令和2年12月
熊本国税局

1 調査等の状況

1 所得税の調査等の状況

新型コロナウイルス感染症の影響もあり調査等件数は減少したが、特別調査・一般調査の1件当たりの追徴税額は増加

(1) 調査件数及び申告漏れ等の非違があった件数の状況

実地調査の件数は、特別調査・一般調査が1,376件(前事務年度1,752件)、着眼調査が335件(同490件)であり、簡易な接触の件数は11,152件(同15,394件)となっています。
 これらの調査等の合計件数は12,863件(同17,636件)であり、そのうち申告漏れ等の非違があった件数は6,832件(同9,241件)となっています。

(1) 調査件数及び申告漏れ等の非違があった件数の状況 正誤表(PDF/185KB)

(2) 申告漏れ所得(調査等の対象となった全ての年分の合計)金額の状況

実地調査による申告漏れ所得金額は、132億5千9百万円(同144億6千2百万円)であり、そのうち特別調査・一般調査によるものは127億5千万円(同137億円)、着眼調査によるものは5億9百万円(同7億6千2百万円)となっています。
 また、簡易な接触による申告漏れ所得金額は63億2千6百万円(同68億6千6百万円)となっており、調査等合計では195億8千4百万円(同213億2千8百万円)となっています。

(2) 申告漏れ所得(調査等の対象となった全ての年分の合計)金額の状況 正誤表(PDF/185KB)

(3) 追徴税額(調査等の対象となった全ての年分の合計で加算税を含む。)の状況

実地調査による追徴税額は、23億3百万円(同24億9百万円)であり、そのうち特別調査・一般調査によるものは22億6千7百万円(同23億5千6百万円)、着眼調査によるものは3千5百万円(同5千3百万円)となっています。
 また、簡易な接触による追徴税額は3億1千4百万円(同4億6千万円)となっており、調査等合計では26億1千7百万円(同28億6千9百万円)となっています。

(参考)

  • 1 実地調査(特別調査・一般調査)とは、高額・悪質な不正計算が見込まれる事案を対象に深度ある調査を行うもので、特に、特別調査は、多額な脱漏が見込まれる個人を対象に、相当の日数(1件当たり10日以上を目安)を確保して実施しているものです。
  • 2 実地調査(着眼調査)とは、資料情報や申告内容の分析の結果、申告漏れ等が見込まれる個人を対象に実地に臨場して短期間で行う調査です。
  • 3 簡易な接触とは、原則、納税者宅等に臨場することなく、文書、電話による連絡又は来署依頼による面接を行い、申告内容を是正するものです。

〇 所得税の調査等の状況

区分 実地調査 簡易な接触   調査等合計  
          特別・一般   着眼        
項目 対前年比 対前年比 対前年比 対前年比 対前年比
1 調査等件数 1,752   490   2,242   15,394   17,636  
1,376 78.5% 335 68.4% 1,711 76.3% 11,152 72.4% 12,863 72.9%
2 申告漏れ等の 1,554   276   1,830   7,411   9,241  
非違件数 1,235 79.5% 200 72.5% 1,435 78.4% 5,397 72.8% 6,832 73.9%
3 申告漏れ 百万円 13,700   762   14,462   6,866   21,328  
所得金額 12,750 93.1% 509 66.8% 13,259 91.7% 6,326 92.1% 19,584 91.8%
4 追徴税額 本税 百万円 1,956   47   2,003   457   2,460  
1,870 95.6% 32 68.1% 1,902 95.0% 308 67.4% 2,210 89.8%
5 加算税 百万円 400   6   406   3   409  
397 99.3% 4 66.7% 401 98.8% 6 200.0% 407 99.5%
6 百万円 2,356   53   2,409   460   2,869  
2,267 96.2% 35 66.0% 2,303 95.6% 314 68.3% 2,617 91.2%
7 一件当たり 申告漏れ 万円 782   155   645   45   121  
所得金額 927 118.5% 152 98.1% 775 120.2% 57 126.7% 152 125.6%
8 追徴税額 本税 万円 112   10   89   3   14  
136 121.4% 10 100.0% 111 124.7% 3 100.0% 17 121.4%
9 加算税 万円 23   1   18   0.1   2  
29 126.1% 1 100.0% 23 127.8% 0.1 100.0% 3 150.0%
10 万円 134   11   107   3   16  
165 123.1% 11 100.0% 135 126.2% 3 100.0% 20 125.0%

