1 事前照会の趣旨

 当法人は、障害児者の地域生活を支援し、地域における社会福祉の増進に寄与することを目的として、特定非営利活動促進法に基づき設立された特定非営利活動法人であり、法人税法上の公益法人等に該当します(特定非営利活動促進法461)。
 ところで、法人税法上、公益法人等については、各事業年度の所得のうち収益事業から生じた所得についてのみ法人税を納める義務があります(法法41ただし書)。
 また、この場合の収益事業とは、販売業、製造業その他一定の事業で、継続して事業場を設けて営まれるものをいいます(法法2十三、法令51)。
 ただし、公益法人等が営む事業が収益事業に該当する場合であっても、その事業に従事する者の総数の半数以上を身体障害者福祉法に規定する身体障害者などの一定の者(以下「身体障害者等」といいます。)が占める場合であって、かつ、その事業がこれらの者の生活の保護に寄与しているものについては、収益事業に含めないこととされています(法令52)。
 当法人は、法人税法上の医療保健業(法令51二十九)に該当する独立した二つの事業を営んでいますが、上記の「その事業に従事する者の総数の半数以上を身体障害者等が占める場合」に該当するかどうかは、個々の事業ごとに判定すると解して差し支えないか照会申し上げます。

2 事前照会に係る取引等の事実関係

 当法人は、法人税法上の医療保健業(法令51二十九)に該当する独立した二つの事業を営んでいます。
 当法人が営む二つの医療保健業に従事する者の構成は、それぞれ次のとおりとなっています。
 一方の事業への従事者は、身体障害者等に該当しない者のみで構成されています。
 他方の事業への従事者は、そのほとんど(半数以上)が身体障害者等で構成されています。
 なお、仮に、「その事業に従事する者の総数の半数以上を身体障害者等が占める場合」に該当するかについて、二つの事業への従事者の総数により判定するというのであれば、他方の事業規模が一方の事業規模よりも大きいことから、「その事業に従事する者の総数の半数以上を身体障害者等が占める場合」に該当することとなります。

3 事前照会者の求める見解となることの理由

 公益法人等については、収益事業を営む場合に限り納税義務があります(法法41ただし書)。ただし、収益事業に従事する身体障害者等がその事業に従事する者の総数の半数以上を占め(以下「身体障害者等従事割合要件」といいます。)、かつ、その事業がこれらの者の生活の保護に寄与しているものである場合は、法人税法施行令第5条第1項に規定する収益事業には含まれず、これに対する法人税の納税義務はないこととなります。
 この身体障害者等従事割合要件に該当するかどうかの判定は、例えば、同一の公益法人が同項第1号の物品販売業と同項第5号の不動産貸付業といった異なる複数の収益事業を営んでいる場合には、身体障害者等従事割合要件は上記のとおり「その事業」ごとに判定することとなりますから、一括で判定するのではなく、各収益事業ごとに判定することになると考えています。
 この点、当法人のように同一の公益法人が同項第29号の医療保健業を複数営む場合には、いずれも同項第29号の医療保健業に該当することから、これを一の事業とみて判定するのではないかとの疑問が生じます。
 しかしながら、以下の理由から、その複数の医療保健業を一つの事業としてではなく、個々の事業ごとに身体障害者等従事割合要件の判定を行うことが相当であると考えられます。

  • 1 例えば、法人税法施行令第5条第1項第29号ルの規定は、公益社団法人等が行う医療保健業のうちハンセン病患者の医療に係る医療保健業のみが非収益事業となる規定であり、当該公益社団法人等が他の医療に係る医療保健業を営む場合には、当該他の医療に係る医療保健業は、原則どおり収益事業となることからすれば、同号の規定は一の事業者が複数の医療保健業を行うことを予定していること。
  • 2 法人税法施行令第5条第2項においては、「次に掲げる事業は、前項に規定する事業に含まれないものとする」と規定されており、これに該当するかどうかを同条第1項各号ごとに判定するとされていない以上、独立した事業ごとに身体障害者等従事割合要件を判定することが相当であること。
  • 3 法人税法施行令第5条第2項の規定が設けられた趣旨は、公益性、特に社会福祉に貢献していると認められる事業については、社会政策上法人税を課すことは適当ではないとして収益事業から除外しているものであると解されるところ(平17.12.21大阪高裁 平17(行コ)第57号など)、本件の一方の事業のように、身体障害者等に該当しない者のみで独立した事業を営んでいるものまで収益事業に含めないとすることは当該趣旨に反すること。
  • 4 本件と異なり、身体障害者等に該当しない者が従事する事業の方が、身体障害者等が従事する事業より規模が大きい場合には、その従事者総数で判定を行うことにより、身体障害者等従事割合要件に該当しないこととなり、上記3の趣旨からすれば収益事業に含める必要のない身体障害者等が従事する事業まで収益事業に含めることとなってしまい、この場合にも3と同様に制度趣旨に反すること。