令和3年11月
熊本国税局

T 調査等の状況

1 所得税の調査等の状況

新型コロナウイルス感染症の影響により、実地調査の件数は減少したが、高額・悪質な不正計算が見込まれる事案を優先して調査し、1件当たりの追徴税額は増加

(1) 調査件数及び申告漏れ等の非違があった件数の状況

実地調査の件数は、特別調査・一般調査が543件(前事務年度1,376件)、着眼調査が104件(同335件)であり、簡易な接触の件数は12,477件(同11,167件)となっています。
 これらの調査等の合計件数は13,124件(同12,878件)であり、そのうち申告漏れ等の非違があった件数は7,076件(同6,833件)となっています。

(2) 申告漏れ所得(調査等の対象となった全ての年分の合計)金額の状況

実地調査による申告漏れ所得金額は、55億9千6百万円(同132億5千9百万円)であり、そのうち特別調査・一般調査によるものは53億1百万円(同127億5千円)、着眼調査によるものは2億9千5百万円(同5億9百万円)となっています。
 また、簡易な接触による申告漏れ所得金額は65億7千8百万円(同63億2千7百万円)となっており、調査等合計では121億7千4百万円(同195億8千6百万円)となっています。

(3) 追徴税額(調査等の対象となった全ての年分の合計で加算税を含む。)の状況

実地調査による追徴税額は、10億1千9百万円(同23億3百万円)であり、そのうち特別調査・一般調査によるものは9億8千8百万円(同22億6千7百万円)、着眼調査によるものは3千1百万円(同3千5百万円)となっています。
 また、簡易な接触による追徴税額は4億5千8百万円(同3億1千4百万円)となっており、調査等合計では14億7千7百万円(同26億1千7百万円)となっています。

(参考)

  • 1 実地調査(特別調査・一般調査)とは、高額・悪質な不正計算が見込まれる事案を対象に深度ある調査を行うもので、特に、特別調査は、多額な脱漏が見込まれる個人を対象に、相当の日数(1件当たり10日以上を目安)を確保して実施しているものです。
  • 2 実地調査(着眼調査)とは、資料情報や申告内容の分析の結果、申告漏れ等が見込まれる個人を対象に実地に臨場して短期間で行う調査です。
  • 3 簡易な接触とは、原則、納税者宅等に臨場することなく、文書、電話による連絡又は来署依頼による面接を行い、申告内容を是正するものです。

〇 所得税の調査等の状況

区分 実地調査 簡易な接触   調査等合計  
        特別・一般   着眼        
項目 対前年比 対前年比 対前年比 対前年比 対前年比
調査等件数 1,376   335   1,711   11,167   12,878  
543 39.5% 104 31.0% 647 37.8% 12,477 111.7% 13,124 101.9%
申告漏れ等の 1,235   200   1,435   5,398   6,833  
非違件数 484 39.2% 57 28.5% 541 37.7% 6,535 121.1% 7,076 103.6%
申告漏れ 百万円 12,750   509   13,259   6,327   19,586  
所得金額 5,301 41.6% 295 58.0% 5,596 42.2% 6,578 104.0% 12,174 62.2%
追徴税額 本税 百万円 1,870   32   1,902   308   2,210  
828 44.3% 28 87.5% 856 45.0% 439 142.5% 1,295 58.6%
加算税 百万円 397   4   401   6   407  
160 40.3% 3 75.0% 163 40.6% 19 316.7% 182 44.7%
百万円 2,267   35   2,303   314   2,617  
988 43.6% 31 88.6% 1,019 44.2% 458 145.9% 1,477 56.4%
一件当たり 申告漏れ 万円 927   152   775   57   152  
所得金額 976 105.3% 284 186.8% 865 111.6% 53 93.0% 93 61.2%
追徴税額 本税 万円 136   10   111   3   17  
152 111.8% 27 270.0% 132 118.9% 4 133.3% 10 58.8%
加算税 万円 29   1   23   0.1   3  
30 103.4% 3 300.0% 25 108.7% 0.2 200.0% 1 33.3%
万円 165   11   135   3   20  
182 110.3% 30 272.7% 158 117.0% 4 133.3% 11 55.0%

(注)

  1. 1 令和2年7月から令和3年6月までの間の実績で、いずれも調査等の対象となった全ての年分の合計の計数である。
  2. 2 上段は、前事務年度の計数である。
  3. 3 「簡易な接触」の件数には、添付書類の未提出に対する提出依頼を行った件数等を含む。
  4. 4 追徴税額(本税)には、復興特別所得税額を含む。
  5. 5 実地調査の件数は、所得税と消費税の実地調査件数である。