(注)

  1. 1 令和元年7月から令和2年6月までの間の実績で、いずれも調査等の対象となった全ての年分の合計の計数である。
  2. 2 上段は、前事務年度の計数である。
  3. 3 「簡易な接触」の件数には、添付書類の未提出に対する提出依頼を行った件数等を含む。
  4. 4 追徴税額(本税)には、復興特別所得税額を含む。
  5. 5 実地調査の件数は、所得税と消費税の実地調査件数である。

所得税の調査等の状況 正誤表(PDF/185KB)

(参考) 譲渡所得の調査等の状況

所得税のうち譲渡所得に係る調査等の件数が、386件(前事務年度622件)であり、そのうち申告漏れ等の非違があった件数が、267件(同516件)となっています。申告漏れ所得金額(調査等の対象となった全ての年分の合計)は、21億1千9百万円(同32億8千7百万円)となっています。

〇 譲渡所得の調査等の状況

事務年度等 30事務年度 元事務年度 対前年比
 項目
1        
調査等件数 622 386 62.1
  土地建物等 573 354 61.8
  株式等 49 32 65.3
2        
申告漏れ等の
非違件数
516 267 51.7
  土地建物等 472 238 50.4
  株式等 44 29 65.9
3         ポイント
非違割合
21
83.0 69.2 ▲13.8
  土地建物等 82.4 67.2 ▲15.2
  株式等 89.8 90.6 0.8
4     百万円   百万円  
申告漏れ所得金額 3,287 2,119 64.5
  土地建物等 3,040 1,867 61.4
  株式等 247 252 102.0
5     万円   万円  
1件当たり申告
漏れ所得金額
41
528 549 104.0
  土地建物等 530 527 99.4
  株式等 505 788 156.0

(注)

  1. 1 土地建物等は、土地建物(分離譲渡所得)及び金地金等(総合譲渡所得)である。
  2. 2 土地建物等は、課税年分ごとに1件としている。

2 消費税(個人事業者)の調査等の状況

新型コロナウイルス感染症の影響もあり調査等件数は減少したが、特別調査・一般調査の1件当たりの追徴税額は増加

(1) 調査件数及び申告漏れ等の非違があった件数の状況

実地調査の件数は、特別調査・一般調査が912件(前事務年度1,163件)、着眼調査が207件(同308件)であり、簡易な接触の件数は1,834件(同2,029件)となっています。
 これらの調査等の合計件数は2,953件(同3,500件)であり、そのうち申告漏れ等の非違があった件数は1,983件(同2,612件)となっています。

(2) 追徴税額(調査等の対象となった全ての年分の合計で加算税を含む。)の状況

実地調査による追徴税額は、9億5千3百万円(同10億6千9百万円)であり、そのうち特別調査・一般調査によるものは9億1千4百万円(同10億8百万円)、着眼調査によるものは3千9百万円(同6千1百万円)となっています。
 また、簡易な接触による追徴税額は1億2千万円(同2億2千6百万円)となっており、調査等合計では10億7千3百万円(同12億9千5百万円)となっています。

〇 消費税(個人事業者)の調査等の状況

区分 実地調査 簡易な接触   調査等合計  
  特別・一般   着眼        
項目 対前年比 対前年比 対前年比 対前年比 対前年比
1 調査等件数 1,163   308   1,471   2,029   3,500  
912 78.4% 207 67.2% 1,119 76.1% 1,834 90.4% 2,953 84.4%
2 申告漏れ等の 1,002   244   1,246   1,366   2,612  
非違件数 808 80.6% 159 65.2% 967 77.6% 1,016 74.4% 1,983 75.9%
3 追徴税額 本税 百万円 836   50   886   218   1,104  
743 88.9% 33 66.0% 776 87.6% 115 52.8% 891 80.7%
4 加算税 百万円 172   11   183   8   191  
171 99.4% 6 54.5% 177 96.7% 5 62.5% 182 95.3%
5 百万円 1,008   61   1,069   226   1,295  
914 90.7% 39 63.9% 953 89.1% 120 53.1% 1,073 82.9%
6 一件当たり 追徴税額 本税 万円 72   16   60   11   32  
82 113.9% 16 100.0% 69 115.0% 6 54.5% 30 93.8%
7 加算税 万円 15   4   12   0.4   5  
19 126.7% 3 75.0% 16 133.3% 0.3 75.0% 6 120.0%
8 万円 87   20   73   11   37  
100 114.9% 19 95.0% 85 116.4% 6 54.5% 36 97.3%

