1 事前照会の趣旨

 個人甲は、隣接する宅地A及び宅地B(以下、宅地Aと宅地Bを併せて「本件宅地」といいます。)を所有し、その半分を甲の居住用家屋の敷地(以下「居住用部分」といいます。)、残り半分を月極駐車場の敷地(以下「非居住用部分」といいます。)として利用していましたが、平成22年に、甲は、本件宅地を法人乙に1億円で譲渡しました。乙は、本件宅地上に、租税特別措置法(以下「措置法」といいます。)第31条の2《優良住宅地の造成等のために土地等を譲渡した場合の長期譲渡所得の課税の特例》(以下「措置法第31条の2の特例」といいます。)第2項第10号に規定する建築物を建築します。
 この場合、甲は、本件宅地のうち居住用部分については、措置法第31条の3《居住用財産を譲渡した場合の長期譲渡所得の課税の特例》(以下「措置法第31条の3の特例」といいます。)第1項及び措置法第35条《居住用財産の譲渡所得の特別控除》(以下「措置法第35条の特例」といい、措置法第31条の3の特例と併せて「居住用財産の譲渡所得の特例」といいます。)、非居住用部分については、措置法第31条の2の特例の適用を受けることができると解してよろしいかお伺いします。
 なお、その他の措置法第31条の2の特例及び居住用財産の譲渡所得の特例の適用要件を満たしています。

2 事前照会に係る取引等の事実関係

(1) 本件宅地の利用状況等
 宅地Aと宅地Bは隣接し、その半分を所有者甲の居住用家屋の敷地、残り半分を月極駐車場の敷地として利用していました。
本件宅地の利用状況を表した図

(2) 本件の譲渡内容等

イ 譲渡契約
 平成21年○月 譲渡契約(譲渡価額1億円)
(注)建物(居住用家屋)の対価は0円です。
 平成22年○月 本件宅地引渡し

ロ 本件宅地の利用予定
 乙は、本件宅地の上に措置法第31条の2第2項第10号に規定する建築物を建築します。

3 事前照会者の求める見解となることの理由

(1) 法令等の規定

イ 措置法第31条の2の特例
 措置法第31条の2の特例は、個人が譲渡した年の1月1日における所有期間が5年を超える土地等を平成25年12月31日までに優良住宅地等又は確定優良住宅地等予定地のために譲渡した場合に、分離課税の長期譲渡所得に対する税率が軽減される特例です。
 そして、措置法第31条の2第1項かっこ書は「当該譲渡(次条【注:措置法第31条の3】の規定の適用を受けるものを除く。…)」と規定し、措置法第31条の3の特例との重複適用を排除しています。
 また、措置法第31条の2第4項は、「…【注:措置法】第34条から第35条の2まで、…の規定の適用を受けるときは、…【注:措置法第31条の2】第1項…に規定する…譲渡に該当しないものとみなす。」と規定し、措置法第35条の特例との重複適用を排除しています。

ロ 措置法第31条の3の特例
 措置法第31条の3の特例は、個人が譲渡した年の1月1日における所有期間が10年を超える一定の要件に該当する自己の居住用財産(居住用家屋やその敷地である土地等)を譲渡した場合に、分離課税の長期譲渡所得に対する税率が軽減される特例です。
 そして、措置法第31条の3第1項かっこ書は、「居住用財産に該当するものの譲渡(…前条【注:措置法第31条の2】・・・の規定を受けるものを除く。…)」と規定し、措置法第31条の2の特例との重複適用を排除しています。

ハ 措置法第35条の特例
 措置法第35条の特例は、個人が自己の居住用財産を譲渡した場合に、分離課税の譲渡所得の金額から3,000万円(3,000万円に満たない場合は、譲渡所得の金額)を控除する特例です。
 そして、上記イのとおり、措置法第31条の2の特例との重複適用を排除しています。

(2) 措置法第31条の2の特例と居住用財産の譲渡所得の特例の適用関係
 上記(1)のとおり、措置法第31条の2の特例と居住用財産の譲渡所得の特例は、お互いの特例について重複適用ができないことを定めています。
 しかしながら、居住用財産の譲渡所得の特例の対象となるのは居住用財産であり、譲渡した土地建物等に、居住用部分と非居住用部分とがある場合、非居住用部分は同特例の適用対象となりません。
 そうすると、譲渡した土地等に居住用部分と非居住用部分とがある場合において、措置法第31条の2の特例の対象から除かれる同条第1項かっこ書の「次条の規定の適用を受けるもの」とは、措置法第31条の3の特例の適用を受ける居住用部分であり、同特例の適用対象とならない非居住用部分は該当しないものと考えます。
 また、措置法第31条の2第4項は、個人がその有する土地等につき、措置法第35条の規定の適用を受けるときは、当該土地等の譲渡は、措置法第31条の2の特例の譲渡に該当しないものとみなすと規定していることから、措置法第35条の規定の適用を受けない土地等(非居住用部分)の譲渡については、重複適用を排除する措置法第31条の2第4項の規定は適用されないものと考えます。
 したがって、居住用部分について居住用財産の譲渡所得の特例の適用、非居住用部分について措置法第31条の2の特例の適用を受けることができるものと考えます。