1 事前照会の趣旨

 当協会は、平成21年4月1日から、三重県下の公立病院(以下「公立病院」という。)へ就職する看護師(以下「交付対象者」という。)に対し、早期離職防止、潜在看護師の復職を促進するとともに、看護師の定着化と公立病院への就職希望者の増加を図ることを目的として、常勤看護師として36か月を超えて勤務したときは、30万円の就職奨励金(以下「本件奨励金」という。)を支給することとしました。
 本件奨励金は、実際の運用上交付対象者の勤務期間が1年経過するごとに10万円ずつ、3回(計30万円)支給することになりますが、その所得区分は、勤務期間が36か月を経過した日の属する年分の一時所得になると解して差し支えないかご照会申し上げます。

2 事前照会に係る取引等の事実関係

  • (1)当協会は、「市町村振興宝くじ(サマージャンボ宝くじ)」の発売収益金を活用し、市町村の健全な発展を図るために必要な諸事業を行い、住民福祉の増進に資することを目的に設立された公益法人です。
  • (2)当協会は、平成21年4月1日から、上述の事業の一環として看護師の早期離職防止と潜在看護師の復職を促進するとともに、看護師の定着化と公立病院への就職希望者数の増加を図ることを目的に、本件奨励金を支給することとしました。
  • (3)本件奨励金の交付対象者は、看護師就職奨励金交付要綱(以下「本件交付要綱」という。)第2条において、「公立病院(※)へ新たに常勤看護師として就業し、36月を超えて勤務した者」と定義され、本件奨励金の金額は、第3条において30万円と定義されていますが、実際の運用においては、交付対象者が公立病院へ就業後、勤務期間が12か月を経過するごとに、10万円ずつ、3回に分けて交付します。
     なお、交付対象者が36か月を経過する前に公立病院を退職した場合であっても、既に支給した本件奨励金の返還は求めません。
     また、本件交付要綱の附則において、本件交付要綱は、平成21年4月1日から適用するとし、平成21年4月1日以降に新たに公立病院へ常勤看護師として就業した者に本件奨励金を交付することとしています。
  • (4)本件奨励金の交付手続は次のとおりです。
  • イ 公立病院は、勤務期間が12か月を経過した交付対象者について、「看護師就職奨励金申請書」及び「交付対象者に関する調書」により当協会へ申請する。
  • ロ 当協会は、公立病院から申請を受けた後、その内容を審査し、適当であると認めた場合に、本件奨励金の交付を決定し、公立病院に「看護師就職奨励金交付金決定通知書」を通知する。
  • ハ 公立病院は、交付対象者に、本件奨励金の交付決定があったことを通知する。
  • ニ 交付対象者は、「看護師就職奨励金交付請求書」にて、当協会に金員支給の請求をする。
  • ホ 当協会は、交付対象者に本件奨励金を交付する。
  • ※ 公立病院とは、地方独立行政法人桑名市民病院、市立四日市病院、亀山市立医療センター、名張市立病院、伊賀市立上野総合市民病院、松阪市民病院、報徳病院、市立伊勢総合病院、国保玉城病院、志摩市民病院、町立南伊勢病院、尾鷲総合病院及び紀南病院をいいます。

3 事前照会者の求める見解となることの理由

(1) 本件奨励金の所得区分について

  •  イ 給与所得について
     所得税法第28条第1項において、「給与所得とは、俸給、給料、賃金、歳費及び賞与並びにこれらの性質を有する給与に係る所得をいう」旨規定されています。
     当協会と看護師との間には雇用契約及びこれに準ずる関係はなく、また、本件奨励金は当協会が行う公益事業の一環として支給するものであるため、給与所得には該当しないと考えます。
  •  ロ 一時所得について
     所得税法第34条第1項において、「一時所得とは、利子所得、配当所得、不動産所得、事業所得、給与所得、退職所得、山林所得及び譲渡所得以外の所得のうち、営利を目的とする継続的行為から生じた所得以外の一時の所得で労務その他の役務又は資産の譲渡の対価としての性質を有しないものをいう」旨規定されています。
     本件奨励金は、3年間にわたって毎年支払が行われることになりますが、本件奨励金の趣旨は、本件交付要綱第2条及び第3条にあるとおり、公立病院に常勤看護師として3年を超えて勤務した者に対して30万円を支給することとしているものであり、実際の運用上3回に分けて交付しているにすぎず、勤務期間が1年を経過するごとに支払う10万円は、一種の前払的な性質を有するものであって、具体的な権利が確定するのは勤務期間が3年を経過したときと考えられます。
     また、本件奨励金の支給は、3年を超えて勤務するという不確実な要素に基因しているものであることからすれば、その所得は、臨時的、偶発的なものであると考えます。
     さらに、当協会と看護師の間には、雇用関係はないため、本件奨励金の支給は、職務行為に対応した給付とはいえず、労務その他の役務の対価としての性質を有していないと考えます。
     以上から、本件奨励金は勤務期間が36か月を経過した日の属する年分の一時所得に該当すると考えます。