(注)

  1. 1 令和元年7月から令和2年6月までの間の実績で、いずれも調査等の対象となった全ての年分の合計の計数である。
  2. 2 消費税の追徴税額には、地方消費税(譲渡割額)を含む。
  3. 3 上段は、前事務年度の計数である。

2 主な取組

1 1件当たりの追徴税額は所得税実地調査全体の約1.2倍
 【富裕層に対する調査状況】

有価証券・不動産等の大口所有者、経常的な所得が特に高額な個人など、「富裕層」に対して、資産運用の多様化・国際化が進んでいることを念頭に積極的に調査を実施しています。

  •  令和元事務年度においては、34件(前事務年度65件)実地調査(特別・一般)を実施しました。
  •  1件当たりの申告漏れ所得金額は、571万円(同644万円)で、申告漏れ所得金額の総額は1億9千4百万円(同4億1千9百万円)に上ります。
  •  1件当たりの追徴税額は200万円(同314万円)で、所得税の実地調査(特別・一般)全体の165万円に比べ1.2倍となっています。また、追徴税額の総額は6千8百万円(同2億4百万円)に上ります。

〇 富裕層に対する調査の状況

事務年度等 30事務年度 元事務年度     元事務年度 実地調査
項目 対前年比   (特別・一般)全体
調査件数 65 34 52.3%   1,376
申告漏れ等の非違件数 53 27 50.9%   1,235
申告漏れ所得金額 百万円 419 194 46.3%   12,750
追徴税額 百万円 204 68 33.3%   2,267
一件当たり 申告漏れ
所得金額
万円 644 571 88.6%   927
追徴税額 万円 314 200 63.7%   165

2 1件当たりの追徴税額は所得税実地調査全体の約1.6倍
 【海外投資等を行っている個人に対する調査状況】

経済社会の国際化に適切に対応していくため、有効な資料情報の収集に努めるとともに、海外投資を行っている個人や海外資産を保有している個人などに対して、国外送金等調書、国外財産調書、租税条約等に基づく情報交換制度のほか、CRS情報(共通報告基準に基づく非居住者金融口座情報)などを効果的に活用し、積極的に調査を実施しています。

  •  令和元事務年度においては、44件(前事務年度59件)実地調査(特別・一般)を実施しました。
  •  1件当たりの申告漏れ所得金額は、892万円(同677万円)で、申告漏れ所得金額の総額は3億9千3百万円(同3億9千9百万円)に上ります。
  •  1件当たりの追徴税額は267万円(同128万円)で、所得税の実地調査(特別・一般)全体の165万円と比べ1.6倍となっています。また、追徴税額の総額は 1億1千7百万円(同7千6百万円)に上ります。

〇 海外投資等を行っている個人に対する調査状況

事務年度等 30事務年度 元事務年度     元事務年度 実地調査
項目 対前年比   (特別・一般)全体
調査件数 59 44 74.6%   1,376
申告漏れ等の非違件数 44 31 70.5%   1,235
申告漏れ所得金額 百万円 399 393 98.5%   12,750
追徴税額 百万円 76 117 153.9%   2,267
一件当たり 申告漏れ
所得金額
万円 677 892 131.8%   927
追徴税額 万円 128 267 208.6%   165

〇 取引区分別の調査状況

円グラフ|調査状況
(注) ( )内の数値は構成比

(参考)

  1. 1 輸 出 入・・・事業に係る売上及び原価に係る取引で、海外の輸出(入)業者との契約による取引をいう。
  2. 2 役務提供・・・工事請負、プログラム設計など海外において行う、労力、技術等の第三者に対するサービスの提供をいう。
  3. 3 海外投資・・・海外の不動産、証券などに対する投資(預貯金等の海外での蓄財を含む。)をいう。
  4. 4 その他・・・海外で支払を受ける給与など、1〜3に該当しない取引等をいう。