(参考) 譲渡所得の調査等の状況

所得税のうち譲渡所得に係る調査等の件数が、405件(前事務年度386件)であり、そのうち申告漏れ等の非違があった件数が、268件(同267件)となっています。申告漏れ所得金額(調査等の対象となった全ての年分の合計)は、18億6千3百万円(同21億1千9百万円)となっています。

〇 譲渡所得の調査等の状況

事務年度等 元事務年度 2事務年度 対前年比
 項目
1        
調査等件数 386 405 104.9
  土地建物等 354 379 107.1
  株式等 32 26 81.3
2        
申告漏れ等の
非違件数
267 268 100.4
  土地建物等 238 242 101.7
  株式等 29 26 89.7
3         ポイント
非違割合
21
69.2 66.2 ▲3.0
  土地建物等 67.2 63.9 ▲3.3
  株式等 90.6 100.0 9.4
4     百万円   百万円  
申告漏れ所得金額 2,119 1,863 87.9
  土地建物等 1,867 1,704 91.3
  株式等 252 159 63.1
5     万円   万円  
1件当たり申告
漏れ所得金額
41
549 460 83.8
  土地建物等 527 450 85.4
  株式等 788 611 77.5

(注)

  1. 1 土地建物等は、土地建物(分離譲渡所得)及び金地金等(総合譲渡所得)である。
  2. 2 土地建物等は、課税年分ごとに1件としている。
  3. 3 計表内の計算は四捨五入の計数を使用している。

2 消費税(個人事業者)の調査等の状況

新型コロナウイルス感染症の影響により、実地調査の件数は減少し、1件当たりの追徴税額についても減少

(1) 調査件数及び申告漏れ等の非違があった件数の状況

実地調査の件数は、特別調査・一般調査が354件(前事務年度912件)、着眼調査が53件(同207件)であり、簡易な接触の件数は3,127件(同1,834件)となっています。
 これらの調査等の合計件数は3,534件(同2,953件)であり、そのうち申告漏れ等の非違があった件数は2,230件(同1,983件)となっています。

(2) 追徴税額(調査等の対象となった全ての年分の合計で加算税を含む。)の状況

実地調査による追徴税額は、2億7千6百万円(同9億5千3百万円)であり、そのうち特別調査・一般調査によるものは2億6千3百万円(同9億1千4百万円)、着眼調査によるものは1千3百万円(同3千9百万円)となっています。
 また、簡易な接触による追徴税額は2億5千3百万円(同1億2千万円)となっており、調査等合計では5億2千9百万円(同10億7千3百万円)となっています。

〇 消費税(個人事業者)の調査等の状況

区分 実地調査 簡易な接触   調査等合計  
  特別・一般   着眼        
項目 対前年比 対前年比 対前年比 対前年比 対前年比
調査等件数 912   207   1,119   1,834   2,953  
354 38.8% 53 25.6% 407 36.4% 3,127 170.5% 3,534 119.7%
申告漏れ等の 808   159   967   1,016   1,983  
非違件数 307 38.0% 46 28.9% 353 36.5% 1,877 184.7% 2,230 112.5%
追徴税額 本税 百万円 743   33   776   115   891  
220 29.6% 11 33.3% 231 29.8% 240 208.7% 470 52.7%
加算税 百万円 171   6   177   5   182  
43 25.1% 3 50.0% 46 26.0% 13 260.0% 59 32.4%
百万円 914   39   953   120   1,073  
263 28.8% 13 33.3% 276 29.0% 253 210.8% 529 49.3%
一件当たり 追徴税額 本税 万円 82   16   69   6   30  
62 75.6% 20 125.0% 57 82.6% 8 133.3% 13 43.3%
加算税 万円 19   3   16   0.3   6  
12 63.2% 5 166.7% 11 68.8% 0.4 133.3% 2 33.3%
万円 100   19   85   6   36  
74 74.0% 25 131.6% 68 80.0% 8 133.3% 15 41.7%

(注)

  1. 1 令和2年7月から令和3年6月までの間の実績で、いずれも調査等の対象となった全ての年分の合計の計数である。
  2. 2 上段は、前事務年度の計数である。
  3. 3 「簡易な接触」の件数には、更正の請求等に基づく減額更正や添付書類の未提出に対する提出依頼を行った件数等を含む。
  4. 4 消費税の追徴税額には、地方消費税(譲渡割額)を含む。

