを選択した上で助成を希望する事業の応募をする。

(4) 運営委員会による県への報告

 有職者で構成する第三者委員会であるふじのくにNPO活動基金運営委員会(以下「運営委員会」という。)において、基金の造成状況を見ながら助成対象団体から提出された申請書等を審査し、その結果に基づき助成対象となる事業及び助成額についての意見等を県に対して報告する。

(5) 助成対象事業と助成金額の決定

 県知事は、運営委員会の報告を斟酌し、個々の助成対象事業及び助成額を決定する。

(6) 助成金の交付

 本県の歳出として、助成の決定した助成対象団体に交付する。

6 基金事業の開始時期

 平成23年4月1日から開始する。

3 事前照会者の求める見解となることの理由

1 国等に対する寄附金について

  • (1) 国等に対する寄附金(その寄附をした者がその寄附によって設けられた設備を専属的に利用することその他特別の利益がその者に及ぶと認められるものを除きます。)について、法人が支出した場合には、その全額が損金の額に算入され(法人税法37丸3一)、個人が支出した場合には、寄附金控除として所得から控除されます(所得税法78丸2一)。
  • (2) 国等に対する寄附金とは、国等において採納されるものをいいますが、国立又は公立の学校等の施設の建設又は拡張等の目的をもって設立された後援会等に対する寄附金であっても、その目的である施設が完成後遅滞なく国等に帰属することが明らかなものは、これに該当するものとして取り扱われております(法人税基本通達9−4−3、所得税基本通達78−4)。
  • (3) 他方、国等に対して採納の手続を経て支出した寄附金であっても、その寄附金が特定の団体に交付されることが明らかである等最終的に国等に帰属しないと認められるもの(いわゆるトンネル寄附)については国等に対する寄附金には該当しないこととされています(法人税基本通達9−4−4、所得税基本通達78−6)。

2 本件への当てはめ

 ふじのくにNPO活動基金事業は、次に掲げる事項からすれば、本県の事業として実施するものであり、また、本県は導管(トンネル)となることなく自ら助成金の支給先を決定しているものと認められることから、県民等が支出する団体支援寄附及びテーマ希望寄附については、上記1の(3)の「特定の団体に交付されることが明らかである等最終的に国等に帰属しないと認められるもの」には該当しないものと考えられます。

  • 丸1 本県のホームページ等において、登録した団体の組織・事業の概要、今後の活動方針及び助成希望事業等の情報の提供や県民等からの寄附の募集を行っており、その事業主体が本県であることが広く周知されていること(ふじのくにNPO活動基金事業の概要5(1))。
  • 丸2 団体支援寄附については、県民等が助成金の交付先として希望するNPO法人等の名称等を、テーマ希望寄附については、県民等が助成金の交付先として希望する事業の内容等を記載することができるが、この県民の希望は助成金の交付先及び金額の審査において配慮されるものの、その希望どおりに助成金が交付されるものではないことが事前に県民等に周知されていること(ふじのくにNPO活動基金事業の概要4(1)(注)1)。
  • 丸3 本件の照会の対象である団体支援寄附及びテーマ希望寄附については、NPO活動助成事業のほか、県が行うNPO活動助成事業管理運営事務及びその他のNPO支援施策の経費にも充当されること(ふじのくにNPO活動基金事業の概要4(1)(注)2)。
  • 丸4 助成事業及び助成金額は、運営委員会の審査結果を斟酌して、県知事が最終決定を行うこと(ふじのくにNPO活動基金事業の概要5(5))。
  • 丸5 助成金は、団体支援寄附及びテーマ希望寄附に係るそれぞれの寄附金のみを財源としているのではなく、一般寄附及び県の拠出金と合わせて造成する基金を財源としていること(ふじのくにNPO活動基金事業の概要4(1)(2))。

 したがって、県民等が支出する団体支援寄附及びテーマ希望寄附については、法人税法第37条第3項第1号又は所得税法第78条第2項第1号の「国又は地方公共団体に対する寄附金」に該当するものとして取り扱って差し支えないものと考えられます。