3 1件当たりの追徴税額は所得税実地調査全体の約1.6倍
 【インターネット取引を行っている個人に対する調査状況】

シェアリングエコノミー等の新たな分野の経済活動をはじめ、インターネット取引を行っている個人に対しては、資料情報の収集・分析に努め、積極的に調査を実施しています。

  •  令和元事務年度においては、38件(前事務年度56件)実地調査(特別・一般)を実施しました。
  •  1件当たりの申告漏れ所得金額は、1,068万円(同858万円)で、申告漏れ所得金額の総額は4億6百万円(同4億8千1百万円)に上ります。
  •  1件当たりの追徴税額は257万円(同163万円)で、所得税の実地調査(特別・一般)全体の165万円に比べ1.6倍となっています。また追徴税額の総額は9千8百万円(前事務年度9千1百万円)に上ります。

〇 インターネット取引を行っている個人に対する調査状況

事務年度等 30事務年度 元事務年度     元事務年度 実地調査
項目 対前年比   (特別・一般)全体
調査件数 56 38 67.9%   1,376
申告漏れ等の非違件数 44 27 61.4%   1,235
申告漏れ所得金額 百万円 481 406 84.4%   12,750
追徴税額 百万円 91 98 107.7%   2,267
一件当たり 申告漏れ
所得金額
万円 858 1,068 124.5%   927
追徴税額 万円 163 257 157.7%   165

4 消費税無申告者の1件当たりの追徴税額は消費税実地調査全体の約1.5倍
 【無申告者に対する調査状況】

無申告は、申告納税制度の下で自発的に適正な納税をしている納税者に強い不公平感をもたらすこととなるため、的確かつ厳格に対応していく必要があります。こうした無申告者に対しては、更なる資料情報の収集及び活用を図るなどして、実地調査のみならず、簡易な接触も活用し積極的に調査を実施しています。

<所得税無申告者に対する調査状況>
  •  令和元事務年度においては、184件(前事務年度238件)実地調査(特別・一般)を実施しました。
  •  1件当たりの申告漏れ所得金額は、790万円(同1,630万円)で、申告漏れ所得金額の総額は14億5千3百万円(同38億7千9百万円)に上ります。
  •  1件当たりの追徴税額は200万円(同250万円)で、所得税の実地調査(特別・一般)全体の165万円に比べ1.2倍となっています。また、追徴税額の総額は3億6千9百万円(同5億9千4百万円)に上ります。
<消費税無申告者に対する調査状況>
  •  令和元事務年度においては、313件(同417件)実地調査(特別・一般)を実施しました。
  •  1件当たりの追徴税額は154万円(同153万円)で、消費税の実地調査(特別・一般)全体の100万円に比べ1.5倍となっています。また、追徴税額の総額は4億8千1百万円(同6億3千7百万円)に上ります。

〇無申告者に対する調査状況〈所得税〉

事務年度等 30事務年度 元事務年度     元事務年度 実地調査
項目 対前年比   (特別・一般)全体
調査件数 238 184 77.3%   1,376
申告漏れ所得金額 百万円 3,879 1,453 37.5%   12,750
追徴税額 百万円 594 369 62.1%   2,267
一件当たり 申告漏れ
所得金額
万円 1,630 790 48.5%   927
追徴税額 万円 250 200 80.0%   165

〇無申告者に対する調査状況〈消費税〉

事務年度等 30事務年度 元事務年度     元事務年度 実地調査
項目 対前年比   (特別・一般)全体
調査件数 417 313 75.1%   912
追徴税額 百万円 637 481 75.5%   914
1件当たり追徴税額 万円 153 154 100.7%   100

Ⅲ 参考計表

事業所得を有する個人の1件当たりの申告漏れ所得金額が高額な上位10業種

順位 業種目 1件当たりの
申告漏れ所得金額
1件当たりの
追徴税額
(含加算税)
前年の順位
    万円 万円
1 キャバクラ 2,680 634 -
2 焼肉屋 1,792 317 -
3 同族会社関係者 1,537 533 -
4 板金工事 1,472 314 5
5 一般土木建築工事 1,187 187 1
6 畜産農業(肉用牛) 1,166 276 -
7 土木工事 1,161 206 4
8 冷暖房設備工事 1,115 146 -
9 建物貸付業 1,027 248 11
10 野菜栽培農業 1,002 172 -

(注)

  1. 1 上記調査事績は、特別調査及び一般調査に基づく実施結果である。
  2. 2 「前年の順位」は、事業所得を有する個人の前年の1件当たりの申告漏れ所得金額が高額な上位20位に該当するものについて、その順位を記載している。