U トピックス(主な取組)

1 富裕層に対する調査状況

有価証券・不動産等の大口所有者、経常的な所得が特に高額な個人など、「富裕層」に対して、資産運用の多様化・国際化が進んでいることを念頭に積極的に調査を実施しています。

  •  令和2事務年度においては、15件(前事務年度34件)実地調査(特別・一般)を実施しました。
  •  1件当たりの申告漏れ所得金額は、2,006万円(同571万円)で、申告漏れ所得金額の総額は3億1百万円(同1億9千4百万円)に上ります。
  •  1件当たりの追徴税額は594万円(同200万円)で、所得税の実地調査(特別・一般)全体の182万円に比べ3.3倍となっています。また、追徴税額の総額は8千9百万円(同6千8百万円)に上ります。

〇 富裕層に対する調査の状況

事務年度等 元事務年度 2事務年度     2事務年度 実地調査
項目 対前年比   (特別・一般)全体
調査件数 34 15 44.1%   543
申告漏れ等の非違件数 27 12 44.4%   484
申告漏れ所得金額 百万円 194 301 155.2%   5,301
追徴税額 百万円 68 89 130.9%   988
一件当たり 申告漏れ
所得金額
万円 571 2,006 351.3%   976
追徴税額 万円 200 594 297.0%   182

2 海外投資等を行っている個人に対する調査状況

経済社会の国際化に適切に対応していくため、有効な資料情報の収集に努めるとともに、海外投資を行っている個人や海外資産を保有している個人などに対して、国外送金等調書、国外財産調書、租税条約等に基づく情報交換制度のほか、CRS情報(共通報告基準に基づく非居住者金融口座情報)などを効果的に活用し、積極的に調査を実施しています。

  •  令和2事務年度においては、36件(前事務年度44件)実地調査(特別・一般)を実施しました。
  •  1件当たりの申告漏れ所得金額は、933万円(同892万円)で、申告漏れ所得金額の総額は3億3千6百万円(同3億9千3百万円)に上ります。
  •  1件当たりの追徴税額は168万円(同267万円)で、所得税の実地調査(特別・一般)全体の182万円と比べ0.9倍となっています。また、追徴税額の総額は 6千万円(同1億1千7百万円)に上ります。

〇 海外投資等を行っている個人に対する調査状況

事務年度等 元事務年度 2事務年度     2事務年度 実地調査
項目 対前年比   (特別・一般)全体
調査件数 44 36 81.8%   543
申告漏れ等の非違件数 31 30 96.8%   484
申告漏れ所得金額 百万円 393 336 85.5%   5,301
追徴税額 百万円 117 60 51.3%   988
一件当たり 申告漏れ
所得金額
万円 892 933 104.6%   976
追徴税額 万円 267 168 62.9%   182

〇 取引区分別の調査状況

円グラフ|調査状況

(参考)

  1. 1 輸 出 入・・・事業に係る売上及び原価に係る取引で、海外の輸出(入)業者との契約による取引をいう。
  2. 2 役務提供・・・工事請負、プログラム設計など海外において行う、労力、技術等の第三者に対するサービスの提供をいう。
  3. 3 海外投資・・・海外の不動産、証券などに対する投資(預貯金等の海外での蓄財を含む。)をいう。
  4. 4 その他・・・海外で支払を受ける給与など、1〜3に該当しない取引等をいう。

3 シェアリングエコノミー等新分野の経済活動に係る取引を行っている個人に対する調査状況

インターネット上のプラットフォームを介して行うシェアリングエコノミー等新分野の経済活動(注)に係る取引を行っている個人に対しては、資料情報の収集・分析に努め、積極的に調査を実施しています。

  •  令和2事務年度においては、23件(前事務年度38件)実地調査(特別・一般)を実施しました。
  •  1件当たりの申告漏れ所得金額は、675万円(同1,068万円)で、申告漏れ所得金額の総額は1億5千5百万円(同4億6百万円)に上ります。
  •  1件当たりの追徴税額は126万円(同257万円)で、所得税の実地調査(特別・一般)全体の182万円に比べ0.7倍となっています。また追徴税額の総額は2千9百万円(前事務年度9千8百万円)に上ります。
    (注)シェアリングエコノミー等新分野の経済活動とは、シェアリングビジネス・サービス、暗号資産(仮想通貨)取引、ネット広告(アフィリエイト等)、デジタルコンテンツ、ネット通販、ネットオークションその他新たな経済活動を総称した経済活動のことをいいます。

