T 事前照会の趣旨及び事前照会に係る取引等の事実関係

1 事実関係

(1)  当社は、菓子卸売業などを営む法人であり、その発行済株式の43.3%を甲とその親族(以下「甲一族」といいます。)が、0.8%をA社が、39.5%を公益財団法人であるB法人が、残りの16.4%を甲の親族でない複数の個人が保有しています。
 なお、B法人の基本財産は、全て設立時に甲一族が拠出したものです。
(2)  A社は、菓子製造業を営む法人であり、その発行済株式の全部を甲一族が保有しています。
(3)  当社は、今後A社を被合併法人とする吸収合併(以下「本件合併」といいます。)を行うことを予定しています。

2 照会要旨

甲一族及びA社は当社の発行済株式の50%以下(44.1%)しか保有していませんので、当社とA社との間には支配関係はなく、本件合併が適格合併となるためには、法人税法第2条第12号の8ハに規定する「共同で事業を行うための合併」に該当する必要があることとなりますか。

本件合併を示した図

U 照会者の求める見解の内容及びその理由

1 関係法令

支配関係とは、一の者が法人の発行済株式若しくは出資(当該法人が有する自己の株式又は出資を除きます。以下「発行済株式等」といいます。)の総数若しくは総額の50%を超える数若しくは金額の株式若しくは出資を直接若しくは間接に保有する関係として法人税法施行令第4条の2第1項で定める関係(以下「当事者間の支配の関係」といいます。)又は一の者との間に当事者間の支配の関係がある法人相互の関係をいいます(法法2十二の七の五)。
 当事者間の支配の関係とは、一の者(その者が個人である場合には、その者及び親族等)が法人の発行済株式等の総数又は総額の50%を超える数又は金額の株式又は出資を保有する場合における当該一の者と法人との間の関係(以下「直接支配関係」といいます。)とされ、当該一の者及びこれとの間に直接支配関係がある一若しくは二以上の法人が他の法人の発行済株式等の総数又は総額の50%を超える数又は金額の株式又は出資を保有するときは、当該一の者は当該他の法人の発行済株式等の総数又は総額の50%を超える数又は金額の株式又は出資を保有するものとみなすこととされています(以下「みなし直接支配関係」といいます。)(法令4の2丸1)。

(イメージ)
支配関係を示した図

2 当てはめ

合併当事者の株主構成をみると、甲一族はA社の発行済株式の50%超(全部)を保有していることから、甲とA社との間には当事者間の支配の関係(直接支配関係)があります。一方で、甲一族は当社の発行済株式の43.3%しか保有しておらず、甲一族との間に直接支配関係があるA社が保有する当社株式(0.8%)を合わせても、当社の発行済株式の50%以下(44.1%)しか保有していないこととなるため、甲と当社との間には当事者間の支配の関係はありません。
 ところで、B法人の基本財産は全て甲一族が拠出したものであり、これを「出資」とみた場合、甲とB法人との間には当事者間の支配の関係(直接支配関係)があることとなり、甲一族及びA社が保有する当社株式(44.1%)にB法人が保有する当社株式(39.5%)を合わせると、当社の発行済株式の50%超(83.6%)を保有することとなりますので、甲と当社との間には当事者間の支配の関係(みなし直接支配関係)があるといえるのではないかとの疑義が生じます。
 しかし、「出資」とは、法人が事業を営むための元手として拠出された金銭等の額を意味すると同時に、当該拠出によりその拠出者が取得する持分又は出資持分をも意味すると考えられます。一般財団法人は設立者が拠出した財産(財団)に法人格を与えたものであって、持分又は出資持分という観念はありませんので、一般財団法人の基本財産は「出資」とはいえません。この点、公益財団法人であっても変わりはありません。
 このことからすれば、甲一族はB法人の「出資」を保有せず、甲とB法人との間には当事者間の支配の関係(直接支配関係)があることとはなりませんので、甲と当社との間にも当事者間の支配の関係(みなし直接支配関係)があることとはなりません。
 したがって、当社とA社との間には、支配関係(一の者(甲)との間に当事者間の支配の関係がある法人相互の関係)はないこととなりますので、本件合併の適格判定に当たり、法人税法第2条第12号の8イ及びロの適用はなく、本件合併が適格合併となるためには、同号ハに規定する「共同で事業を行うための合併」に該当する必要があると考えます。