〇 シェアリングエコノミー等新分野の経済取引を行っている個人に対する調査状況

事務年度等 元事務年度 2事務年度     2事務年度 実地調査
項目 対前年比   (特別・一般)全体
調査件数 38 23 60.5%   543
申告漏れ等の非違件数 27 19 70.4%   484
申告漏れ所得金額 百万円 406 155 38.2%   5,301
追徴税額 百万円 98 29 29.6%   988
一件当たり 申告漏れ
所得金額
万円 1,068 675 63.2%   976
追徴税額 万円 257 126 49.0%   182

〇 取引区分別の調査状況

円グラフ|調査状況

(参考)

  1. 1 「シェアリングビジネス」:民泊、カーシェアリング、クラウドソーシングなど
  2. 2 「デジタルコンテンツ」:アプリ作成・配信、有料メルマガなど。
  3. 3 「ネット通販等」:ネット通販、ネットオークション、ドロップショッピングなど
  4. 4 「ネット広告」:アフェリエイトなど
  5. 5 ネットトレード(暗号資産)」:FXなどのネットトレード、暗号資産など
  6. 6 「そ の 他」:1〜5に該当しない新分野の経済活動に該当する取引

4 無申告者に対する調査状況

無申告は、申告納税制度の下で自発的に適正な納税をしている納税者に強い不公平感をもたらすこととなるため、的確かつ厳格に対応していく必要があります。こうした無申告者に対しては、更なる資料情報の収集及び活用を図るなどして、実地調査のみならず、簡易な接触も活用し積極的に調査を実施しています。

<所得税無申告者に対する調査状況>
  •  令和2事務年度においては、47件(前事務年度184件)実地調査(特別・一般)を実施しました。
  •  1件当たりの申告漏れ所得金額は、1,721万円(同790万円)で、申告漏れ所得金額の総額は8億9百万円(同14億5千3百万円)に上ります。
  •  1件当たりの追徴税額は253万円(同200万円)で、所得税の実地調査(特別・一般)全体の182万円に比べ1.4倍となっています。また、追徴税額の総額は1億1千9百万円(同3億6千9百万円)に上ります。
<消費税無申告者に対する調査状況>
  •  令和2事務年度においては、89件(同313件)実地調査(特別・一般)を実施しました。
  •  1件当たりの追徴税額は143万円(同154万円)で、消費税の実地調査(特別・一般)全体の74万円に比べ1.9倍となっています。また、追徴税額の総額は1億2千8百万円(同4億8千1百万円)に上ります。

〇無申告者に対する調査状況〈所得税〉

事務年度等 元事務年度 2事務年度     2事務年度 実地調査
項目 対前年比   (特別・一般)全体
調査件数 184 47 25.5%   543
申告漏れ所得金額 百万円 1,453 809 55.7%   5,301
追徴税額 百万円 369 119 32.2%   988
一件当たり 申告漏れ
所得金額
万円 790 1,721 217.8%   976
追徴税額 万円 200 253 126.5%   182

〇無申告者に対する調査状況〈消費税〉

事務年度等 元事務年度 2事務年度     2事務年度 実地調査
項目 対前年比   (特別・一般)全体
調査件数 313 89 28.4%   354
追徴税額 百万円 481 128 26.6%   263
1件当たり追徴税額 万円 154 143 92.9%   74

Ⅲ 参考計表

事業所得を有する個人の1件当たりの申告漏れ所得金額が高額な上位10業種

順位 業種目 1件当たりの
申告漏れ所得金額
1件当たりの
追徴税額
(含加算税)
前年の順位
    万円 万円
1 建物貸付業 2,246 432 9
2 同族会社関係者 1,867 210 3
3 土地貸付業 1,801 243 20
4 電気配線工事 1,745 257 15
5 林業 1,733 233 -
6 塗装工事 1,597 186 -
7 大工工事 1,592 238 14
8 施設園芸農業(野菜) 1,555 328 19
9 自動車 1,549 133 -
10 野菜栽培農業 1,389 140 10

(注)

  1. 1 上記調査事績は、特別調査及び一般調査に基づく実施結果である。
  2. 2 「前年の順位」は、事業所得を有する個人の前年の1件当たりの申告漏れ所得金額が高額な上位20位に該当するものについて、その順位を記載している。